ものすごく勉強を頑張っているにもかかわらず、なかなか成果が出ないのは、「努力」そのものに喜びを見いだしているせいかもしれません。勉強を頑張る人が陥りやすい罠と、努力に頼らず成果を出す人がやっている、4つの勉強習慣を紹介しましょう。
「努力」そのものを楽しむ罠とは?
楽しみながら勉強を頑張れるのはすばらしいことです。しかし、結果がついてこないと、その「努力」は単なる趣味になってしまうと脳科学者の中野信子氏は警告します。
頑張る姿勢をしっかりと見せてくれる人に対し、周囲は好意的な目を向けるもの。だからこそ、「結果が出なくても勉強を頑張れば周囲に認められる」、「必死に勉強する自分が好きだから、結果が出なくても充実している」といった努力の快楽にハマる人は多いのだとか。
こうした状況はまったく理にかなっていないと中野氏は言います。成果が上がらなければ、結局は努力を重ねた事実にも人々の目が向かなくなってしまうからです。次に紹介する、「努力には頼らないで成果を出せる人の勉強習慣」をお手本にしましょう。
1. 思考時間をカットする
家族の看護やアルバイトをしながら東大に合格したという布施川天馬氏は、調べればわかることに時間をかけて考え込むのはムダな努力だと言います。同氏いわく「ラクして結果にたどり着く努力」にこそ注力すべきとのこと。
そんな布施川氏にも、以前は “自分で考えようとするクセ” があったのだとか。しかし「考える時間をカットしよう」と意識し始めてからは、多くの時間を節約できるようになったそうです。
しっかり調べてもいないのに、なんでもかんでも考え込み、「あー、今日もたくさん勉強した」などと心酔していると周囲に遅れをとってしまいます。「考え込む時間をなくす意識」をもって、効率よく勉強しましょう。
2. わからないことを書き出す
布施川氏によれば、勉強の本質=「わからないところを “わかるようにする” こと」なのだとか。自分がわからないのはどの部分か向き合う習慣が身についていると、効率よく勉強できるそうです。
たとえば英語の長文問題がいまひとつだった場合には、わからない・曖昧な単語や文法を列挙したうえで、それらが “わかるようになるための戦略” を考え、箇条書きしていたとのこと。
――この科目は点数が悪いから最初からやり直そう。勉強時間を増やそう。もっといい参考書を探そう――こうした発想ばかりでは努力がムダになってしまいかねません。何はともあれ「どこがわからないのか書き出すべし」です。
3. なんでも「自分事」にする
前出の中野氏によれば、何かを覚えるためのポイントは「自分事化」することなのだとか。無感情で読む教科書等に比べ、好きな映画・ドラマ・漫画・ゲームのキャラクターやストーリー、あるいは楽しかった旅行先の歴史的なエピソードなど、感情移入したものについてはよく記憶されているはず。これが「自分事化」のヒントです。
たとえばアメリカンコミックのヒーロー映画が好きな人が、タンパク質の構造を覚えたい場合、各原子(炭素・水素・窒素・リン・酸素・硫黄)を6色の石に見立て、「6色の石すべてを特殊な道具にはめ込むと世界を支配できる」などと設定し、悪者がそれを手にしないよう防ぐヒーロー目線になって覚えるわけです。
あるいは自分の悩みを歴史上の人物に絡ませ、「〇〇なら、この状況をなんて言うかな」などと想像しながら歴史をたどるのもいいでしょう。これらは一般的に「エピソード記憶(出来事記憶)」と呼ばれ、記憶として定着しやすいそうです。
感情をともなわない意味や知識、概念(意味記憶という)を、そのまま覚えようと頑張っても、結局はすぐ忘れてしまい努力が報われません。それなら楽しみながらスムーズに覚えたほうが断然お得です。
4. 有酸素運動で疲れてから勉強
心理学者の苧阪直行氏によれば、私たちの脳の「DLPFC(背外側前頭前野:dorsolateral prefrontal cortex)」という領域は、ワーキングメモリ(作業中の情報を一時的に保持・処理する脳機能)と深く関わっており、そのワーキングメモリはマルチタスク機能と密接に関わっているのだそう(2012年の論文「前頭前野とワーキングメモリ」より)。
たとえば誰かと話しながらパソコンのキーボードを打てるのは、こうしたマルチタスク機能があるから。逆にパソコン作業に没頭していたら、誰かに話しかけられても気づかないのではないでしょうか。
前出の中野氏は、マルチタスク機能を担うDLPFCの働きが落ちているほうが、注意が分散されにくくなるので、集中しやすいと説明しています。つまり頭が働きすぎていると、むしろ気が散ってしまうわけです。そのため中野氏は健康的に疲れられるよう、適度な運動をしてから勉強することを提案しています。
嬉しいことにウォーキングやスイミングなどの有酸素運動は、脳の神経細胞の発生・成長・再生を促す、タンパク質の一種までも増やしてくれるといいます(「Active Brain CLUB」の「脳のはなし」より)。外出が難しければ、勉強前に家のなかで大きく腕を振って足踏みしたり、軽い体操をしたりするのもおすすめです。
万全な状態で勉強を頑張っても、集中できずに終わったらせっかくの努力が水の泡。勉強前に軽くカラダを動かして、心地よい疲れとともにムリなく集中しましょう。
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努力そのものを楽しむ罠と、努力に頼らず成果を出す人がやっている4つの勉強習慣を紹介しました。参考にしてみてくださいね。
(参考)
STUDY HACKER|勉強能力を最短距離で上げる方法。「努力そのもの」を楽しむと、成績は落ちていく
日刊SPA!|「無駄な努力」を徹底的に避ける東大生たち。秀才たちの習慣を解説
苧阪直行(2012),「前頭前野とワーキングメモリ」, 高次脳機能研究, 32巻, 1号, pp.7-14.
東洋経済オンライン|「母の看病」しながら東大合格した19歳の勉強法
東洋経済オンライン|「お金かけずに東大生」の勉強法が効率的すぎた
Active Brain CLUB|運動は、脳の成長を促す!
Wikipedia|タンパク質構造
コトバンク|意味記憶
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