「一生懸命勉強をしているのに、どうしても資格試験に合格できない」「スキルアップのため勉強を頑張っているが、なかなか成果が出ない」とお困りではありませんか?
もしかしたら、まったく学びにならない作業に没頭し、勉強した気になっているだけかもしれません。
こで今回は、やってはいけない「勉強した気になってしまう」危険な勉強法と、代わりにやるべき効果的な勉強法と実践例もご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
【ライタープロフィール】
上川万葉
法学部を卒業後、大学院でヨーロッパ近現代史を研究。ドイツ語・チェコ語の学習経験がある。司書と学芸員の資格をもち、大学図書館で10年以上勤務した。特にリサーチや書籍紹介を得意としており、勉強法や働き方にまつわる記事を多く執筆している
効果が薄い勉強法1: “重要な部分” に線を引く
あとから重要な部分だけを効率的に勉強できるよう、教科書の太字部分に線を引いたけれど、肝心のテストで思い出せない……といったことはありませんか?
線を引いているときの高揚感。カラフルなマーカー線がぎっしり書き込まれた教科書を開くときに感じる達成感。それがくせもので、線を引くという作業をしただけでじつは勉強になっていないのです。
『世界記憶力グランドマスターが教える 脳にまかせる勉強法』(ダイヤモンド社, 2017)の著者で記憶のスペシャリストである池田義博氏は、線を引く勉強法のリスクを次のように指摘しています。
テキストや参考書で理解できた部分にマーカーをしたりアンダーラインを引いたりした経験がある人も多いと思います。(中略)けれども、そこで終わらせてしまうと、単にニュアンスを覚えているだけで、具体的な言葉としての答えが書けないという落とし穴があるのです。
(引用元:ダイヤモンド・オンライン|覚えているはずなのに、思い出せない原因は○○にあった)
池田氏によれば、脳は「個々に注目するよりも、その全体像の概念を優先して覚えよう」とするものなのだそうです。ですから、勉強の成果を出すには「知識や考え方をイメージの状態ではなく、言葉として認識しておく必要がある」のだとか。
つまり、線を引いた箇所は「言葉にして説明できるようにする」など、アウトプットまでして初めて勉強の効果が表われるというわけです。(ここまでのカギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|同上)
効果が上がる勉強法→線を引いたらメモ書きでアプトプット
そこで、本に線を引いたら、アウトプットまでをワンセットとして勉強しましょう。『考える人のメモの技術ー手を動かして答えを出す「万能の問題解決術」』(ダイヤモンド社, 2022)の著者で、文具大手メーカーコクヨ株式会社の下地寛也氏が紹介している以下のアウトプット法がオススメ。
・「線を引きながら、同時に自分の気づきや疑問点を本の余白に」書く
・最後に大切だと思うポイントだけを「ノートに数行のメモとして記しておく」
(枠内のカギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|「ただの読書」が「意味ある読書」に。本の情報が自分のモノになる“読書メモ”のコツ)
さっそく筆者は、デキる人の勉強法をリサーチする過程で出会った、榎本博明氏(心理学博士)の著書『勉強できる子は○○がすごい』(日本経済新聞出版, 2022)を使って試してみました。
なお、使用ツールは以下のとおりです。
- リヒトラブのA5 のルーズリーフ(N1658-11 ツイストリングノート A5 アイ)
- パイロットの黄色の蛍光ペン(フリクションライトSFL-10SL-Y)
- ゼブラの3色ジェルボールペン(サラサクリップ3C 0.5 紺)
まずペンで線を引いたらいったん立ち止まり、疑問点やそれに対する答えをその都度本に書き込んでいきます。
実際にやってみると、全体の内容がするっと頭に入ってきます。受験の長文読解で限られた時間内に内容の骨子をつかむべく、テストの問題用紙に線やメモを書き込んだ記憶がよみがえりました。
続いて本に書き込んだ線やメモの内容を、ノートに簡潔にまとめていきます。どの範囲をまとめたのかわかるように章のタイトルとページをメモしておくと、振り返るときに便利ですよ。
「本に線を引いて勉強しているけど、成果が上がらない……」とお困りの方は、ぜひメモ書きを習慣化してみてください。理解が深まり、資格試験などの肝心なときに必要な知識を思い出せるようになるかもしれません。
効果の薄い勉強法2: “間違えた問題” に付箋を貼る
教科書や単語帳に、大量の付箋を貼りまくっていませんか? そんな人は、カラフルな付箋をたっぷりつけた本を手にするだけで、「勉強を頑張っている気分」に浸ってないか要注意です。
たとえば代表的な付箋の使い方として、「間違えた箇所に付箋を貼る」方法がありますが、貼りっぱなしにしているだけでは意味がありません。
解き直しをして理解できたら、その都度付箋をはがしていかないと、付箋だらけで集中的に勉強すべきページがわからなくなり、かえって勉強効率を下げてしまうことに……。
『30代で人生を逆転させる1日30分勉強法』など多くのビジネス関係著書をもつ石川和男氏は、付箋を貼り過ぎたり、貼ったまま放置したりするデメリットについて、以下のように述べています。
間違えた箇所に付箋を貼ってもテキスト、問題集、模擬試験……それぞれに貼っていくと散漫になります。しかも付箋は一時的なら良いですが、1年近く貼っておくと何度もページをめくる度に、はがれやすくなり、最悪どこかへいってしまいます。
(引用元:リクナビNEXTジャーナル|この「勉強法」は、やってはいけない)
効果が上がる勉強法→「間違いノート」をつくる
間違えた箇所に付箋を貼りまくる代わりにオススメしたい勉強法は、「間違いノート」をつくること。石川氏は間違いノートのポイントを3つ挙げています。
- 「十分に余白を取る」→あとから気づいたことを追加できるようにするため
- 「汚い字でもいいから、大きく書く」→自分が読みやすいようにするため
- 「テキスト(問題集)など、何ページ目から写したかという出典情報を書き込む」→気になったことが出てきたとき「知りたい箇所」にスムーズに戻れるため
上記の3点を守って、「スピード重視」で書くとよいそうです。
(ここまでの参考およびカギカッコ内引用元:リクナビNEXTジャーナル|同上 太字は編集部が施した)
さっそく筆者も実践してみることに。使用ツールは以下のとおりです。
- ゼブラの3色ジェルボールペン(サラサクリップ3C 0.5 紺)
- パイロットの黄色の蛍光ペン(フリクションライトSFL-10SL-Y)
- B5サイズのコクヨのキャンパスノート(A罫、7mm×30行、30枚)
現在勉強中の、滝澤ななみ著『みんなが欲しかった! FPの問題集 3級 2023-2024』(TAC出版, 2023)に取り組んでつくった間違いノートです。
解くのに1問あたり7分程度かかりました。印刷環境がある方は、石川氏が実践しているように問題文をコピーしてノートに貼り付ければ、もっと手早く書き上げられるかもしれません。(参考:リクナビNEXTジャーナル|同上)
間違いノートを書くプロセスで、うろ覚えだった知識をきちんと正すことができました。ミスの原因を突き止め正しい答えを覚えるといった振り返り作業をしなければ、「できなかったことができるようにはならないのだ」と実感しました。
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効果的な勉強とは、自分が学んだことを本当に理解できているか振り返る作業をすることです。「教科書に線を引くだけ」「付箋を貼りまくるだけ」の作業の代わりに、本を読んで浮かんだ疑問や理解したことをメモに書き出し、間違いノートをつくる作業をしてみてください。「勉強したおかげで前よりも成長している」と、感じられるようになるはずです。
ダイヤモンド・オンライン|覚えているはずなのに、思い出せない原因は○○にあった
リクナビNEXTジャーナル|この「勉強法」は、やってはいけない
ダイヤモンド・オンライン|「ただの読書」が「意味ある読書」に。本の情報が自分のモノになる“読書メモ”のコツ