どうにも勉強が嫌いなら、「なるべく勉強しない」ための戦略を立ててみてはいかがでしょう。ストレスを減らし成果を上げようとする行為は、“怠け” ではなく健全な効率化の推進になるはずです。
今回は、そんな戦略を背景に成功している人々や、優秀な学習者たち、20世紀最高の物理学者にも学び、「なるべく勉強しない」ですむための習慣を4つ紹介します。
1. 他者の思考を借りる
フジテレビ在職中に『逃走中』『ヌメロン』『有吉の夏休み』などを企画し、現在は株式会社ジェネレートワン代表取締役CEOを務めるコンテンツプロデューサーの高瀬敦也氏は、身近な友人、仕事仲間、尊敬する人などに対し、仕事に役立ちそうな情報についてよく尋ねるそうです。
たとえば高瀬氏が「いま流行っているもの」について質問すると彼らは、自分がインプットしたなかから、高瀬氏に合いそうな情報を整理したうえで教えてくれるのだとか。高瀬氏はこの流れを、効率よくインプットするために「他人の思考を借りる」と表現します。
また、『最速で10倍の結果を出す他力思考』(プレジデント社)の著者で、THE ONE株式会社代表取締役の小林正弥氏は、1馬力ではなく、100人力を使って結果を出すのが「他力思考」の目標だと説きます。
小林氏の言う「他力思考」とは、他者の知恵や経験を借りたり、他者の時間を借りて協力を得たりすること。“自力” だけでは限界があると小林氏は言います。先ほどの高瀬氏の話と共通していますね。
そして、これらは「なるべく勉強しない」ための方略にもなるはずです。勉強に関することをなんでも周囲に質問し、他者の思考を借りてしまうのです。もちろん、借りっぱなしではなく、相手が望めば「自分の思考」も貸し、ともに勉強を省エネ化するといいでしょう。
「他者に教えてもらう」ではなく「他者の思考を借りる」と考えたほうが、より客観的に質問でき、より素直に受け止められるのではないでしょうか。質問例については次項で紹介します。
2. 何が “わからない” のかたどる
前出の小林氏は、他者の頭を使う(知恵や経験を借りる)ための重要なポイントは「質問力」だと述べます。たとえば勉強の場合、「数学がわかりません。どうしたらいいですか?」などと聞いても、相手は何をどう教えていいのかわからず、困ってしまうでしょう。
キャプラン株式会社の教育・研修部門、Jプレゼンスアカデミー チーフインストラクター(2019年2月時点の肩書き)の伊東絹子氏も、質問の際は、相手の都合を配慮すること、手短に聞くこと、そして丸投げしないことを挙げています。
ならば自分が聞きたいことを限定・具体化すべく、自分が何をわからないのかたどってみればいいわけです。たとえば「数学がわからない」⇒「ベクトルや行列など」⇒「3次元のベクトル空間とか」⇒「特にベクトル積がわからない」といった具合です。
わからないことが具体的になったかな? と思ったら、今度はそこから “その” 何を知りたいのか具体的に展開してみるのです。たとえばこんな感じ。
【わらないこと】:ベクトル積
【知りたいこと】:目の前の問題の解き方・基本的なこと・自分に合いそうな参考書
そうすれば、「数学が苦手で、なかでもベクトル積がよくわかりません。自分にはどんな参考書がいいでしょう? ちなみに現時点では、この問題もちゃんと解けない状況です」と質問の精度を上げることができるはず。相手もあなたに最適な答えを返しやすくなるでしょう。
いわばそれは、なるべく自分が勉強に時間をかけないですむような、いい情報を得るための質問ということです。
3. 分解思考でピンポイント学習
じつは、前項のように “自分が何をわからないのかたどっていく” ことにより、東大生の思考に近づくことができます。現役東大生で株式会社カルペ・ディエム代表の西岡壱誠氏は、東大生の取材を続けるうち、頭がいい人の思考習慣は「わかる部分」と「わからない部分」に分解していくことだと気づいたそう。
漠然とした「わからないこと」で悩むのは時間のムダです。「わかる部分」を重複し、「わからない部分」を置き去りにして勉強するのも、時間と労力のムダです。だから、たとえば「宅建試験の勉強が難しい……」とただ悩むのではなく、「民法の基本はできた」 が「法令上の制限はいまひとつ。専門用語に苦戦している」などと、どんどん分解していけばいいのです。
こうして東大生ばりの分解思考で自分がわからない部分を抽出できれば、ピンポイントでそこに集中できるはず。勉強の効率もグンと上がるでしょう。なるべく勉強しないですむための習慣として、ぜひ取り入れてみてください。
4. 好きなことを選び学ぶ
じゃあ、自分はほかに何をするかと言えば、あとはただ好きなことを選んで、無理なく学ぶだけです。「それはちょっと自由すぎる」と思うかもしれません。でもこれは、20世紀最高の物理学者と評されるアルベルト・アインシュタインのお墨つきなのです。
アインシュタインは当時11歳だった息子がピアノを習い、楽しんでいることを喜びました。その息子にあてた手紙にはこんなことが書かれています。
Mainly play the things on the piano which please you, even if the teacher does not assign those.
(引用元:The Marginalian|The Secret to Learning Anything: Albert Einstein’s Advice to His Son)
――「ピアノの先生が割り当てたものでなくとも、自分を喜ばせる曲をどんどん弾くといい」――さらには、時間が経つのを忘れるほど楽しいことをしているときこそが、最も効果的な勉強法とも書かれています。
これは、心理学者のミハイ・チクセントミハイ氏が提唱した、とても楽しく疲労もない集中状態で、高い能力を発揮する精神状態(フローと呼ぶ)を指しています。自分が夢中になれることは、勉強する意識がなくても学べるということ。
「好き」の追求は、「なるべく勉強しない」ですむための究極の活動かもしれません。
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わからない・苦手な勉強については、分解思考と具体的な質問で他者の力を借り、好きな科目の勉強については躊躇せず没頭しましょう。
(参考)
STUDY HACKER|“企画ストック数1万以上” の凄腕が教える「企画を出せる人・出せない人」の決定的違い
The Marginalian|The Secret to Learning Anything: Albert Einstein’s Advice to His Son
日経ビジネス電子版|「ドラゴン桜」式「東大生の分解力」をさらに分解してみれば?
小林正弥(2019),『最速で10倍の結果を出す他力思考』,プレジデント社.
新刊JP|仕事ができる人は「他人のアタマ」を使う その秘訣とは
東洋経済オンライン|仕事を覚えるには「質問力」を磨くのが有効だ
コトバンク|ゾーンとは
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