“企画ストック数1万以上” の凄腕が教える「企画を出せる人・出せない人」の決定的違い

高瀬敦也さん「企画を出せる人・出せない人にある決定的な違い」01

上司から「何か企画出してよ」と言われてすぐに企画を出せる人がいる一方、いつもパッとした企画を出せない人もいます。両者のあいだにはどんな違いがあり、どうすれば企画を出せる人になれるのでしょうか

フジテレビ在職中にテレビ番組『逃走中』などをヒットさせたことで知られるコンテンツプロデューサーの高瀬敦也(たかせ・あつや)さんが、自身のノウハウを公開してくれました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

ゼロから1は生まれないからこそ、「インプット力」が重要

企画を出せる人と出せない人、両者を分けているのは「インプット力」「ストック」です。それぞれ解説しましょう。まずはインプット力について。

「ゼロから1は生まれない」というのが、私の基本的な考え方です。世のなかに登場した瞬間には多くの人が斬新だと感じるものであっても、よく考えてみると何かと何かの結びつきによってできていることがほとんどです。

たとえば、どこにでも売っているペットボトル入りのお茶だって発売された当時は斬新なものでしたし、だからこそヒットして、いまでは当たり前の商品として定着したのでしょう。1977年、日本で最初にペットボトルが採用されたのは、醤油です。1982年から清涼飲料水にも採用されましたが、そのあとも長くお茶にはペットボトルは採用されていませんでした。

世界初のペットボトル入り緑茶飲料が発売されたのは、1990年。たしかに斬新だったのですが、やったことといえば「ペットボトル」と「お茶」という既存のものを結びつけたに過ぎません。

でも、もしペットボトルもお茶も知らない人がいたとしたらどうでしょう? その人にはペットボトル入り緑茶飲料という商品を企画することは絶対にできません。だからこそ、インプット力が、企画を出せる人と出せない人を分けるのです。

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時間をかけず「他人の思考」を借りてインプットする

では、インプット力を高めるにはどうすればいいのでしょうか? インプットというと、勉強のようなイメージをもっていて「大変そう」とか「時間がかかりそう」と思う人もいるかもしれません。

こう言う私も基本的に面倒くさがりですから、できれば時間はかけたくありません。では、いかに楽にインプットするかを考えてみましょう。自分が好きなものについてのことなら、勝手に楽にインプットできます。問題は、好きなもの以外のことに関するインプットです。

そういったインプットをするために、私は他人の思考を借りることにしています。企画をつくるにはインプットが大切だと言っても、世のなかのあらゆる情報をインプットするなど不可能なこと。ですから、なるべく無駄なく自分の企画に活かせそうな、たとえばいま旬なものだとか私の感性と相性がよさそうなものをインプットしたい。そこで、他人の思考を借りるわけです。

具体的には、仲のいい友人や仕事仲間など関係性が近い人、あるいは自分が憧れていたり尊敬したりしている人に、「いま何が流行っているのか?」「これから売れそうなものは何か?」などと聞くだけです。すると、その人たちがいろいろなところからインプットしてきた情報のなかから、私に必要そうなものを勝手に整理して教えてくれるのです。

はっきり言って、楽をしています(笑)。でも、ビジネスパーソンひとりあたりの仕事量が増えていて、時間が足りないと言われるなかでは、なるべく時間をかけずに必要なインプットをすることも重要だと思うのです。

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「ストック」でいつでも企画を出せる状態をつくる

企画を出せる人と出せない人を分けているふたつめの要素は、ストックです。すでにお伝えしたように、企画はどこからか勝手に降ってくる思いつきのようなものではなく、過去にインプットしたものがいくつか結びついてできています。

つまり、頭のなかにあるものを出しているだけなのです。でも、そのときのコンディションによって、頭のなかにあるものを出しやすいときとそうでないときがあるのが人間。そうであるなら、いつでも出しやすい状態をつくっておくことが大切になります。

そのための方法が、私の場合はストックなのです。数多くのストックがあればあるほど、「こういう企画ってない?」と言われたときに、その場で「だったらこういうのはどうでしょう?」と対応しやすくなります。そのカードをストックというかたちで増やしておくわけです。私自身、これまでに1万以上の企画をストックしてきました。

そのストックは、もちろん企画書のレベルにまでできているのがベストですが、そうでなくてもかまいません。メモアプリなどを使って情報を整理してフォルダ分けしておくとか、ノートなどへの書きなぐりのメモでもいいでしょう。自分なりの方法で企画に近いかたちにしてストックしておけば大丈夫です。

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ひとつの企画をいくつにも広げてストックを増やす

私の場合、LINEに「メモ」という自分だけのグループをつくって、そこにどんどん打ち込んでいくようにしています。そうする理由は、企画は常に変わっていくものだからです。

たとえば、自分の気分や社会のムードの変化、あるいは新しいデバイスが登場したといった社会的に大きな出来事により、企画の内容は変わっていきますし、変えていかねばなりません。それこそ、最初はひとつだった企画だって、5個にも10個にもなる。そういう側面が企画にはあるのです。

例え話になりますが、最初は「ペットボトル入りの水」という企画だったのに、その入れ物がバケツになったりプールになったりするかもしれません。そうして変化に合わせて企画のストックを増やせておけば、企画を求める相手から「プールサイズじゃ困るんだよ……」と言われたとしても、「だったら、ペットボトルサイズのバージョンもありますよ」と即座に対応できます。

時代の流れが加速しているとも言われるいま、ひとつの企画の中身を、半年後、下手をすれば1ヶ月後や半月後にでも柔軟に変えていくようなことが必要でしょう。あるいは、企画したときには世のなかに受け入れられないものだったのに、時間を経て受け入れられるといったこともあります。企画がヒットするかどうかは、単にタイミングの問題であることも多いのです。

そういう現実に対応するためにも、「ひとつの企画」にこだわるのではなく、「ひとつの企画をいくつにも広げていく」意識をもって、ストックを増やしておくのが得策です。

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【超一流企画者が語る】経営者がこぞって欲しがる「企画できる人」になるシンプルな方法
『逃走中』の企画はこうして実現した。「周囲に差をつける企画」に絶対不可欠な要素とは

企画 「いい企画」なんて存在しない

企画 「いい企画」なんて存在しない

  • 作者:高瀬 敦也
  • クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
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【プロフィール】
高瀬敦也(たかせ・あつや)
1975年11月16日生まれ、東京都出身。コンテンツプロデューサー。株式会社ジェネレートワン代表取締役CEO。フジテレビ在職中に『逃走中』『ヌメロン』『有吉の夏休み』などを企画。プロデュースしたゲーム版『逃走中』は累計100万本を達成し、「ヌメロンアプリ」は350万ダウンロードを記録。アニメブランド「ノイタミナ」を立ち上げ、「ノイタミナ」を命名。独立後は多分野でヒットコンテンツを企画。「とにかくつくって世に出しまくること」を信条とする。漫画・絵本原作脚本執筆、オリジナル家具ブランド「notos」の運営の他、ボディーチューニングブランド「DEMENSIONING」やソフトウェアプロダクション「POSTURBAN」を共同創業するなど幅広く活動。また、他業種にわたって新事業・商品企画、広告戦略策定などコンサルティング業務も行なっている。著書に『企画 「いい企画」なんて存在しない』『人がうごくコンテンツのつくり方』(ともにクロスメディア・パブリッシング)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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