「仕事の効率が悪い」
「頑張っているつもりなのに成果が出ない」
「いつも定時で帰れない」
こんなお悩みを解決するには、“ある3つの仕事” に割く時間や手間が、これまでと比べて「6割」や「2割」になるよう削減することをおすすめします。
業務効率が大きく向上する “3つの割合” について、以下で解説しましょう。
メールチェックの回数は「6割」に留めよう
ひとつめは、メール業務を効率化するテクニック。これまでのメールチェックの回数を10割としたら、それを6割にまで減らしましょう。
コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によると、アメリカの平均的なビジネスパーソンがメール業務に使う時間は、週の労働時間のうちなんと28%。時間に直すと、1日のうち、じつに156分をメール業務に使っている計算になるそうです。
メール1通を送るのはほんの数分程度でも、それが何十通も積み重なれば、思いのほか膨大な時間が奪われてしまうのです。
そこで、メールチェックを「1時間に1回」と決めましょう。これは、人材育成サービスを提供するゼルバナ創立者マット・プラマー氏が推奨している方法です。プラマー氏によれば、この方法でメールチェックのために作業が中断される頻度が減り、時間や集中力のロスを抑えられるそう。
1時間に1回ということは、1日あたり約8〜9回になりますね。ECプラットフォーム『Never Liked It Anyway』創設者でコンサルタントのアナベル・アクトン氏いわく、通常、1日あたりのメールチェック回数は15回。つまり、メールチェックを「1時間に1回」と決めれば、その回数が6割程度にまで減ることになるのです。
ほかにも、
- 一度読んだメールは「アーカイブ用フォルダ」に移す
(受信トレイが既読メールでいっぱいになると、同じメールを何度も目にすることになるため) - 過去のメールを探すときは「検索機能」を使う
(目視で探すと時間がかかるため) - アーカイブ用フォルダは「2個程度まで」にする
(フォルダが多すぎると、どのフォルダに分類すべきかを決めるのに時間がかかるため) - メールマガジンなどは「自動フィルタリング」し、別フォルダに入れる
(業務と無関係なメールに触れる機会をなくすため)
などのテクニックも併用すれば、メール業務の時間を75分程度にまで減らせるとプラマー氏は述べています。単なるメールチェックと思わずに、なくせるムダを省いて効率化するところから取り組んでみてください。
完ぺきを目指すタスクは「2割」に留めよう
もしあなたが、これまで10割のタスクに等しく注力していたのだとしたら、今後は、力を注ぐタスクは2割に抑えましょう。
日本ファシリテーション協会フェローで業務改善に詳しい堀公俊氏は、要領よく仕事をこなすには「重要な2割の仕事に力を注ぎ、重要でない8割の仕事は手を抜くこと」が大切であると述べています。
この「2:8」という数字は、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート氏が提唱した「パレートの法則」に基づいたものです。
パレートの法則とは「結果の80%が、重要な20%によって生み出されている」というもの。もともとは、所得の分布に関する法則(20%の高所得者が得ている所得が、社会全体が得る所得の80%を占めている)でしたが、「売上高上位20%の顧客による売上が、売上全体の80%を占めている」「20%の営業職が、売上全体の80%を担っている」など、さまざまな文脈で引き合いに出される法則です。
このパレートの法則に従えば、真に力を注ぐべき重要なタスクは、2割程度。自分が抱えるタスクのうち2割に集中すれば、8割分の成果が出せるからです。残りの8割のタスクは、効率の面で考えれば、必ずしも注力しなくてもよいものかもしれません。
そうはいっても「自分のタスクは重要なものだらけだ」と思う人もいるでしょう。しかし、タスクの重要度を区別せず、どのタスクにも全力を注いでしまうと、仕事がいつまでも片づかずに、作業の遅れや残業につながってしまいます。
そんなことにならないよう、まずは、注力すべき「重要な2割」のタスクを見極めましょう。優先順位のつける基準の一例として堀氏は、
- クライアントの重要度
- 売上へのつながりやすさ
などを挙げています。
それ以外の「重要でない8割」のタスクは、
- 時間があるときにやる
- ほかの人に任せる
- いっそ「やらない」と判断する
などの方法で優先順位を下げ、余った時間や労力を「重要な2割」のタスクに注ぎ込むのが合理的だと言います。
たとえば、プレゼン用の資料をつくる場合であれば、“資料のデザイン” や “レイアウト” といった、プレゼンの成否とは直接関係のない部分は「重要でない8割」といいうるでしょう。一方、 “資料の論理構成” や “説得材料となる数値データ”、“決めのキャッチフレーズ” などは、プレゼンの成否を大きく左右すると考えられるので、時間をじっくり費やすべき「重要な2割」なのです。
いま抱えるすべてのタスクを「重要な2割」「重要でない8割」のいずれかに分別したうえで、合理的な時間配分を考える。このひと手間により、仕事の効率や質を最大化できるでしょう。
叱る割合は「2割」に留めよう
ミスの多い部下への接し方について、これまで「叱る」が10割だったのだとしたら、今後はその割合を2割に抑えてみてください。叱る割合を抑えるには、ほめる割合を増やすことが肝心。そこで、部下への接し方を「叱る:ほめる=1:4(=2:8)」になるようにしましょう。
叱る割合を抑えるべき理由は、長々と説教やダメ出しをするなどして叱ってばかりいても、部下のモチベーションをそぐだけだからです。
「叱る:ほめる=1:4」の比率を提唱する、社団法人行動科学マネジメント研究所所長の石田淳氏によれば、「叱る」などの罰には即効性がある一方、部下に精神的負担を与えてしまうリスクがあるとのこと。ミスが減るどころか、改善意欲を失わせることになりかねず、叱ったら叱っただけ、叱るのに費やした時間がムダになってしまいます。
そこで必要になるのが、「叱る」と「ほめる」のバランスをとることであると石田氏。
- 部下が望ましい行動をとったら「すぐに」ほめる
- 部下の行動を「具体的に」ほめる
といったことを意識して、叱るよりもほめる回数を増やすといいそうです。たとえば、普段はちょっとミスの多い部下が電話で取引先と和やかに話せていたら、電話を切ったところで「いまの電話、とても印象のいい話し方をしていたね」とほめる――そんなイメージでしょう。
そして部下を叱る必要があるときは、割合のみならず「どのように叱るか」にも気を配りましょう。
コミュニケーションに関するコーチング活動を行なう岡本純子氏によると、相手の心に届く正しい叱り方をするには、以下4つの要素を伝えるといいそうです。
- 叱るべき事実
(例:○○さん。この前頼んだ資料の提出がまだだよね) - それがダメである理由
(例:あの資料がないと全体の仕事も進まないから、) - 叱る側が抱いた感想
(例:出してくれないと困るな。) - 相手に解決策を考えさせるためのフレーズ
(例:どうすれば早めに提出できそうかな?)
上記の要領を押さえれば、論理的かつ効果的に相手を指導することができます。つい部下を叱りすぎてしまう人や、部下のミスを指摘するだけで終わってしまう人は、ぜひ意識してみてください。仕事をより効率よく回せるようになりますよ。
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3つの “ムダ” を削れば、時間的ゆとりが生まれ、より多くの仕事をさばけるようになるはず。「いつも仕事に追われて時間がない!」とお困りなら、本記事のアドバイスをぜひお試しください。
(参考)
McKinsey & Company|The social economy: Unlocking value and productivity through social technologies
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|メールに費やす時間を大幅に削減する5つの方法
Forbes|How To Stop Wasting 2.5 Hours On Email Every Day
NIKKEI STYLE|何事も重要な20%を優先し考えよ 仕事効率化の法則
コトバンク|パレートの法則とは
株式会社日立ソリューションズ|第3回 非金銭的報酬≒トータルリワードを活用し、組織を活性化させる
東洋経済オンライン|日本人が苦手な「叱り方」、一気に上達する5秘訣
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。