「やりたいことを仕事にする」は本当に正しいのか? 仕事を選びすぎると大損する可能性あり。

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今の仕事が好きというわけではない。かといって明確にやりたいことがあるわけではないから、別にキャリアチェンジする必要もない。仕事において特に努力しなくても解雇されることもないし、与えられた仕事をこなすだけでも生きていける。でも、はたしてこれで本当にいいのだろうか……。

日本という国では、キャリアアップを目指そうという野心がなくても、何らかの仕事をしさえしていれば生きていくことができます。ですが、仕事につまらなさを一度でも感じると、「自分は何をしたいんだろう?」と悶々としてしまうのではないでしょうか。

「やりたいことがない」「やりたい仕事が見つからない」というビジネスパーソンは、この先どのように生きていったらよいのでしょうか?

「やりたいことがない」のは悪いことなのか?

世の中の大半の人は、「やりたいこと」を見つけていない――。編集・ライティングを行なうWORDSの代表で、『佐藤可士和の打ち合わせ』など多くの書籍を手掛ける竹村俊助氏は、こう言います。やりたいことが「ある」人よりも「ない」人のほうが、圧倒的に多いようです。

今は「やりたいこと」がないという方も、幼い頃には夢を抱いていたのではないでしょうか? 夢は成長するにつれて変わると言いますが、それは成長するにつれて現実を見なければいけなくなり、夢を見ることができなくなった、ということなのかもしれません。

では、「やりたいこと」つまり「能動的にやりたい仕事」がないのは、悪いことなのでしょうか? やりたい仕事がなくても最低限の稼ぎさえあれば生きていけるのに、「やりたい仕事、突き進みたいキャリア」を探し求める必要はあるのでしょうか? 「心からやりたいわけではない仕事」をしているだけでは、いけないのでしょうか?

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「やりたいことがある」ということは、生きる力になります。私たちはこのことを、車椅子の物理学者として知られる故ホーキング博士の生き方から学ぶことができます。ホーキング博士は21歳のとき、余命2~3年と言われるALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し、絶望のあまり極度の鬱に陥りました。そこから立ち直った彼は、物理学を追求し宇宙の謎に挑み続け、天才物理学者と呼ばれるまでになり、余命宣告から55年もの年月を重ねたのです。

ホーキング博士の生き方が物語るのは、いかなる困難にあっても夢を持ち続けることは、死を遠ざけるほどの強いエネルギーになるのだということ。また、自分の興味を追い求めた結果が最高の仕事を生み出すことにもなる、ということも学ぶことができます。

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一方、やりたいことがなく、「やりたくない仕事をしている」場合でも、自分にメリットがあります。

Web制作会社ベイジの代表・枌谷力氏は、「やりたい仕事」に就くことだけが良いとは言えない、と考えているそう。そして、「やりたくない仕事」の中には、決して無駄にはならない機会がある、と言います。

特に、若い人が考える「自分のやりたい仕事」には思い込みが多いもの。若いうちから「やりたくない仕事」を避け、「やりたい仕事」に固執すると、本来「やりたくない仕事」をすることで学べるはずだったスキルを身に付けることができなくなるのだそうです。

今、「やりたくない仕事」に就いているとしても、「やりたくない仕事」が「やりたい仕事」や「楽しい仕事」に変わったり、「やりたくない仕事」が将来の強みに変わったりする可能性があります。あなたが今「やりたくない仕事」をしているとしても、それはいつか「やりたいこと」につながるステップなのかもしれません。

「やりたいことがある」のはもちろん良いことですが、「やりたいことが(今のところは)ない」のは決して悪いことだとは言い切れないのです。

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「やりたい仕事」を探す方法

「やりたいことがない」のが悪いことではないとは言え、「やりたいこと」を仕事にできるなら、それに越したことはありませんよね。現状で「やりたい仕事」に就くことができていない人は、次に紹介する方法で「やりたい仕事」を探してはいかがでしょうか。それは、楽し『そう』に仕事をすることと、他の人は褒めるが、自分にはピンとこないことを仕事にすることです。

『転職の思考法』の著者である北野唯我氏によると、世の中の99%の人間は「どうしてもやりたいこと」に強くこだわらないタイプの人なのだそう。しかし、やりたいことを仕事にできるのは確実に強みになるので、今の自分の仕事を少しでも充実させるために、先ほど挙げた2つのことを心がけると良いと言います。

1つ目の「楽し『そう』に仕事をすること」とは、他人から見て「楽し『そう』」に働くということ。楽しそうに仕事をしていれば、客が集まり、より多くの仕事が生まれ、仲間からも助けてもらいやすくなるのだそう。ディズニーランドはその好例と言えるかもしれません。ディズニーランドでは、従業員(キャスト)が楽しそうに働くことで、客を引き付けていると言えます。客が多く来るからこそ、より仕事が充実するのもうなずけますよね。

2つ目の「他の人は褒めるが、自分にはピンとこないことを仕事にすること」とは、自分がいつの間にかできるようになった行為の中に才能が隠れているから、それを仕事にすればよいということ。例えば、最初は素人同然だったプログラミングの仕事を何年も続けていくうちに、自然と技術が高まり、自分では大したことはないと思っていても他人からは立派なスキルとして認めてもらえるまでになった、というようなことです。これは、立派な才能だと考えてよいのです。

「自分には、やりたいことなんて何もない」と嘆くより、「人から認められたスキルを、楽し『そう』に発揮しながら」仕事をしてみてはいかがでしょうか。いつかそれが、本当に「やりたい仕事」になるかもしれません。

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「やりたくない仕事」にも意義を見出す方法

「やりたくない仕事」が将来の強みになる可能性があるのなら、目の前の「やりたくない仕事」を嫌々こなすよりも、何らかの意義を見出したいもの。上司から振られるいつも同じ雑用や、自分の意思や努力をいっさい反映することができないつまらない仕事にも、意味があるとわかっていれば前向きに取り組めるはずですよね。

『課長島耕作』シリーズや『黄昏流星群』などの作者として知られる弘兼憲史氏によると、若い頃、特に新人のうちは仕事を選んではいけないそう。「この仕事はやりたくありません。あの仕事のほうがやりたいです」とか、「この仕事には何の意味があるのでしょうか」などと言ってしまうと、上司には嫌われ、会社からも見放されてしまいます。

その代わり、若いうちは「何でもやる」というスタンスで仕事をするとよい、と弘兼氏は言います。その際に大事にすべき心がけが、上司を喜ばせること。自分の仕事で上司を喜ばせることができれば、上司や会社から好かれ、その後の仕事の幅が広がっていくのだそうです。

コピー取りや資料準備などの単調な仕事を指示された場合でも、嫌々取り組むのではなく、上司を喜ばせようと思いながら取り組んでみてはいかがでしょうか。また、今の担当業務が好きではない場合でも、リーダーを喜ばせようと思いながらコツコツやってみてください。「上司に満足してもらい信頼を得ることが、自分の今の仕事の意義だ」と考えるのです。そうすれば、仕事の仕上がりや業務態度が自然と良くなり、上司から評価されるようになって、自分から好きな仕事を選べるようになる日が来るはずです。

「やりたくない仕事」をしている過程は、信頼を積み上げていく過程なのですね。

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躊躇していた「やりたいこと」を実行する方法

本当は夢があって、「やりたい仕事」があるのにもかかわらず、それを実行に移せていない方もいると思います。例えば、事業を起こしたいけれども、資金が足りなくて完全に踏み切ることができないような方です。

そのような方は、やりたいことを『部分的に』実行するというのはいかがでしょうか。もしもバーを開いてみたいなと考えているなら、レンタル店舗を借りて週末だけバーを開いてみるのです。

“Why Japanese people?”のフレーズでおなじみのお笑い芸人であり、IT会社の役員でもある厚切りジェイソン氏は、やりたいなと思ったことはすぐにやってみるべきだと述べます。

「ちょっとやってみたいな」と思ったらやる。「これ、おもしろそう!」と思ったものをやればいいんですよ。みんな「やりたいこと」を重く捉えすぎている。僕が芸人になったのも、家の近所のショッピングセンターでお笑いライブをやっていて、「おもしろい!やってみたい!」と思ったから。「小さな頃から芸人になりたくて」とか「芸人になるために仕事も辞めて家族も捨てる」なんてことはまったくないですからね。

(引用元:タウンワークマガジン|厚切りジェイソンに学ぶ「やりたいことを見つけるヒント」

一歩踏み出すことさえせずに諦めてしまっては、いつまでたっても「やりたいこと」を仕事にすることなどできません。新しいことを始めるときに全てを捨てて決死の覚悟で挑むことのみが唯一の正攻法ではないので、まずはリスクを最小に抑えられる「はじめの一歩」だけでも、踏み出してみてください

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「やりたい仕事がある」ことで、自分の人生は確実に豊かなものになります。「やりたいことを探す」「やりたくないことにも意義を見出す」「やりたいことを実行に移す」これらのことを、ぜひ始めていきましょう!

(参考)
プレジデントオンライン|なぜホーキング博士は鬱から立ち直れたか
ダイヤモンド・オンライン|「やりたいことを仕事にしよう」論はほとんどの人にとって重荷でしかない
ダイヤモンド・オンライン|“仕事を選ぶ新人は、絶対成功しない”「やりたくない仕事」が持つ大きな意味
タウンワークマガジン|厚切りジェイソンに学ぶ「やりたいことを見つけるヒント
note|「やりたいこと」なんて別になくていいんじゃない?
ベイジ|「やりたくない仕事」が教えてくれた大事なこと

【ライタープロフィール】
渡部泰弘
大阪桐蔭高校出身。テンプル大学で経済学を専攻。外出時は常にPodcastとradikoを愛用するヘビーリスナー。

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