ムダが減るから勉強スピードが上がる! 東大生もやっている「勉強のPDCAサイクル」の正しい回し方

黒板に書かれたPDCAの図

「資格をとりたくて、仕事の合間に勉強しているが、なかなかはかどらない」
「語学力を上げるために勉強しているけれど、いまひとつ力がついている感じがしない」

こうした状況に陥ってしまうのは、勉強の段取りがうまくいっていないせいかもしれません。改善するのに有効なのが、仕事でおなじみのPDCAを勉強でも回すこと。

今回の記事では、社会人の勉強における “正しいPDCAサイクルの回し方” について解説します。筆者の実践例とともに、その効果もお伝えしましょう。

【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

勉強に「PDCA」が大事なワケ

なぜ、仕事のみならず勉強でもPDCAサイクルを回す必要があるのでしょうか。その理由は、間違った方法で勉強を頑張り続けてしまうことを防ぐためです。

そもそもPDCAとは、次の4つを指します。

  • Plan:計画
  • Do:実行
  • Check:評価
  • Action:改善

これらのサイクルを回しながら業務などを改善する方法が、PDCAサイクルです。

これが勉強にも有用であることは、東大生の勉強スタイルを見るとよくわかります。教育事業などを手がける株式会社カルペ・ディエム代表の西岡壱誠氏は、東大生は「他の人よりも『復習がうまい』」と述べ、次のように説明しています。

復習は、「ただ同じことをすること」ではありません。復習とは「1回やったことを振り返って、改善策を考え、改善策を試してみるための行為」なのです。

(中略)東大生の「学ぶ速度」が速い理由は、復習を通じて改善するスピードが速いからです。

(カギカッコ内および枠内引用元:東洋経済オンライン|東大生が断言「正しい復習」こそ最強の勉強テクだ

つまり、東大生の復習法は次の行為によって成り立っています。

振り返る→改善策を考える→実行に移す

これは、まさにPDCAサイクルと同じルーティンですよね。

勉強においてPDCAサイクルを正しく回すことは、間違った頑張り方を早めにやめ、「できない」ことを「できる」ようにするための習慣であるとも言えるのではないでしょうか。

PDCAによって芽が出ている図

勉強での正しいPDCAの回し方:P(計画)

では、勉強での正しいPDCAサイクルの回し方を見ていきましょう。

まずは「Plan=綿密に計画を立てる」段階です。PDCAを正しく回そうと思うのなら、このPを正しく行なうことが出発点になります。

『鬼速PDCA』著者で、株式会社ZUU代表取締役の冨田和成氏によれば、PDCAをうまく回せない要因のひとつは「計画自体が失敗している」ことだそう。(カギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|「PDCAを回せない人」は実行のコツを知らない

そこで、冨田氏が挙げる次のポイントを押さえて、丁寧に計画を立てましょう。

【ポイント】「目標や期限」「目標と現状とのギャップ」「課題」を書き出す

(カギカッコ内引用元:日経xwoman|最短で結果を出す人の勉強手帳 PDCAを確実に回す

例として、語学の勉強の計画を立ててみます。

目標と期限、現状とのギャップや課題を書き出した例

上記の内容をふまえれば、どのくらい勉強すればいいのか具体的な量が見えてくるはずです。

勉強での正しいPDCAの回し方:D(実行)

次は「Do=計画を実行する」段階です。ここで大事なのが、行動のしやすさ。よって、以下がポイントとなります。

【ポイント】勉強に取りかかる前に、計画を細分化する

冨田氏はDoについて、「具体的なタスクレベルに分解」された「TODO」にすることを提案しています。そうしないと「実際の行動に移しづらい」からです。(カギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|「PDCAを回せない人」は実行のコツを知らない

たとえば、「商業簿記2級のテキストを1巡する」というDoがある場合、そのままだとやるべきことが曖昧で、何から手をつけたらいいのかわからないもの。そこで次のように細かくToDoに落とします。

「商業簿記2級のテキストを1巡する」Doを分解した例

このようにDoを細かく分ければ、優先すべきものがわかり、着手しやすくなるのです。

勉強での正しいPDCAの回し方:C(振り返り)

3番目の段階は「Check=計画を実行したあとの振り返り」です。計画通りにできなかった部分があればその要因を掘り下げ、改善につなげます。

【ポイント】結果を細分化し、「うまくいかなかったポイント」を探る

(カギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|東大生直伝「成績上がる子」見抜くただ1つの質問

前出の西岡氏が重要視するのも、このCheckの段階。なぜなら、この工程があるからこそ、「効率が悪い部分や意味がないものを」どんどん削ることができ、「うまくいかなかったポイント」から学べるからです。(カギカッコ内引用元:同上)

たとえば、語学検定の過去問で5割正解した場合。振り返りを行なわなければ、「引き続き問題集をとにかくこなせばいい」などと考えてしまいがちです。しかし、「残る5割は不正解だった」という結果を分解すると、次のようにつまずくポイントが浮かび上がってきますよね。

「語学検定の過去問で5割正解した」結果を分解した例

「わからない」「できない」部分の原因を特定できれば、次に必要なアプローチが見えてくるのです。

勉強での正しいPDCAの回し方:A(改善および調整)

最後のステップは「Action=Checkをふまえた計画の改善および調整」です。勉強のやり方やムダを見直して、計画を調整します。

ここでのポイントはこちら。

【ポイント】目的に沿う改善策を考える

西岡氏いわく、「どういう状態になるのが理想なのか」を考える「目的思考の努力」が大切だそう。(カギカッコ内引用元:同上)

先ほどの例で言えば、リスニングの点数が低かったからといって、ただ単にリスニング練習の時間や量を増やすだけで点数が上がるとは限りませんよね。Checkの段階で「発音変化のルールがわかっていない」と気づいたなら、「発音変化のルールを理解する」という目的に沿って勉強計画を改善するのが近道です。

そうして勉強計画を調整したら、実行に移しましょう。PDCAの繰り返しで、あなたに合った効率的な勉強法が確立され、成果も現れるはずです。

効率的に勉強している女性

“正しいPDCAサイクル” で勉強にチャレンジしてみた

語学の勉強で悩みがちな筆者も、正しいPDCAサイクルを活用して、勉強法の改善に挑むこととしました。

まずは、Planです。

筆者は「目標」を設定したのち、テキストを読みながら「現状」欄に “わかる” あるいは “わからない” と感じたところを箇条書きにして洗い出しました。課題につながる点には下線を引きます。

Planを書き出した実践例

「現状」欄で “わからない” ものとして書いた下線つきの項目は、そのまま「課題」欄へスライド。ここを見れば、勉強の優先順位が一目瞭然です。

次に、PlanをもとにDo――ToDoを決めていきます。

普段なら「テキストと単語を30分だけする」とざっくり決めてしまうところですが、行動のしやすさを意識し、やるべきことを細分化して「ToDo」欄に書き出しました。すると、勉強内容の解像度が上がり、勉強の段取りが見えてきました。

Doを細分化した実践例

そして一日の勉強が終わったら、Check(振り返り)。

「ToDo」欄の隣に設けた「Check」欄に、ToDoと照らし合わせながら気づいたことを箇条書きで洗い出します。

Checkの項目を書き出した例

伸ばしたい点が、Planの段階よりも明確になりました。筆者の場合、当初は発音変化がネックだと思い込んでいたものの、振り返りの結果、じつは語彙のほうが弱点だと判明。

そして最後のActionの内容は、「Check」欄の横に「⇒」でつなげ、個々に改善すべき点を挙げていきました。これを次のPlanに活かしていきます。

正しくPDCAを回せば、最短ルートが見つかる

PDCAを回して実感したのは、「勉強のムダ」が減ったこと。

今回、筆者が振り返りを行なった際、計画段階との状況のズレに気づきました。これは、実行後すぐに振り返ったからこそ。その結果、「優先度の高いもの」「重要ではないもの」の区別が明らかになりました。

この「実行→振り返り」があるからこそ、次に ”ムダのない計画” を立てられるのです。PDCAを回せば、そのつど自分の勉強法をブラッシュアップできます。これまでの「遠回りな勉強」を「近道できる勉強」に変えられるかもしれませんね。

PDCAサイクルを回して、より自分に適した勉強法をつくりあげましょう。きっと、もうムダな時間や労力を費やすことはないはずです。

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