なかなか動いてくれない “あの人” を「自ら進んで動ける人」に変える3つのテクニック

若きリーダーのイメージ

ある調査によれば、ビジネスシーンにおいて部下や後輩にストレスを感じている人はかなり多いそうです。その理由の上位にあるのは「やる気がない」「動いてくれない」など。そうした悩みは部下や後輩に対してだけでなく、仕事で関わる同僚や先輩に対しても起こりうることでしょう。

ただし、相手が動かないことと「やる気」は関係ないかもしれません。人に動いてほしいときに知るべき、「人が動くときの理由」を紹介します。

やる気がない・動かない部下にストレス8割以上

人材派遣の株式会社ライズ・スクウェアが、就業中の男女500人を対象に「部下や後輩にストレスを感じる理由に関する意識調査」を実施したところ、「職場に苦手・嫌いと感じる部下や後輩がいる人」は8割を上回ったそうです(調査期間:2022年7月14日~20日)。

理由の1位は「態度・マナーが悪い」、2位は「やる気・責任感がない」、3位は「素直に指示・指摘に従わない」、4位は「自発的に動かない」と続いており、2~4位の理由においては、こんな言葉が添えられています。 

  • 「頼んでも動かない」
  • 「自ら進んで行う姿勢が見られない」
  • 「言わないと絶対やらない」

(カッコ・カギカッコ内引用元:PR TIMES|【部下や後輩にストレスを感じる理由ランキング】男女500人アンケート調査

では、彼らはなぜ動いてくれないのでしょう。上の言葉を見ると、やはり「やる気がないからではないか」と感じてしまいます。

動くのに必要なのは「やる理由」

しかし、ビジネスコーチングを手がける株式会社PABLO 代表取締役・岩崎徹也氏の答えは違うようです。同氏はこう考えるのだとか。

必要なのは「やる気」ではないのです。人間は「やる理由」があればやるのです。

やる気がないように見える部下は、「やる気がない」のではなく「やる理由がない」から行動しないのです。

(引用元:東洋経済オンライン|やる気ない部下を嘆く上司のほうが実はダメな訳

たしかに、自分に置き換えてみると、行なう理由がハッキリしているタスクは、そのとき気分が乗っている・乗っていない関係なく、すぐに取りかかっている気がします。

加えて言えば、そうしてタスクをこなしていくことで、小さな達成感も重ねていけるわけです。すぐに行動できた自分を、肯定する気持ちだって生まれるでしょう。明確な理由が示されている仕事は、自信や満足感にもつながるかもしれません。

その仕事をやる理由に基づき意欲を高めている、笑顔のビジネスパーソン

人が「自ら動く」のはこんなとき

これまでの内容をふまえ、ここからは、人が自ら動くのはどんなときなのかを探っていきます。

1. メリットを理解したとき

岩崎氏いわく、

 「これをやることによって、会社として、または個人として、どんなメリットがあるのか」

 それが明確になっていない状態で「そんなことを考えずにやれ!」というのは、実は大きな間違いなのです。

とのこと。同氏によれば、「やる理由がわからずに意味がないと思うことを繰り返しやらないといけないときが精神的に一番つらい」そうです。

(カギカッコ内含む引用元:前出の「東洋経済オンライン」記事)。

行なう理由も、行なったあとの完結した状態も、重点の置きどころもわからないような状況で「もっとやる気を出して」なんて言われても、意欲が湧かないのは当然ですよね。ですから、部下後輩や同僚に動いてもらいたいときは、

  • 〇〇をするとみなが使いやすくなり、業務がスムーズになる

  • △△をすることにより現状を把握でき、会議や商談で困らない

  • みなで〇〇することにより、自然と〇〇について共有できる

といった具合に、(仕事の大小関係なく)その行動により生じるメリットを明確に伝えることが大事かもしれません。きっと相手は、「なぜ、これをやるのか?」と疑問だらけのときよりも、ずっと意欲的になってくれるはずです。

上司の説明でその仕事のメリットを把握したビジネスパーソン

2. 自分の使命を意識したとき

経営教育事業のPROJECT INITIATIVE株式会社 代表取締役・藤田勝利氏は、大塚商会が運営するERPソリューション情報サイトの「ERPナビ」内で、社会的使命というものが、いかに大切か、いかに役立つかを再認識させられたという、ある人物のエピソードを紹介しています。

その人物とは外資系医療機器メーカーのマネージャーのこと。同マネージャーは、部下の行動を厳しく管理することで抜群の業績を上げていましたが、一方で組織内には深刻なトラブルが発生していたそうです。

それからそのマネージャーは紆余曲折を経て、ある “問いを部下に考えてもらう” ことが効果的だと気づいたのだとか。その “問い” とは、

「あなたは、その仕事で、何人の命を救えると思うか?」

というもの。ずいぶんと重い印象の言葉ですが、これを軸に組織内のコミュニケーションが改善され、業績も伸びていったそうです。

これを単純に表現すれば、医療機器メーカーで働く人が、“この仕事で自分はいったい何人の命を救えるのか?” と考えることで使命感が生まれ、意欲が高まり、よい結果が生じた――となるわけですが、藤田氏によれば、これは情緒論ではないとのこと。

そこで、藤田氏の言葉を参考に一連の出来事を表現し直すと、医療機器メーカーで働く人が、“この仕事で何人の命を救えるか?” と考えることで自分の使命を意識するようになり、

  1. 〇〇を行なうことでムダを省けるかもしれない⇒
  2. △△を行なうことで機器が導入されるかもしれない⇒
  3. そうすると助けられる人が××人増えるかもしれない

といったことを想定し、「受け身」の状態から「主体的」に変化したと考えられます。それがコミュニケーションの改善と、業績の向上にも結びついたわけです。藤田氏いわく

 人が生き、働く上で、「社会や世の中の人に対してどんな貢献ができているか」は最上段に来るモチベーションであり、主体性・創造性を発揮する鍵です。

(参考および引用元:ERPナビ(大塚商会)|第27回 「社会的使命」が組織を変える

とのこと。この流れをふまえ、動いてほしい部下後輩や同僚に問うとすれば、

  • たとえばこの記事の執筆者に対しては、「この仕事で何人のビジネスパーソンの悩みを解決できると思うか」と問う。

  • たとえば BtoB 営業職の人に対しては、「この仕事で何社の、延べ何人の従業員を助けられると思うか」と問う。

といった感じでしょうか。

もちろん大事なのはその「何人か」ではなく、“問い” によって自分の使命を意識し、そこから主体的な思考を展開してもらうことです。どんな答えも尊重し、「きっと自分はできる」と思えるように導くことが、大きなポイントになるかもしれませんね。

使命感に燃えたビジネスパーソン

3. 自由を回復したいとき

私たちは行動の自由を脅かされたり奪われたりすると、その自由をなんとか回復しようとするそうです。この状態を心理的リアクタンスというのだとか(参考:錯思コレクション100|心理的リアクタンス)。

九州大学大学院 人間環境学研究院 教授の山口裕幸氏によれば、

 心理的リアクタンスが発生する理由は、基本的に、人間は自分の考えや行動については、自分が自由に決定できる状態を好むことにある。

とのこと。だからこそ、依頼や説得の際には “ほぼ自動的” に、(相手に)心理的リアクタンスが発生してしまうものなのだそうです。 (参考および引用元:オージス総研|第21回 効果的な説得的コミュニケーションのあり方をめぐって(3)-説得と心理的リアクタンス(反発)の関係に注目して-

しかし一方で、株式会社人材研究所 代表取締役社長の曽和利光氏はこう言います。

逆説的ですが、人は型にはめられると、反抗心が働いて自分で工夫をしたくなるものです。結果、モチベーションアップとは違うアプローチ方法ですが、そんな人たちでも、自発性や創造力が出てくるかもしれないのです。

(引用元:Yahoo!ニュース|「使命感」で働く人と「モチベーション」で働く人のどちらが信頼できるプロフェッショナルなのかは明らか

上記の “そんな人たち” とは、この記事で言う “自ら動いてくれない人々” のこと。まったく違う観点でありながら、“反抗心で自発性や創造力が出てくるかもしれない” という部分は、前出の藤田氏が “使命感が主体性・創造性を発揮する鍵” と述べた部分にも重なります。人が動くときには、自ら考えて行動することや、創造することが、自然とセットになるのですね。

いずれにせよ、型にはめようとすることで自ら動いてくれる可能性があるとするならば、なかなか動いてくれない――特にプライドが高そうな人には、こんなアプローチがいいかもしれません。

(※動かない人=Bさん)

  • まだ進めていないようなので、この件はAさんの指示通りに動いてください。もしも自分で考えて進められそうなら、そうしてください。

  • Aさんたちのやり方に合わせてください。ほかにいい方法があれば、Bさんのやり方で早々に進めてください。

あとは、「(え!? そんなの絶対にイヤだ !)自分で工夫してやります」と、すぐ行動に移してくれる流れに期待です。

***
人に動いてほしいときに知るべき「人が動くときの理由」とは何かを探ってみました。放っておいても相手が積極的に動くようになり、みなさんのストレスが軽減されるといいですね。

(参考)
オージス総研|第21回 効果的な説得的コミュニケーションのあり方をめぐって(3)-説得と心理的リアクタンス(反発)の関係に注目して-
Yahoo!ニュース|「使命感」で働く人と「モチベーション」で働く人のどちらが信頼できるプロフェッショナルなのかは明らか
PR TIMES|【部下や後輩にストレスを感じる理由ランキング】男女500人アンケート調査
東洋経済オンライン|やる気ない部下を嘆く上司のほうが実はダメな訳
ERPナビ(大塚商会)|第27回 「社会的使命」が組織を変える
錯思コレクション100|心理的リアクタンス

【ライタープロフィール】
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