「仕事には満足しているけれど、キャリアアップのための勉強もしたい」
「平日は仕事に追われ、休日は寝るだけ。日々に満足感を得られない……」
こうしたお悩みを抱える人は、ワークライフバランスの見直しが必要かもしれません。仕事への熱意は大切ですが、高いパフォーマンスを維持するためには、プライベートの時間を確保することも重要です。
そこで本記事では、私生活の時間を確保するためのタイムマネジメント術や、効果的なリフレッシュ方法をご紹介します。
ワークライフバランスの現状と課題
ワークライフバランスとは、仕事と私生活の調和を図ることです。内閣府の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」では、この概念について以下のように記されています。
誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、今こそ、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求していかなければならない。*1
つまり、ワークライフバランスにはやりがいを感じながら働くことと、プライベートの時間を充分にとることが大切なのです。たとえば、リモートワークは自宅でも仕事ができますよね。そのため子育てや介護との両立がしやすく、通勤がないぶん時間の有効活用ができ、ワークライフバランスの実現に近づける働き方と言えます。
しかし、日本では依然として長時間労働が課題となっているようです。過度な残業をすれば、勉強や家族団らんなどプライベートな時間をとりづらくなってしまいます。ワークライフバランスの実現には、就業時間内に仕事を終わらせるための時間管理が必要となるのです。
仕事と勉強を両立するためのタイムマネジメント術
では、ワークライフバランスをとるために、どのように時間管理を行なえばいいのでしょうか。ここからは、仕事に取り入れやすいタイムマネジメント術をふたつご紹介していきます。
1. タスクは分割し、制限時間を設ける
あなたは、普段の業務にどれだけの時間がかかるか知っていますか? もしかしたら、30分で終わる仕事に2時間もかけているかもしれません。非効率な時間配分が、残業の原因になることがあります。
そこでおすすめなのが、「時間区切り(タイムボクシング)」です。ワークマネジメントの専門家Julia Martins氏によると、「大きなタスクを小さく分割し、それぞれのタスクを想定される時間内に完了できるように」する方法だそうです。たとえば、プレゼン資料作成を資料収集(1時間)、構成(20分)、テキスト入力(40分)と分割し、各作業に制限時間を設けて取り組むイメージですね。
Martins氏は「タスクごとにそれぞれ3時間以内」の時間設定をすすめています。それ以上かかりそうな場合は、さらに作業を分割できないか考えてみましょう。*2
仕事を小さく分割し、制限時間を設けることでダラダラと作業してしまうことを防げるはず。また、細かく区切ることで「今日はここまでやろう」といったように、進捗の管理もしやすくなりそうです。仕事が終わらず、残業が増えがちな人は試してみてはいかがでしょうか。
2. 大きな仕事から手をつける
時間や労力のかかる仕事は、後回しにしたくなりますよね。しかし、そんな仕事が終業時刻を過ぎても終わらない……ということになりかねません。
そんな人は、1日のはじめに大きな仕事から取りかかりましょう。メールチェックやスケジュール確認といった簡単な作業の前に、資料作りや企画立案など“難しい”“面倒だな”と感じる仕事に挑戦するのです。
この方法のメリットは「毎日最も重要な仕事を確実にこなすことができ」る点だというMartins氏。*2 重要なタスクが積み重なって、残業続きになることを避けられるのですね。それだけでなく、大きな仕事で高いパフォーマンスを発揮できる点も魅力です。
心理学者のSimon Folkard氏の実験では、早い時間帯ほどパフォーマンスが高いことが示されています。実験で行なわれたテストでは、8時から14時にかけて作業スピードが上がり、精度は朝が最も高かったそう。つまり、タスクを処理するスピードと精度は、午前中が特に高いのです。*3
始業直後に大きな仕事を片付けてしまえば、“仕事が終わらなくて帰れない”という状況も減るはず。心にも時間にも余裕が生まれやすくなり、ワークライフバランスの実現に近づけるでしょう。
プライベートの充実とリフレッシュ方法
ワークライフバランスの実現には、プライベートの充実も欠かせません。平日の終業後や休日を、ただ寝て過ごしている人は要注意。きちんとリフレッシュし、私生活を充実させるには、あえて体を動かすことをおすすめします。
習慣化コンサルタントの立花岳志氏は、ビジネスパーソンの疲労とその回復について、次のように指摘しています。
そもそも多くの人にとっての「疲れ」とは、身体を酷使し過ぎている疲れではなく、デスクワークで同じ姿勢を続けて身体が凝り固まっていたり、パソコンを使い過ぎて目が疲れていたり、気を使い過ぎて神経が疲れていたりというものだと思います。(中略)身体が凝っているなら動かすことが一番の疲労回復になります。*4
つまり、デスクワークが多い人は、睡眠よりも軽い運動の方が疲労回復に効果的だということですね。ウォーキングやヨガのような運動だけでなく、美術館やカフェ巡りに出かけるのも体を動かすことにつながるでしょう。勉強や読書をしたい場合も、図書館へ足を運べば気分転換ができそうですね。
また、「凝りをほぐすという意味では、脳の疲れをとるのにも、いつもとは違う刺激を受ける行為を積極的にすると良い」とも言う立花氏。遊園地や映画鑑賞などの非日常的な刺激は「日常の自分から離れられる場所に身を置くことで、予想以上にストレスが解消される」そうです。*4
なかでも映画や観劇などは、時間が決まっていることも魅力と言えます。時間が決まっていれば、休日を睡眠に費やしてしまう人や、つい仕事をしてしまう人も行動を起こしやすいのではないでしょうか。
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ビジネスパーソンとして長く活躍するためにも、ワークライフバランスを整えることは大切です。本記事でご紹介した内容を参考に、ご自身の仕事と私生活の時間を見直してみてくださいね。
※引用部分の太字は編集部が施した
*1 「仕事と生活の調和」推進サイト|仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章
*2 asana|最高の成果を出すためのタイムマネジメントのコツ、タイムマネジメント術、クイックウィン (すぐできる改善) 18 選
*3 Simon Folkard (1975), “DIURNAL VARIATION IN LOGICAL REASONING” British Journal of Psychology, Vol.66, No.1, pp.1-8.
*4 東洋経済オンライン|「休日に思う存分寝る人」ほど疲れがとれない理由
藤真唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。