脳がいかに血を欲しているか、脳の進化にはいかに血が必要かご存知ですか? 知的なビジネスパーソンを目指すなら、血に飢えた脳を満足させる「脳の血流・代謝アップ」習慣を取り入れましょう。ちょっとヴァンパイア的なタイトルで発表された研究とともに、説明します。
研究調査が示した「賢い脳が血を欲している」事実
オーストラリアのアデレード大学は、2016年8月31日に、少し驚くようなタイトルのプレスリリースを掲載しました。
SMARTER BRAINS ARE BLOOD-THIRSTY BRAINS
(引用元:News from the University of Adelaide Archive|Smarter brains are blood-thirsty brains)
この、「より賢い(洗練された)脳は、血に飢えた脳です」というタイトルで紹介された研究では、“人間の知性の進化は単に脳の大きさに関連している”という理論を覆し、「知性の進化は脳への血液の供給に、より密接に関連していた」と見出したそうです。
アデレード大学と、ウィットウォーターズランド大学の研究者らは、300万年前に生息していた猿人類の化石の頭蓋底にある(動脈が脳を通過する)2つの穴のサイズを使用して、人間の祖先の脳に流れる血液が、時間とともにどう変化したか計算したとのこと。
その結果、脳の大きさは進化の過程で約350%増加し、脳への血流量は600%と驚くほど増加していたことがわかりました。脳の代謝活性が高ければ高いほど、必要な血液が多くなるため、供給動脈が大きくなるというわけです。
アデレード大学のプロジェクトリーダー Roger S. Seymour 名誉教授は、複雑な思考と学習の進化を可能にするために、脳は神経細胞間のますます活発なつながりを満たそうとしたと話し、「わたしたちの脳が非常に知的になるためには、血液から酸素と栄養素を絶えず摂らなければならない」と伝えています。
知的能力のより直接的な尺度は、脳血流速度に比例する「脳代謝率」であろう、ということです。
脳血流と代謝アップは進化につながる?
大阪大学大学院医学系研究科によれば、脳はエネルギーの貯蔵が少ないそう。したがって、脳が正常な機能を営むためには、内頸動脈などを経て脳内を循環し、再びカラダに戻る血液循環(脳循環)が十分に行われる必要があるとのことです。
しかし、アデレード大学の研究を踏まえると、より十分な脳循環は、いまある脳を正常に働かせるだけではなく、脳を進化させるといっても過言ではありません。
もちろん、前出した研究は、300万年前に生息していた猿人類の化石を用いた調査なので、今日明日の変化は原子や分子よりも小さい量子レベルかもしれません。しかし、「確実に起こる」というデータは示されているのです。
ならば、こうしてはいられません。自分の脳を進化させるためにも、日々小まめにとりれられる習慣で脳の血流を確実に増やし、代謝をよくしましょう!
血に飢えた脳を満足させる習慣1:ハンドプレス
花王株式会社の感性科学、スキンケアなどの各研究所は、顔へのハンドプレス刺激により、脳の前頭前野の血流変化量が、安静状態よりも増加することを見出したと、2018年10月12日に発表しました。
スキンケアなどのとき以外にも、デスクワークで疲れたり、考えがまとまらなかったりするとき、無意識に両手で顔を覆うことはありませんか? その行為は、嬉しいことに脳の血流量を増やすようです。もちろん、有意な増加が見られたのは素手で行うハンドプレスとのこと。
これからは気がついたら、「そうだ、脳血流を増やそう」と意識的に行いましょう!
血に飢えた脳を満足させる習慣2:持久力をつける
筑波大学体育系 運動生化学・神経化学 ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター(ARIHHP)センター長の征矢英昭教授によれば、運動によって、脳の代謝が高まるそう。そして、脳に持久力をつけることは、認知機能の向上において重要なのだとか。
征矢教授らの研究グループは、運動によって消費・減少した脳のグリコーゲンが、栄養の補給と休養によって、運動前よりも高いレベルに回復することを初めて発見したといいます。つまり、カラダだけではなく、脳でも超回復(カラダの場合は、筋肉に適度な休息を与えると効率よく筋肉をつけられることを指す)が起こるということ。これを繰り返すと、脳の持久力が飛躍的に高まるそうです。
したがって、「運動」は、脳の血流量と代謝を高め、脳の持久力をつけ、認知機能の向上に貢献するというわけです。
買い物ついでのウォーキングや自転車の運転、階段昇降に、仕事の合間の体操やスクワットなら、毎日少しずつでも行えるはず。毎日の運動で徐々に持久力をつけ、代謝のいい脳になりましょう!
血に飢えた脳を満足させる習慣3:鼻呼吸する
医療法人社団智徳会ファミリー歯科医院の歯科医師・佐野真弘氏らは、株式会社脳の学校代表の加藤俊徳医師らとともに、2013年12月に神経科学の専門ジャーナル『NeuroReport』において、「鼻呼吸よりも、口呼吸は前頭葉に、より酸素消費を生じさせる」と発表しました。
そのため、口呼吸では前頭葉の活動が休まらず、慢性的な疲労状態に陥りやすくなるのだとか。それにより、注意力が低下し、学習能力や仕事効率の低下を引き起こすそう。
そもそも、口呼吸のように大きく呼吸することは、生体のバランスにとって理に適っていないとのこと。体内に取り込む空気量が多いと、体内のガス交換能力が低下し、脳への血流が低下するそうです。一方で、ゆっくりと穏やかに、少ない回数で呼吸する「鼻呼吸」は、バランスの取れた呼吸だといいます。
アメリカ・ノースウェスタン大学の研究や、スウェーデン・カロリンスカ研究所の研究などでも、「鼻呼吸のリズムと、脳の海馬と扁桃体の波長はよく同期」しており、「口呼吸よりも鼻呼吸のほうが正しく記憶できた」などといったことが見出されています。
血に飢えた脳を満足させたいなら、意識的に鼻呼吸をこころがけ、脳血流をよくして代謝を高めましょう!
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そのほかにも、脳血流の上昇(活性化)に効果的なことはたくさんあります。
- 本を読む
- 計算
- 新しいこと・難しいことへの挑戦
- 人と笑顔で楽しくつきあう
- 指の体操
- 上半身や下半身の体操
- ガムをかむ
- ボードゲーム
『「脳の活性化」の方法を徹底的に考えてみた。効果的な食べ物は、みんな知っている〇〇だった。』で詳しく説明しているので、ぜひ一緒にご覧ください!
(参考)
News from the University of Adelaide Archive|Smarter brains are blood-thirsty brains
Royal Society Open Science|Fossil skulls reveal that blood flow rate to the brain increased faster than brain volume during human evolution
大阪大学医学部附属病院 核医学診療科・放射線部|大阪大学大学院医学系研究科 放射線統合医学講座 核医学講座
花王 | スキンケア時に肌に触れることで得られる“心地よさ”と脳の血流変化量との関連を確認
EMIRA|軽い運動で記憶力UP! 脳と運動の密接な関係とは
アットプレス|世界初!三鷹市の歯科医師ら、口呼吸は前頭葉に負担をかけることを発見 全身に悪影響を与える口呼吸習慣病に注意
ますち歯科診療室|口呼吸・二酸化炭素の問題とは?
Study Hacker|口呼吸を「鼻呼吸」に変えれば記憶力が上がる!? 海外研究で明らかに。
Study Hacker|「脳の活性化」の方法を徹底的に考えてみた。効果的な食べ物は、みんな知っている〇〇だった。