頭が働かない、スッキリしない、勉強や仕事が捗らないとお悩みの方はいますか? これから紹介する4つの「最悪習慣」が当てはまっているのかもしれません。
この記事で紹介する4つの「最悪習慣」は、どれも脳の血流状態を悪化させるものばかり。 脳血流の低下は、記憶などの高次機能をつかさどる大脳皮質や海馬に悪影響を及ぼしかねません。
それでは、脳への血流を悪くする「最悪習慣」について説明していきましょう。
最悪習慣1:自分の体を使わない
厚生労働省のWEBサイトによると、家事や仕事の自動化・交通手段の発達により、日本人の身体活動量が低下していることは明らかなのだそう。
もしもあなたが、ほとんどの買い物をネットで行ない、階段を使わず、運動習慣もないのであれば、確実に脳への血流を悪くする「自分の体を使わない習慣」が身についているといえるでしょう。なおかつAIに、家電の操作ほかあらゆる動作をひと声で委託しているとしたら、事態は深刻です。
新日鐵八幡記念病院(現製鉄記念八幡病院)の佐渡島省三氏(当時院長)は、1998年の病院新聞で、
「カラダ全体の血の巡りが良いときは、必要に応じてスムーズに脳血流が増加するので、頭の働きが良くなる」
と説明しています。それに、手足を使うと脳が刺激されるとのこと。
また、東京都健康長寿医療センター研究所は、大脳皮質や海馬に伸びているアセチルコリン神経を活発にすると、脳を守る重要なタンパク質の「アセチルコリン」が放出されて増加し、脳の血流が良くなることを発見しました。アセチルコリン神経を活発にするには、息が上がらない(血圧があまり上がらない)程度に歩くといいそうです。
年齢に関係なく、無理なく体を動かすことで脳血流は増加します。便利な時代だからこそ、体を動かす意識を持つことが必要ですね。
最悪習慣2:ほとんど手書きしない
メモも日記も手紙もスマートフォンかPC、あるいはタブレットに入力している。買い物リストでさえ最近は手で書かない……という人はいませんか? それは脳への血流を悪くする最悪習慣にほかなりません。
2010年に発表された、磁気共鳴機能画像法(fMRI)を用いたインディアナ大学の研究では、手書きの教育を受けてきた子どもたちの脳の神経活動が、文字を書かずに見て学んだ子どもたちよりも、はるかに強化されていることがわかりました。
また、東北大学加齢医学研究所所長の川島隆太氏によれば、手書きすると脳の前頭前野が活発に働く一方、PCや携帯電話を使って文章を書いても、前頭前野はあまり働かないのだそう。
佐渡島省三氏が述べているように、手足を動かせば脳が刺激されます。なおかつ手書きの場合は、簡単に漢字を書けるデジタルツールと違い、漢字を思い出そうとしたり、思い出した漢字を文字として表現したりする必要があります。どちらが脳を使う(=脳血流量が増える)かは一目瞭然ですよね。
前頭前野は、記憶や学習に深く関連し、思考や創造性を担う脳の最高中枢です。感情を抑制する理性的な脳でもあるとのこと。
デジタル機器を使わず何でも手書きにしろとは言いませんが、手で書く行為を少しだけ増やせば、脳の血流が良くなり、心も落ち着くはずです。
最悪習慣3:長時間のスマートフォン使用
最近、スマートフォンの使いすぎが原因で、「脳過労」に陥る人が増えているのだとか。脳過労者の脳画像を見ると、正常なときと比べて明らかに脳血流が減っています。脳血流が減っているということは、脳の機能が低下しているということです。
おくむらメモリークリニック院長の奥村歩医師(脳神経外科)は、スマートフォンで脳が疲労している状態を「スマホ認知症」と名づけました。かつて同氏の “もの忘れ外来” の患者さんは大半が高齢者でしたが、2013年あたりから30代~50代の働き盛り世代の外来が目立つようになったそうです。
脳神経外科医の天野惠市氏も、同様の現象を伝えており、脳が情報で満杯になる状況を「オーバーフロー脳」と呼んでいるそう。
“もの忘れ” で来院する働き盛り世代に共通しているのが、スマートフォンのヘビーユーザーであることです。“もの忘れ” する原因は、頭の中の情報が整理されていないからなのだとか。
休憩時間さえもスマートフォンをいじって情報を詰め込んでいると、情報整理の役割を持ち、脳の安静時に活発化(脳血流が増加)するデフォルト・モード・ネットワークが働きません。 情報がドサドサと積み重なるばかりで整理されないと、脳はまるでゴミ屋敷のようになってしまうとのこと。
スマートフォンは、なんでもできる優れた携帯コンピュータです。でも、優れたスマートフォンを使いすぎて、優れた天然のコンピュータである「脳」の機能を低下させるのは、あまりにも “もったいない”。
3~5分程度でも、スマートフォンを見ずボンヤリする時間を過ごすクセをつけましょう。
最悪習慣4:計算機に頼って暗算しない
最新の脳科学研究の成果によると、暗算する回数が多ければ多いほど、計算が速くできるようになり、海馬の容量が大きくなっていくのだとか。
京都大学名誉教授の久保田競氏と、「脳科学おばあちゃん」こと妻の久保田カヨ子氏によれば、算数力を磨くと、脳の前頭前野がよく働くとのことです。前頭前野がよく働くと、論理的思考力や社会性、情緒や思いやりまで育まれるそう。
以前より、足し算や引き算などの単純な計算を暗算で行うと、脳の頭頂葉と前頭葉が主に活動することがわかっています。会食のちょっとした割り勘を暗算するのでもいいし、手元にある小さな現金(財布の中)を管理するために金銭出納帳をつけながら、簡単な暗算だけを繰り返すのもおすすめです。ぜひお試しください。
脳血流が悪いときのサイン
脳の血流が低下しているときに出てくる症状は、
- 眠気と無関係の生あくび
- 気分不良や不快
などです。座りながらの勉強あるいは仕事中に少しでもサインが出たら、 ゆっくりと席を立ち、場所を変えて休憩をとり、ぼんやりしてみてください。
症状が落ち着いたら、腕を回す、上半身をひねる、足踏みするなどの、軽い体操をしてみるのもいいでしょう。もちろん外に出て、気持ちよく散歩できるなら最高です。
日々の生活では、体をよく動かすことや、手書き、暗算も心がけてくださいね。
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アデレード大学と、ウィットウォーターズランド大学の研究では、人間の進化の過程で脳の大きさは約350%増加し、脳への血流量は600%と驚くほど増加していたことがわかりました。脳が知的になるためには、血液から酸素と栄養素を絶えず摂らなければならないとのこと。『海外研究「賢い脳は “血” に飢えている」——脳血流を増やす最高の3習慣』にて詳しく説明しています。ぜひこちらもご覧ください。
(参考)
久保田競, 久保田カヨ子,(2016),『小学校前にみるみる算数力がつく15の習慣』, ダイヤモンド社.
佐仲雅樹, 瓜田純久, 中西員茂, 中嶋均(2012),「『重症感』の症候学的考察 直感を共通言語化する」, 日本プライマリ・ケア連合学会誌, 35巻, 4号, pp.299-305.
STUDY HACKER|これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディア|「手書きの習慣」がないと危険な脳科学的理由。メモはやっぱり手書きに限る。
ダイヤモンド・オンライン|小学校前にみるみる算数力がつく15の習慣|IQは関係ない!暗算「回数」だけが明暗を分ける
地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所|歩行は、なぜ認知症予防につながるのか?
アサ芸プラス|あなたの「スマホ認知症」危険度チェック(1)脳にゴミをためているような状態
Tomoe Soroban トモエそろばん|そろばん(ソロバン・算盤)のポータルサイト|そろばんと脳
NHK クローズアップ現代+|“スマホ脳過労” 記憶力や意欲が低下!?
小倉第一病院ホームページ|病院新聞1998年05月|脳は血流量とともに
WSJ|How Handwriting Boosts the Brain
厚生労働省|身体活動・運動
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STUDY HACKER 編集部
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