世界トップクラスの “記憶アスリート” たちも実践する「連想結合法」が万能すぎる。

記憶術「連想結合法」がすごい01

突然ですが、以下の言葉をご覧ください。

ベッド、魚、カーペット、ドレス、犬、車、テレビ

もしも、「この7つの言葉を記憶してください」と言われたらどうでしょうか? よっぽどの記憶マニアでない限り、「うわあ、面倒だなあ」と思いますよね。仮に頑張って覚えられたとしても、1時間くらいですぐ忘れてしまいそうです。

ところが、これからご紹介する「連想結合法」を習得すれば、あなたはものの1分でこれら7つの単語を記憶できるようになり、しかも7つの単語の記憶は長期的に保存されます

本記事で紹介するのは、記憶力の世界大会で活躍する「記憶アスリート」たちが実践している、基礎的な技術です。人の名前が覚えられなくて困っている、暗記が苦手で勉強に苦労しているという方は、ぜひご一読ください!

たった7つの単語さえ覚えられない理由

冒頭で並べた単語の数は、たったの7つ。読み上げるだけなら10秒もかかりません。それなのに、いざ記憶するとなれば、どうしてこれほど大変なのでしょうか?

それは、単語どうしの間に関連性がないから。しいて共通点を挙げるなら、魚と犬が生き物である、ドレスとカーペットが布でできている、ということくらいでしょうか。覚える単語がもし「ベッド、枕、シーツ、目覚まし時計、パジャマ、いびき、寝ぐせ」の7つだったなら、“睡眠” という共通項があるため、比較的すんなりと覚えられるはずです。

関連性のないものは覚えにくい。裏を返せば、無理矢理にでも関連性を持たせられれば効率的に記憶できる、ということになります。記憶力のギネス記録保持者、エラン・カッツ氏は以下のように解説しています。

人はどういうときに物事に集中し、注意を払うのでしょうか? それは(中略)あるものが自分の興味のあるものと結び付いた、つまり連想でつながったときです。たとえば、ベルギーやフィンランドの地図をすぐには描けなくても、ブーツを連想させるイタリアの地図は描けるでしょう。

(引用元:プレジデント・オンライン|ギネス認定! 「世界一の暗記王」記憶の引き出し整理術【1】 ※太字は筆者が施した)

皆さんも、「イタリア半島の形は?」と聞かれたら、パッと思い浮かべられるはずです。簡単に思い出せる理由は、イタリア半島の形が、ブーツという身近なものと結びついているから。「ああ、あのブーツみたいな形のやつね」という具合に、すんなりと記憶の引き出しが開いてくれるのです。

同様に、ベルギーやフィンランドの形を覚えようとなったときには、覚える対象と「似た何か」を探せばいいのです。

筆者の主観ですが、例えばベルギーは「坂を登っているステゴザウルス」に似ています。

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フィンランドは食虫植物の「ウツボカズラ」のように見えました。

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「形の類似」のようなとっかかりがあるだけで、記憶のしやすさはだいぶ違ってきます。国内の例を挙げるなら、「チーバくん(※)」が登場して以来、千葉県の形状は広く認知されるようになりましたよね(※チーバくん:千葉県のマスコットキャラクター。犬のような容姿。横を向くと千葉県の形そっくりになる)。

連想結合法の3ステップ

では実際に、カッツ氏が紹介している方法を使って、冒頭の7単語「ベッド、魚、カーペット、ドレス、犬、車、テレビ」を覚えてみましょう。

【STEP1:最初の2つを結び付けよう】

手始めに、最初の2つの単語「ベッド」と「魚」を結び付けて覚えます。

手順としてはまず、「ベッド」「魚」それぞれを映像として思い浮かべてください。パッと思い浮かんだもので結構です。自宅の部屋にあるベッドや、昨日テレビで漁師が釣っていたカツオなど、実際に見たものや身近なものを思い出すのが簡単だと思います。

イメージできたら、「ベッド」と「魚」を無理矢理くっつけてみてください。例えば「魚がベッドの上でびちびちと跳ね回っている」という感じ。本当に無理矢理でけっこうです。

「ベッドに魚が乗っているなんて変じゃないか?」などと考える必要はありません。むしろ、「ヘンテコ」な想像のほうが、インパクトが強く、記憶に残りやすいのです。

より記憶の強度を上げたい場合は、なるべく具体的にイメージを描いてみましょう。具体的なイメージを想起するのも、印象を強く刻むことが目的です。先の例なら、魚の種類はカツオで、ベッドと同じくらい大きい。シーツには魚のぬめりが染み込み、生臭くなっている……など。詳細にイメージするほど「変だなあ」「嫌だなあ」と、感情がより動きやすくなるのです。

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【STEP2:「しりとり式」にイメージを連鎖させる】

次に、STEP1と同じ要領で7つの単語すべてをつなげていきます。つなげるやり方は、いわば「しりとり式」。ベッドと魚をつなげたら、次は魚にカーペットを、その次はカーペットにドレスを……という順番です。

実際にやってみると、例えば以下のようになります。

  • ベッドと魚     =ベッドの上で魚が跳ねている
  • 魚とカーペット   =その魚をペチャンコにして、カーペット代わりに床に敷く
  • カーペットとドレス =そのカーペットを切ってドレスにする
  • ドレスと犬     =そのドレスを犬が着る
  • 犬と車       =その犬が車を運転する
  • 車とテレビ     =その車がテレビに衝突する

上の例にならってイメージを作れたら、STEP3に進んでください。難しければ、例をそのまま用いてもけっこうです。

【STEP3:連想ゲームのように思い出す】

すべてくっつけ終わったら、記憶は90%完了したと言っても過言ではありません。あとは連想ゲーム式に、「ベッドといえば魚、魚といえばカーペット、カーペットといえば……」と思い出していくだけです。

では最初の「ベッド」から始まり、最後の「テレビ」までたどり着けるか、チェックしてみてください。STEP2のイメージがきちんとできていれば、それほど苦労せず思い出せるはずです。

参考として、思い出す際の意識の流れは、以下の通りです。

  1. まず「ベッド」を思い浮かべる
  2. 「ベッド」といえば……そうだ、「魚」が乗っている
  3. 「魚」といえば……「カーペット」にして床に敷く
  4. 「カーペット」といえば……切って「ドレス」にする
  5. 「ドレス」といえば……「犬」が着る
  6. 「犬」といえば……「車」を運転している
  7. 「車」といえば……「テレビ」に衝突する

最初はあまりうまくできなくても、2、3度繰り返せば、スムーズに思い出すことができるようになるはずです。練習を重ねれば、しだいに自分なりのコツがつかめてくることでしょう。

以上、STEP1~3によって、「ベッド」ひとつさえ覚えておけば芋づる式に残りの単語を全て思い出すことができる、ということになります。そしてこれら7つの単語に関する記憶は、空間的なイメージに裏付けられているため、長く定着します。試しに、また明日「ベッド」から始まるセルフテストをしてみてください。きっと思い出せるはずです。

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実践:「五大貿易港」を覚えてみよう

連想結合法によって、「セットで覚える系」の暗記ものは幅広くカバーできるようになります。

試しに、日本の「五大貿易港」を覚えてみましょう。五大貿易港は「千葉」「名古屋」「横浜」「神戸」「北九州」の5つです。

港を含む固有名詞は、抽象的でイメージしにくいですよね。そうした場合、まずは単語を視覚的にイメージできる別のものに変換する、という手順を挟みます。例えば「千葉 → チーバくん」といった具合。「千葉県」では漠然としていますが、「チーバくん」なら、頭の中でくっつけたり動かしたりするなど、視覚的に扱うことができますね。

記憶力競技日本チャンピオンの平田直也氏は、 単語を別のものに変換するプロセスを「タグ付け」と呼んでいます。つまり、「千葉」という抽象的な言葉に、「チーバくん」という視覚的なタグ(ラベル)を張り付けて、扱いやすくするのです。

変換には、語呂や連想を使いましょう。とにかく自分が思い出しやすいものであれば大丈夫です。繰り返しになりますが、最も重要なのは「視覚的にイメージできる」ものであること。「視覚的かどうか」の判断基準は、「絵に描けるかどうか」と考えればわかりやすいのではないでしょうか。

例えば、同じ千葉に関わるものでも、「マザー牧場」などは絵に描きにくいので、視覚的な変換例とは言えません。視覚イメージへの変換例は、以下のとおりです。

  • 五大港=港
  • 千葉=チーバくん(マスコットキャラクターから)
  • 名古屋=手羽先(ご当地食から)
  • 横浜=観覧車(みなとみらいの有名な観覧車から)
  • 神戸=コウモリ(神戸の「コウ」から)
  • 北九州=帰宅(「北九」との語呂から)

変換が終わったら、あとは同様に「連想結合法」を使います。

  • 「港」に「チーバくん」が立っている
  • 「チーバくん」には「手羽先」が刺さっている
  • 「手羽先」が「観覧車」の支柱に挟まっている
  • 「観覧車」には巨大な「コウモリ」が止まっている
  • 「コウモリ」が「帰宅」する(玄関のドアを開けているイメージ)

ポイントは、千葉ではなく「五大港」を記憶の出発点にすること。五大港から出発することで「港」のイメージからスムーズに「→千葉→名古屋→……」を引き出すことができるのです。

五大港のような「五大○○」のほか、徳川将軍などの系図、オリオン座を構成する星の名前など、とにかくセットになっている暗記ものであれば、「連想結合法」を用いることができます。たとえセットになっていない場合にも、「奈良時代の重要人物10人」といった具合に、自分でくくりをつくってしまえば適用することができますよ。

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おまけ:練習問題

最後に、練習問題です。以下のものを「連想結合法」を使って記憶してみてください。

【日本七霊山】

  • 富士山
  • 立山(たてやま)
  • 白山(はくさん)
  • 大峰山(おおみねさん)
  • 釈迦ヶ岳(しゃかがだけ)
  • 大山(おおやま)
  • 石鎚山(いしづちさん)

【維新十傑】(※難易度高)

  • 西郷隆盛
  • 大久保利通
  • 小松帯刀(こまつ たてわき)
  • 大村益次郎(おおむら ますじろう)
  • 木戸孝允(きど たかよし)
  • 前原一誠(まえばら いっせい)
  • 広沢真臣(ひろさわ さねおみ)
  • 江藤新平(えとう しんぺい)
  • 横井小楠(よこい しょうなん)
  • 岩倉具視(いわくら ともみ)

***
基礎的な記憶術「連想結合法」をご紹介しました。連想結合法のもうひとつ優れている点は、「楽しい」ということです。「これとこれはどうやってつなげて覚えようか」「どんなイメージを作ろうか」とゲームのように楽しむことができますし、時には自分がつくったイメージがヘンテコでクスッとする、なんてこともあるかもしれません。

気が進まないけれど覚えなければいけない、といった暗記ものを前にした際などには、ぜひ楽しく乗り切ってくださいね。

(参考)
プレジデント・オンライン|ギネス認定! 「世界一の暗記王」記憶の引き出し整理術【1】
東洋経済オンライン|「名前」をなかなか覚えられない人へ記憶のコツ
プレジデント・オンライン|下ネタや語呂合わせは、なぜ忘れないのか
記憶術の基本テクニック|連想結合法
Wikipedia|日本七霊山
Wikipedia|維新の十傑

【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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