「仕事をして帰ってきたら、いつの間にか寝る時間。いったいいつ勉強すればいいんだろう?」
このような悩みを抱える社会人は本当に多いのではないでしょうか。仕事と勉強の両立は、多くの人にとって大きな課題です。
しかし一方で、通常の仕事をこなしながら、着々と勉強を進め、資格を取得している人たちもいます。同じ24時間を過ごしているのに、なぜこのような違いが生まれるのでしょうか。
本記事では、仕事と勉強を上手に両立させている方々のスケジュールを参考に、その秘訣を探っていきます。効率的な時間の使い方や、すぐに実践できる具体的な方法をご紹介します。
仕事と勉強の両立がうまくいかないのはなぜ?
筆者は現在、中国語と基本情報技術者試験の勉強を行なっています。しかし、もともとのんびり過ごすのが好きなせいもあってか、いつの間にか一週間が終わっていた、ということもしばしば。仕事と勉強を上手に両立したい気持ちはあるのですが……。
そこで、筆者の1日のスケジュールを書き出し、問題点を洗い出すことにしました。筆者のある日のスケジュールがこちらです。
8:00 起床。身支度や家事を行なう
10:00 始業
16:00 終業。仕事とは別の作業を行なう
18:00 散歩、必要なら買い出しや用事を済ませる
19:00 お風呂
20:00 夕食をつくる
21:00 夕食、片づけ
22:00 休憩。余裕があれば勉強を行なう。
24:00 就寝
勉強を行なうのは、主に22時から寝るまでの2時間です。中国語や基本情報技術者試験の勉強にあてています。しかし疲れていることもあり、ついテレビや動画を観てしまうなど、ぼんやり過ごしてしまうことが多いのも事実。
また、家事の時間が多いので、もう少し短縮できそうな気がします。
仕事と勉強の両立を成功させた人は何が違うのか?
では、仕事と勉強を両立させている人は、どのようなスケジュールで過ごしているのでしょうか?
士業を含む500の資格を持ち、それらを活かして中小企業のサポート事業を行なう林雄次氏は、まさに仕事と勉強の両立のスペシャリスト。
同氏のある日のスケジュールを見てみましょう。*1
6:00 起床。SNSへ投稿してから、勉強(SNSを見続けない)
7:00 SNSのコメント対応、引き続き勉強(勉強は1つ30分以内位の短時間を複数)
8:00 スタッフへ仕事の指示をして、ランニングや食事などの身支度(勉強した内容を思い出しながら体を動かせる)
9:00 始業。創造的な仕事に向く午前はなるべく予定を入れず、執筆などにあてる
13:00 昼食。時間をずらすので店も空いている。チャットやメールなどに対応。
14:00 打合せ、外出など(体を動かす仕事で、眠くならないように)
18:00 夕食。タスクリスト整理
20:00 散歩。何か思いつけば翌日に持ち越さずメール等のアクションをしておく
21:00 資格の受験手続きなどの雑務と、余裕があれば追加で少し勉強
22:00 就寝
複数の勉強をしながら仕事をしている……と聞くと、時間を極限まで切り詰めているのでは?と思いますが、意外と普通のスケジュールに見えますね。睡眠時間は8時間、仕事は9時間(休憩含む)です。
よく見てみると、勉強は主に朝の2時間のみ、余裕があれば夜追加で1時間行なっているようです。6時から8時の2時間で、ひとつ30分以内の勉強を行なっているため、毎朝4種類くらいの勉強を行なっていることになります。
ひとつの勉強が30分以内なのは、短いように感じますね。しかし、実は短時間勉強の方が長時間勉強より記憶の定着率が高いのです。
短時間の勉強が効果的であることについては、脳内科医の加藤俊徳氏も以下のように述べています。
長時間勉強は、脳の準備運動がしっかりできていて、基礎体力が身についている人でないと、脳が“ファイアリング”せず、効果がない。
ファイアリングとは、目や耳から情報がインプットされると、脳の視覚系や聴覚系の部位(この脳内の各部位を「脳番地」と呼ぶことにする)のニューロンが発火すること。このファイヤリングが強いほど、記憶の定着がよくなるのだ。
長時間のぶっ通し学習よりも、時間を短く区切った「小刻み学習」のほうが脳にとっては効率がよく、同じ3時間を勉強に費やすにしても、得られるリターンが格段にアップする。
勉強にまとまった時間は必要なく、むしろ30分程度の短時間学習を繰り返したほうが効果的なのです。
また、林氏は「短時間の勉強を朝複数やっておくことで、日中それを思い出しながら過ごして記憶定着に役立てる」ことができると語っています。*2
これは「アクティブリコール」や「リトリーバル」と呼ばれる手法で、記憶の定着に効果的な勉強法です。米国内科専門医の安川康介氏は以下のように述べています。*3
これまでの学習に関する数多くの研究から、何かを記憶するためには、それを積極的に思い出す作業や、脳みそから頑張って取り出す作業こそが、決定的に重要だということが明らかになっています。
30分以内の短時間学習も、日中に繰り返し勉強内容を思い出す作業も、どちらも記憶の定着に非常に効果的な勉強法。林氏はこのふたつの方法を組み合わせて、朝のあいだに効率的に勉強を行なっていたのです。
1日のスケジュールを改善してみた
前項の林氏のスケジュールを参考に、筆者のスケジュールを見直してみました。
まず、朝1時間勉強時間を確保し、中国語30分、基本情報技術者試験の勉強に30分あてます。その時間を確保するため、朝の家事のなかから掃除をカット。また、朝食は朝つくるのをやめ、前日の夜に簡単に作っておくことにしました。
次に、勉強内容を思い出す作業を取り入れました。仕事の休憩中と、夕方の散歩中、夜の家事の合間に覚えたことを思い出すようにしてみました。変更後のスケジュールがこちらです。
8:00 起床。身支度や家事を行なう
9:00 勉強。中国語30分、基本情報技術者試験の勉強30分
10:00 始業
16:00 終業。仕事とは別の作業を行なう
18:00 掃除、散歩、必要なら買い出しや用事を済ませる
19:30 お風呂
20:30 明日の朝食をつくる
21:30 夕食、片づけ
22:30 休憩。余裕があれば勉強を行なう
24:00 就寝
大きな変更点は、朝に1時間の勉強時間を確保したことだけ。
それでも、そのあとのルーティーンが少しずつ変わるので、慣れるのには時間がかかりましたが、紙やスマホに変更後のスケジュールを書き出しておくことで、解消できていきました。
休憩中など、スキマ時間に学んだことを思い出すという手法には特に効果を感じました。。お皿を洗いながら中国語のフレーズを思い出してつぶやいたり、散歩中に基本情報技術者試験の参考書の内容を、頭のなかで誰かに説明してみたり……と、そのときの状況に合わせて自由に行えるのも良い点でした。
スケジュールを変更して感じたメリットのひとつが、やるべき勉強が朝のうちに完了しているので、プレッシャーから解放されて生活できることです。疲れている夜に無理やり気合いを入れて勉強する……ということがなくなりました。
また、朝の勉強内容を思い出して過ごすと、目に見えて記憶の定着度が違うのを感じました。効率の良さは本当のようです。
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つい忙しくて勉強できないままになってしまう、という方は、ぜひ本記事でご紹介した方法を取り入れてみてくださいね。
※引用箇所の太字は編集部が施した
*1 日本の資格・検定|学びのメディア|資格ソムリエが教える複数の勉強・仕事の両立術【連載はやしかく】
*2 現代ビジネス|大人の勉強は「時間をかけないほうがいい」…「大人の脳」に合った勉強法を徹底解説
*3 プレジデントオンライン|これが科学的根拠に基づく「最高の勉強法」である…「白紙を前にして繰り返し思い出す」が究極といえる理由
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。