「勉強しよう!」と思っても、結局三日坊主に終わってしまう。勉強を続けたい気持ちはあるのに、やっぱり続かない。なんとか勉強を続ける習慣をもちたい……!
こんな筆者の悩みを解決する方法を、今回は「Question Matrix」というものを使って考え、実践してみました。じつは、勉強が続かないのは「意志の弱さ」のせいではなかったのです。詳しくご説明しましょう。
Question Matrixとはなにか
Question Matrix(質問表)とは、ある悩みや課題に対してさまざまな角度から疑問を列挙していき、最も重視すべき問題点を見つけ出すためのフレームワーク。もともとは、学生向けに思考の深め方を説いた『Cooperative Learning & Higher Level Thinking: The Q-Matrix w/Question Manipulatives』のなかで紹介されたものです。
たとえば、ひとくちに「勉強が続かない」と言っても「やる気が出ないから」「時間がないから」「集中できる環境がないから」など、さまざまな原因があり、どれをクリアすればいいかわからないものですよね。そんな「悩みはあるけれど、具体的にどんな課題を克服すれば悩みの解消につながるのかわからない」と停滞している状況を打破するのに役立つのが、Question Matrixなのです。
具体的なやり方も解説しましょう。まず、この画像のようなフォーマット(※)を2枚用意し、それぞれの「テーマ」欄に解決したい悩みを書きます。
あとは、とても簡単な2ステップ。
1. 1枚めの表に、項目に従って疑問文を書いていく。
2. 2枚めの表に、1枚めで書いた疑問文に対する答えを書いていく。
このような工程で全項目を埋めていきます。
(※オリジナルのQuestion Matrixのフォーマットには「Why」の列もありますが、『CENTRAL BUCKS SCHOOL DISTRICT|Q-Matrix』によると、すべて使うのが大変な場合は列を選択してもよいとのこと。今回は少しだけ簡単に上記の5列のマトリックスで考えていきます)
「勉強が続かない人」が考慮すべきこと
Question Matrixは問題発見に効果的なツールではあるものの、発見した問題を克服する方法は別で考える必要があります。今回筆者が解決したいのは「勉強が続かない」という悩み。Question Matrixで問題を発見できたとして、その後は具体的になにを考慮して行動すれば勉強を続けられるようになるのでしょうか。
習慣化コンサルタントの古川武士氏によると、行動が習慣化できないのは「目標が曖昧な状態だから」だそう。たとえば、「早起きをする」「運動をする」「○○の勉強をする」のような目標は、いつ、どこで、なにをするといった「具体的な行動」を表していませんよね。これでは脳に指令が行き届かず、実際の行動につながらないそうなのです。
そこで古川氏は、以下の5つの視点で目標を具体化する「超行動化」という方法をすすめています。
- なにをする
- いつ・どの場面で
- どこで
- どれくらい
- どのように
たとえば「アイデア発想法の勉強をする」という目標を具体化してみましょう。
- なにをする:書籍を読む
- いつ・どの場面で:朝の出勤前
- どこで:会社の近くのカフェで
- どれくらい:30分
- どのように:三浦崇宏『超クリエイティブ』を読むという方法で
これで、とるべき行動が具体的にイメージできるようになりました。
つまり、勉強が続かないことを意志の弱さのせいにする前に、目標の立て方を見直す必要があるということ。それをせずに場当たり的に勉強に臨んでも、結局はまた挫折してしまうのです。
「勉強が続かない」悩みを、Question Matrixで分析してみた
ここまでの内容をふまえて、今回筆者は以下の取り組みをしました。
- Qustion Matrixで、勉強が続かない理由を分析する
- 分析結果をもとに、超行動化で目標を具体化する
- 2週間実践する
まずは、Qustion Matrixで勉強が続かない理由を分析します。疑問文でマス目を埋めたものがこちら。
次に、疑問文に対する答えを書いたものがこちらです。
実際にQuestion Matrixで思考を整理してみると、勉強が続かない大きな原因は以下の2点なのではないかと気づきました。
- 勉強する「環境」:現状はほとんど自宅。しかし、過去に勉強を続けられた環境はカフェやファミレスといった自宅以外だった。
- 勉強する「方法」:現状はインプットに偏りがち。いままでは人に話すというアウトプットの機会が多かったので、バランスがとれていた。
次は、分析結果をふまえ、超行動化に従って具体的にとる行動を考える段階。
- なにをする:インプットした知識を、ブログやSNSに書いてアウトプットする
- いつ・どの場面で:夜、寝る前
- どこで:カフェの環境音を流した自宅
- どれくらい:インプットに30分、アウトプットに60分
- どのように:中村明一氏の著書『倍音』を読むという方法で
勉強が続く環境をつくるために、自宅でもカフェ風のBGMやカフェの環境音源を流すことに決めました。また、夜に集中して勉強できた経験が多いことから寝る前の時間を勉強にあてることに。さらに、人と会えなくてもできるアウトプットとして、ブログやSNSに書くという方法を取り入れ、時間配分にも気を配ります。
こうして行動を具体化したあとは、2週間ひたすら実践しました!
「Question Matrix→超行動化」の効果
結論として、2週間しっかりと勉強を続けることができました……! 今後も続けられる確信を得られています。ここからは、気づいたことやこれから実践する人への提案などを報告させてください。
1. 信頼すべきは「やる気」ではなくて「環境」
筆者はこれまで「スキルアップしたい!」というやる気を大切にしていましたが、「やる気が出ないと勉強できない」という状態にもなっていました。しかしQuestion Matrixで見いだした「勉強の環境づくり」にアプローチしてみることで、やる気に左右されず勉強できるようになりました。
たとえば、「勉強が手につかないのは『環境』がよくないから。ならばBGMの音量や曲を変えてみよう」といったシンプルな思考で、いままでの苦悩が嘘のように勉強を始められるように。「やる気が出ない」と悩んでいる人ほど、ぜひQuestion Matrixで、一番勉強しやすい環境(場所や時間帯)を見つけてみてください!
2. アウトプットに時間を割けているか見直すべし
「勉強が身にならない無力感」から勉強を続けられなくなる、ということが最近よくありましたが、分析によりアウトプットの時間の激減に原因があると気づけました。精神科医の樺沢紫苑氏によると、学んだことを記憶するには「インプット3:アウトプット7」の割合が大切とのこと。本来アウトプットには、インプットの倍以上の時間が必要なのです。
そこで、「本から得た気づきをブログに書く」といったアウトプットに意識的に時間を割くようにしました。その結果、勉強が身になることを実感! 「勉強が身にならなくて続けられない」という人はぜひ、Question Matrixでインプットとアウトプットの割合を見直してみるといいかもしれません。
3. 超行動化で「迷い」を消し去る!
いままでは「なにから勉強しよう」と迷う時間がありました。勉強中もほかのことが頭をよぎり、集中できなくなることも……。しかし超行動化によって行動を絞った結果、こうした迷いを消し去ることに成功。結果、時間の無駄もなくなり、集中力も上がりました。
単純に超行動化だけ実践していたら、迷いは残っていたかもしれません。Question Matrixで発見した問題を反映させたからこそ、決めたことを信じて実行できたのでしょう。その意味で、「Question Matrix→超行動化」の流れでは、客観的な正しさよりも主観的な納得感の方が大切だと感じました。ぜひ実践の際は、思うがまま書いてみてください!
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悩みで頭がいっぱいになると、心も体も停滞してしまいがち。悩みはあるけれど解決の糸口が見えないというときには、ぜひQuestion Matrixを試してみてください!
(参考)
THE KNOWLEDGE COMPASS|THE QUESTION MATRIX
CENTRAL BUCKS SCHOOL DISTRICT|Q-Matrix
古川武士(2018),『こころが片づく「書く」習慣』, 日本実業出版社.
STUDY HACKER|成長速度を爆上げする「6×5のマトリクス」がすごい。課題ポイントを一気に発見できる!
樺沢紫苑(2018),『学びを結果に変えるアウトプット大全』, サンクチュアリ出版.
【ライタープロフィール】
月島修平
大学では芸術分野での表現研究を専攻。演劇・映画・身体表現関連の読書経験が豊富。幅広い分野における数多くのリサーチ・執筆実績をもち、なかでも勉強・仕事に役立つノート術や、紙1枚を利用した記録術、アイデア発想法などを自ら実践して報告する記事を得意としている。