1年間の後悔を「前田裕二氏流メモ」でまとめたら、後悔が吹き飛ぶほどの意欲が湧いてきた

2021年に後悔していることを前田裕二氏の3ステップメモ術でまとめてみたもの

年の瀬も押し迫るなか、後悔していることが頭のなかでモヤモヤしているならば、前田裕二氏の3ステップメモ術で1年を振り返ってみませんか? モヤモヤがいつのまにか浄化され、建設的になれるでしょう。筆者の実践報告を交えて説明します。

3ステップメモ術の構造

SHOWROOM株式会社の代表取締役社長で、ベストセラー『メモの魔力』(幻冬舎)の著者でもある前田裕二氏は、アイデア創出を目的とした “メモ” は、人間にしかできないことだと説きます。AIが進化を続けるいまこそ、私たちは知的生産のためにメモを使うスキルを磨くべきなのだとか。

じつは、それが3ステップメモ術です。1. 事実(ファクト)をもとに、2. 抽象化し、自分の活動に、3. 転用するのだそう。事実をもとにするというのは「体験を具体的に書き出す」こと、抽象化は「事実から本質的な要素を抜き出して書く」こと、転用は「自分の活動にその本質的要素を役立てる方法を書く」ことです。

このなかで、特に抽象化は3ステップメモ術の効能を高めるカギとも言えます。もう少し掘り下げてみましょう。

抽象化について

放送大学教授の濱田嘉昭氏(※肩書きは2010年時点のもの)によれば、事実は抽象化あるいは概念化によって理解を拡張できるそうです。あらゆることを体験しても、そうした事実だけでは物事を理解したことにはならないのだそう。濱田氏は、抽象化・概念化について次のようにも述べています。

(事実の)本質的な部分を法則として確立しておき、具体的な説明や予測は、それに必要な条件を入れて実行できるはずである。

(引用元:高知工科大学|科学的な見方・考え方 , カッコ内は筆者が書き加えた)

この説明は、3ステップメモ術のプロセス「事実⇒抽象化(本質的な部分を抜き出す)⇒転用する(自分の活動条件に合わせて実行する)」にも当てはまるのではないでしょうか。濱田氏による “具体的な説明や予測” という表現については、事実の「こうだから、こうなった」といった因果関係・相関関係や、将来への応用(転用)と解釈できます。

3ステップメモ術の前田氏いわく「抽象化によって独自の視点を得られる」とのこと。これは、濱田氏の知見とも合致します。同じ体験をしても、抽象化の内容もしくはその有無で差が生まれるわけです。

わかりやすく説明するために、ひとつ例を挙げましょう。同じ職場のAさん、Bさん、Cさんが、上司に「課題の達成が遅い!」と同じように叱られたとします。すると――

  • Aさんは「あんなに叱るのは、誰でもこの課題を早く達成できる方法があるからだ」と考え試行錯誤しました。

  • Bさんは「機嫌が悪いタイミングに当たってしまった」と考え、上司の感情パターンを観察しつつ、機嫌がいい日を狙い報告や提案を行なうようになりました。

  • Cさんは叱られて腹が立ち、誇張しながら周囲に上司の悪口を言いふらしました。

このなかで、自分の体験を抽象化できたのは明らかにAさんとBさんです。観点は異なりますが、両者とも前向きに進んでいることがわかります。

しかし、Cさんは抽象化を行ないませんでした。それどころか事実に背を向け、ネガティブな活動までしています。これでは信用を失ってしまいますよね。

つまり、抽象化するかしないかで向かう先が大きく変わるのです。「後悔」において言えば、そのまま放置すると「後悔」という事実で終わるが、抽象化すれば未来に活かせるということです。

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メモの必要性

3ステップメモ術の効果や、プロセスの重要性がわかりました。では、なぜそれをメモで行なう必要があるのでしょう?

前田氏は、心に浮かんだことを言語化する作業を繰り返すうち、独自の視点が見つかると言います。メモやノートに書き出すことも、アイデア創出のプロセスというわけです。それに、先述した「抽象化」という作業を、頭のなかだけで行なうのは無理があるはず。

じつは筆者も、3ステップメモ術の実践で書く効能を体感できました。自然と思考が働き出すんですよ。次項はその報告です。

メモ用ノートのイメージ・イラスト

3ステップメモ術の実践

今回筆者が実践したのは、今年1年間の後悔を、来年にうまく活かすための3ステップメモ術です。まずは手順を説明しましょう。

  • ステップ1:【事実(ファクト)】を書く――体験の客観的事実を書き、キャッチフレーズをつける
  • ステップ2:【抽象化】する――事実を分析し、重要かつ本質的な要素を抜き出す
  • ステップ3:【転用】する――抽象化で見いだしたことを生かす方法を書く

前田氏は、青ペン(やや重要)赤ペン(最重要)を使い分けて重要度の判断を訓練するそうです。これを参考に、筆者も黒・青・赤ペンを用いました。

ちなみに前田氏が示す3ステップメモ術の例では、1日分の内容がノートの見開きいっぱいに書かれていますが、今回は「後悔したこと」に限定するので、日付なし・キャッチフレーズが見出し、といったかたちで書きました。

2021年に後悔していることを前田裕二氏の3ステップメモ術でまとめてみたもの

筆者が挙げた1年間の後悔は、コンセプトを立てたブログが三日坊主だったこと、自宅の仕事環境を変えられなかったこと、特筆できるような挑戦をしなかったことです。キャッチフレーズは、ブログ・仕事環境・挑戦としました。

たとえば仕事環境については、こう展開しています。

◎仕事環境

事実】:しっかりとイメージがあるのに、自宅の仕事環境を変えよう変えようと思いながら変えられなかった。

【抽象化】:頭のなかの仕事環境イメージAを実現するには、Bを片づけなきゃ、その前にCを、その前にDを、その前にEを片づけなきゃいけない。
⇒じゃあ、段階を整理して、Eから始めたらいい

【転用】

A⇒窓際に仕事スペースをつくる(イメージあり)
B⇒トランクケースや絵などをどける
C⇒Bのなかで捨てられるものは捨てる
D⇒Cで残ったものを入れる場所を見つける
E⇒D用のスペースを空ける←ここから始める

まず書いていて感じたのは、【抽象化】の時点で思考が加速することです。上の例で言えば、“段階を整理して、Eから始めたらいい” は、【抽象化】の時点で【転用】のフライングをしている印象ではないでしょうか。つまり、頭のなかが整理されアイデアが生まれやすくなったのです。

また、自分のなかでモヤモヤしていた後悔は、単に【事実】を頭のなかでグルグルと回していたものだと知りました。上の例で言えば、結果的に「ここから始める」と決めた内容は、なーんだ、いままでこんな簡単なアイデアも出せなかったのか、ということだったからです。

もっと早くこのメモ術を実践していれば、1年の終わりに後悔することもなかったでしょう。ある意味、今年一番の後悔は、3ステップメモ術を実践していなかったことかもしれません……。

***
今年1年の「後悔」を対象に、前田裕二氏の3ステップメモ術で来年に向け、改善・解決の糸口をつかんでみました。アイデアが湧き、道筋ができ、自己効力感と意欲が湧いてきます。ノート1冊とペンですぐに実践できますよ。ぜひお試しあれ!

(参考)
日経xwoman|「メモの魔力」実践編 3ステップで書く&99の質問
EL BORDE(エル・ボルデ) by Nomura|【前田裕二】日常すべてがビジネスアイデアに変わる戦略的メモ術 | 境界線の越えかた
高知工科大学|科学的な見方・考え方

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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