コストを抑えられ制約もない独学は、多忙なビジネスパーソンにとって効率的な勉強法。しかし、自分のペースで自由に進められる反面、独学ではすべてをひとりで管理する必要があります。継続していくうえで、さまざまな悩みに直面することもありますよね。
今回の記事では、独学している人がもちがちな「6つの悩み」を解決する方法をお伝えします。
1. カリキュラムの作成に悩む→インターネットを活用しよう
一橋大学名誉教授であり経済学者の野口悠紀雄氏は、学ぶべき内容が立場によって違う社会人にとって、必要な部分だけを深く掘り下げることのできる独学は、最も効率的な勉強法だと述べます。その一方で、独学にはカリキュラムの作成に手間がかかるというデメリットがあると野口氏は指摘。特に始めのうちは、自分に合う勉強法がわからないため、どう計画を立てたらいいのか悩む人も少なくはないでしょう。
そこで野口氏が推奨するのは、インターネットを積極的に活用すること。
インターネットが普及した現在では、学習アプリや論文サイト、スケジュール管理など、独学を助ける教材やツールがいくらでもあふれていますよね。それらからヒントを得て、カリキュラムを組み立てるのもひとつの手なのです。
たとえば、電車やバスでの通勤時間が長いなら、移動しながら見られる動画コンテンツを利用した学習法を組み入れてみてもいいでしょう。独学を助けるアプリについては、『社会人・大学生におすすめの勉強アプリ15選。英語勉強やスケジュール管理に使える!』で多数紹介していますので、参考にしてみてください。
2. 勉強時間を確保できない→スキマ時間を使おう
忙しいビジネスパーソンにとって、まとまった勉強時間を確保するのは困難なこと。休日にまとめて勉強するのも悪くはありませんが、できることならプライベートを犠牲にせず、効率よく時間を使いたいものですよね。
そう悩む人に注目してほしいのが、「スキマ時間」の活用です。
では「スキマ時間」はどんな勉強に適しているのでしょう。医師として働きながらハーバード大学へ留学し、ボストン大学でMBAも取得した眼科医の猪俣武範氏は、多忙ななかハードな勉強をしてきた経験から、「勉強の内容によって、使う時間を変える」ことをすすめます。猪俣氏いわく、スキマ時間には英単語や数式を覚えるといった「暗記作業」が向いているとのこと。暗記作業は短時間でもできますし、細切れのスキマ時間を使いながら間隔を置いて何度も覚え直すことで、記憶の定着を促すこともできます。
スキマ時間にできる作業を振り分け、勉強時間をうまく配分すること。仕事と並行して独学をするうえで、時間を効率的に使うための大切な工夫なのですね。
3. モチベーションが続かない→ピア効果を利用しよう
独学のメリットはひとりで取り組めるということ。一方で、“孤独である” という側面もあります。講座に通って勉強するときのような仲間意識を感じることができないため、モチベーションの維持が難しく、勉強に気持ちが向かない……なんていう日もありますよね。
そういう場合は、SNSを活用して「ピア効果」を自らつくり出しましょう。
ピア効果とは、仲間がお互いの行動や生産性に影響を与え合うこと。『東大読書』『東大思考』などの著書がある現役東大生の西岡壱誠氏によると、地方出身で周囲に東大を目指す仲間がいなかった東大生たちは、受験生時代にSNSを活用して勉強仲間とつながり、モチベーションの維持を図っていたのだそう。勉強仲間とつながれば、お互いに刺激し感化し合うことで勉強意欲を向上させ、個々の成長につなげられると西岡氏は述べます。
職場で同じ勉強目標をもつ人を探すのは難しいという場合も、SNSを活用すれば簡単に出会うことができます。進捗具合のほか、勉強の困難さや楽しさなども共有し、お互いに成長していく仲間をつくってみてはいかがでしょう。
4. ダラダラ勉強してしまう→わからないことを言語化しよう
自分のペースで進められるのが独学のよさ。その反面、人の目にさらされないため緊張感がなく、ついダラダラと勉強してしまう人や、「効率的に勉強できない」と悩む人もいるのではないでしょうか。
その場合は、「わからないこと」を言語化するようにしてみましょう。
前述の西岡氏によると、東大生は勉強に移る前に「いまからやる勉強の意味はなんだろう?」と、目標を必ず自問自答するクセがあるのだそう。勉強の目的を明確化することで「意味のない勉強時間」をなくし、より濃度の高い勉強をすることができるのだとか。
たとえば『東大式節約勉強法』を著した現役東大生の布施川天馬氏は、「わからないこと」を言語化し、紙に書き出すことを実践していたのだそう。「英文法の〇〇がわからない」「〇〇の理論を理解していない」など、わからないことを洗い出したら、何を学ぶ必要があるのかがはっきりしますよね。“なんとなく” で勉強してしまうことがなくなるほか、勉強に向かう意識も変わり、より集中することができますよ。
5. 自分の弱点を把握しにくい→間違いノートをつくろう
独学で盲点となるのは、自分の弱点がわかりにくいということ。人からフィードバックを得ることができないため、どこが抜け落ちているのか、どういう問題が苦手なのか、把握しにくい傾向があります。
自分の弱みを知るためには、多くの問題集をこなすのが効果的。その際に、さらに助けとなるのが「間違いノート」です。
間違いノートとは、間違えた問題を転記してリストアップし、1冊のノートにまとめたもの。進研ゼミで編集に携わったのち、フリーライターとして活躍する太田あや氏によると、問題でつまずいた原因をノートにまとめて書いておくと、徐々に自分の弱点がクリアになってくるのだそう。
たとえば、単なる知識不足でミスが多いのか、問題文のひっかけで間違う傾向にあるのか、違う形式で出されると解けないのか……などの弱点が浮かび上がり、どこを重点的に勉強すればいいのかを把握しやすくなります。
専門学校の講師を務めた経験をもち、資格試験に精通している石川和男氏は、間違いノートに「出典情報も書く」ことをすすめています。ノートをきれいにとる必要はありませんが、どの問題集のどのページから書き記したのか、スムーズにたどれるようにしておくのもポイントですよ。
6. 勉強を習慣化できない→時間帯を決めよう
勉強をやり始めても、途中で挫折してしまう……。仕事で頭を抱えることが起こると、勉強をサボってしまう……。勉強を習慣化するのが難しいのも、独学ならではの悩みです。
独学で東大・ハーバード大学院に合格した経験をもつ本山勝寛氏は、「学習する時間帯を決めること」が独学の習慣化の秘訣だと述べます。
朝のほうが頭がさえる人もいるでしょうし、夜でないと時間がとれない人もいるでしょう。自分が集中できる時間帯を、スケジュールのなかから見つけ出してみてください。始めのうちは、15分や20分などの短い時間でもかまいません。大切なのは、「朝食前に必ず机に向かう」「通勤中は問題集をこなす」など、学習のパターンを身体に覚えさせ、毎日そのサイクルを回すことなのです。
また、勉強前に集中力を引き出すルーティンを使うのも効果的だと本山氏は述べます。「ホットコーヒーを飲む」「好きなアーティストの曲を流す」など、自分が勉強モードに入りやすいルーティンをつくれば、楽しく独学を習慣化できますよ。
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ここまでの内容を振り返ります。
あなたのお悩みを解決する方法は見つかりましたか? 今回紹介したものを、ぜひ独学の継続に役立ててみてください。日々の勉強の積み重ねは、きっとあなたの飛躍的な成長につながるはずです。
(参考)
NIKKEI STYLE|「独学こそ社会人に最高の勉強法」 野口悠紀雄氏
STUDY HACKER|社会人は「1日48分」を “◯◯” の勉強にあてよ。超多忙でも時間を確保する工夫とは
東洋経済オンライン|「地方出身の東大生」の勉強法が本質的すぎた
日本の人事部|ピア効果
東洋経済オンライン|「お金かけずに東大生」の勉強法が効率的すぎた
リクナビNEXTジャーナル|この「勉強法」は、やってはいけない
ベネッセ教育情報サイト|成績アップに役立つ「問題復習ノート」の作り方4「まちがいは消さない」
THE21オンライン| 独学で東大&ハーバード合格!目標を達成する勉強のコツ
【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。