時間ばかり管理しても限界がある。真のパフォーマンス発揮には「4つのエネルギー」管理が不可欠だ

野上麻理さん「社会人が本当に管理すべき4つのエネルギー」01

本サイト『STUDY HACKER』においては、「時短」や「タイムマネジメント」に関する記事が読者のみなさんの人気を得ています。それだけ、多くのビジネスパーソンが時間に追われているということなのでしょう。

ところが、グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン株式会社代表取締役社長である野上麻理(のがみ・まり)さんは、「時間管理には限界がある」と語ります。ビジネスで成果を挙げようと思えば、時間ではなく「エネルギー」を管理すべきなのだそう。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

限りがある時間ではなく、無限に増やせる「エネルギー」を管理する

ビジネスパーソンの多くが、限られた時間を有効に使おうと「タイムマネジメント」に勤しみます。しかし、それには限界があります。なぜなら、当然ながら時間には限りがあるからです。私たちが1日に使える時間は24時間。どんなに短時間睡眠の人であっても、起きていられる時間は1日に20時間が限界といったところでしょう。

そこで、「エネルギー」という、自分次第で上限なく増やすことができるものを管理し、増やすことを私は提案しています。

これには、「時間が有限」ということのほかにもうひとつの理由があります。「人生100年時代」などと言われるいま、多くの人が65歳、70歳、あるいは75歳まで働くことが求められます。つまり、それだけ持続的にパフォーマンスを発揮しなければならないわけです。

丸1日くらいであれば、徹夜をすればパフォーマンスを維持できることもあるでしょう。でも、その翌日には必ずパフォーマンスが落ちます。それでは、「持続的にパフォーマンスを発揮する」ことなどできません。

でも、エネルギーを増やし、「ここぞ」というところに向かってそのエネルギーを費やせば、持続的に安定してパフォーマンスを発揮できるというのが私の考えです。

私の考えのベースとなっているのは、「コーポレートアスリートトレーニング」です。これは、もともとはジム・レーヤーというアメリカのスポーツトレーナーが考案したもの。彼は、フィジカルだけでなくメンタルも含めて総合的にケアすることで、スポーツ選手のパフォーマンスを最大化する仕事をしていました。

そして、そのプログラムがスポーツ選手以外にも有効だと気づきました。最初に採用したのは、FBIや外科医です。そこで大きな成果が出たために、一般のビジネスパーソンに向けて体系化したものが、コーポレートアスリートトレーニングというわけです。

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「身体」「感情」「思考」「精神」という4つのエネルギー

その基本的な考えは、エネルギーを4つに分けて考えること。それは、以下のようなピラミッド構造になっています。

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エネルギーは、身体エネルギー」「感情エネルギー」「思考エネルギー」「精神エネルギーの4つに分けられます。そして、ベースとなる身体を整え、感情をコントロールし、思考を明確にして、精神エネルギーで残りの3つのエネルギーをどこに向けて使うかという方向性をマネジメントすることで最大のパワー、すなわちパフォーマンスを発揮できます。

それぞれのエネルギーが、どういうものかを解説しましょう。身体エネルギーは、そのまま身体がもっているエネルギーです。身体が元気であればパフォーマンスが上がるというのはわかりやすいことでしょう。そのエネルギーを高める基本要素は、運動・睡眠・食事の3つです。

それから、感情エネルギーは、「ネガティブであるか、ポジティブであるか」の違いです。ときには、ネガティブな感情もエネルギーになることもあります。考えが合わずに対立している上司に対する「なにくそ!」という思いがエネルギーになるというようなことです。でも、そういうエネルギーは長続きしません。冒頭にお伝えしたように、持続的にパフォーマンスを発揮しようと思えば、感情をポジティブに保っていなければなりません。

思考エネルギーは、簡単に言うと集中力です。たとえば、テニス選手がサーブの瞬間にまったく集中できなければどうなるでしょう? よい結果が待っているはずがありませんよね。私たちビジネスパーソンも、テニス選手にとってのサーブの瞬間のような、自分にとっての重要な場面で集中力を最大化できることが大切です。

最後の精神エネルギーとは、「価値観」のこと。みなさんは、なんのために仕事をしていますか? その目的、自分の価値観をしっかりともたないままで、ただなんとなく仕事に臨んでいるとしたら、パフォーマンスが上がりにくいことは明白です。

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「身体」「感情」「思考」エネルギーを高める方法

このうち最も重要な精神エネルギーを高める方法については、次回の記事で詳しく解説します(『30項目から探る「自分の価値観」が最高の成果につながる。“なんとなく” では仕事はデキない』参照)。もちろん、残りの3つのエネルギーを高める方法を押さえることも大切です。これらに関しては、スペースに限りがありますので、ここでは本当に重要なことの一部だけをお伝えしましょう。

身体エネルギーについては、なにより運動をすることをおすすめします。多忙な社会人にとって運動をする時間を確保することは難しいかもしれませんが、その効果は絶大です。普段は運動をしない人でも、久しぶりに運動をしてみたらすごくすっきりした経験は誰しもにあるでしょう。1日30分の運動をすることで眠りが深くなり、思考もはっきりと明確になります

感情エネルギーを高めるには、感情的に反応しないようにすることを心がけてほしいと思います。そうするためには、「起きてしまったことではなく、いま自分がコントロールできる範囲のなかで最善を尽くす」意識をもちましょう。

仕事をしていれば、同僚が重大なミスを犯すなど、「なにやってんだよ!」と他人を感情的に責めたくなる瞬間もあるものです。でも、それでは事態は好転しません。いま、自分に何ができるのか——そう考えることが、ネガティブ思考から脱却するための最初の一歩です。

思考エネルギーを高めるには、ルーティンをつくることをおすすめします。かつて野球のメジャーリーグで大活躍したイチローさんは、起床した瞬間から儀式のように数多くのルーティンをこなして、打席に入るという最も集中力を高めるべき場に臨んでいたという有名な話があります。

それと同じことを考えてみてください。仕事に関わることなら、たとえばプレゼンなど重要な場面を想定したリハーサルを行なうことも、一種のルーティンをつくることになります。そうしてリハーサルをしておけば、本番では「あ、これはリハーサルでやったことだ」と身体が自動的に反応し、スムーズに行なうことができるはずです。

加えて、イチローさんのルーティンのように、プレゼンを始めるときには必ず一度目をつぶるとか、部屋には左足から入るなど、自分がコントロールできる習慣や儀式のようなものをつくっておくとよりいいと思います。

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【野上麻理さん ほかのインタビュー記事はこちら】
30項目から探る「自分の価値観」が最高の成果につながる。“なんとなく” では仕事はデキない
「メール対応で働いた気になるな」P&G元CEOの言葉にハッとした人が磨くべき3つのスキル

【プロフィール】
野上麻理(のがみ・まり)
1969年1月12日生まれ、大阪府出身。グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン株式会社代表取締役社長。大阪外国語大学(現大阪大学)卒業後、P&Gジャパン株式会社に入社、マーケティングに従事。第一子出産後、SK-IIブランドマネジャー、東アジアスキンケアマーケティングディレクターに就任する。第二子出産後、37歳で部下が2,000人を超えるマックスファクタージャパン(P&Gスキンケア・化粧品事業部)のプレジデントに就任。P&Gブランドオペレーション&マーケティングヴァイスプレジデントを経てアストラゼネカ株式会社プライマリーケア取締役事業本部長に着任。執行役員マーケティング本部長として国内全製品のマーケティングを統括し、スウェーデン海外赴任。グローバルポートフォリオグループの呼吸器領域・吸入療法製品のグローバルブランドヘッドに。帰国後、アストラゼネカ株式会社の執行役員コマーシャルエクセレンス本部長、呼吸器事業本部長。その後、武田コンシューマーヘルスケア株式会社(現アリナミン製薬株式会社)取締役社長を経て現職。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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