ずば抜けて勉強ができる人に備わる「やり抜く力」は “この2つ” で高められる

勉強に必要な「やり抜く力」01

ずば抜けて勉強ができる人の共通点はなんだと思いますか? 特別な才能? IQの高さ? いいえ、どちらも不正解です。

ペンシルバニア大学教授のアンジェラ・ダックワーズ氏は、彼らには「GRIT(グリット)」と呼ばれる「やり抜く力」が備わっていると言います。

ダックワーズ氏いわく、やり抜く力がある人とない人では脳の機能的な構造が違うのだそう。とはいえ、やり抜く力がない人でも、これからの取り組みによって「やり抜く力」をもつ脳へ変えられます。今回は、 ”やり抜ける脳” を育てる方法について具体的にご説明しましょう。

「やり抜く力がある」人の脳

脳に関するさまざまな実験を行なう心理学博士のスティーブ・マイヤー氏との対話によって、ダックワーズ氏は、「やり抜く力」をもつ人は、脳の前頭前皮質の機能が活性していることを導き出しました。

私たちの脳は、嫌なことがあると扁桃体をはじめとした特定の領域が反応します。そのため、「できっこない」「やっぱり無理だった」といったマイナスの思考で、頭がいっぱいになってしまうのです。

ところが、やり抜く力がある人の脳は、前頭前皮質によって扁桃体らの悪い反応をより効果的に制御します。したがって、マイナスの思考が生じても「ちょっと待てよ、これならなんとかできる」「大丈夫、まだ挽回できる」と考えて、やり抜くことができるのだそう。

この働きは、先天的なものではありません。脳には適応性があり、やり抜く力がない人でも、これから「やり抜ける脳」に鍛えることができるのだとか。ではまず、現在のあなたのやり抜く力を「グリット・スコア」で計測してみましょう。

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あなたの「やり抜く力」を測るテスト

自分には「やり抜く力」がどの程度備わっているのか、みなさんもきっと知りたいですよね。ぜひ、以下のテストで「グリット・スコア」を算出してみてください。グリット・スコアとは、米軍陸軍士官学校の研究用にダックワーズ氏が開発した「グリット・スケール」という10の質問によって導き出される数値です。

表1のそれぞれの質問に対して、「まったく当てはまらない」から「非常に当てはまる」までの5段階で回答してください。すべての質問に回答できたら、表2を見て回答ごとに決められた各数値を合計し、さらに10で割ったものがあなたのグリット・スコアとなります。

【表1】

勉強に必要な「やり抜く力」03

【表2】勉強に必要な「やり抜く力」04

グリット・スコアを算出できたら、自分の「やり抜く力」がどの程度なのか、下の一覧(左がグリット・スコア、右がアメリカ成人のパーセンタイル値)を見て確認してみてください。たとえばあなたのスコアが4.3なら、標本であるアメリカの成人の80%よりも「やり抜く力」がある、つまり「やり抜く力」の強さが全体の上位2割に入るということです。

  • 2.5……10%
  • 3.0……20%
  • 3.3……40%
  • 3.5……40%
  • 3.8……50%
  • 3.9……60%
  • 4.1……70%
  • 4.3……80%
  • 4.5……90%
  • 4.7……95%

さらに、奇数・偶数それぞれの質問のみに限った数値もあわせて出してみましょう。奇数の質問のみでスコアを出すと、ひとつの目標にどれだけ継続的に取り組めるかという「情熱」の数値が、そして偶数の質問では壁にぶつかってもやり抜ける「粘り強さ」の数値がわかります。このふたつは、どちらもやり抜く力を高めるには欠かせない要素です。

「情熱」と「粘り強さ」のうち、スコアが高かったほうが自分の強み。また、スコアが低かったほうは弱みなので、その要素を高められるよう対策を講じることもできます。それぞれの要素を具体的にどう高めればいいのか、その方法をご紹介します。

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「情熱」を高めるには、 ”目標設定の見直し” を!

「情熱」のスコアは、下位・中位・最上位という3段階の目標設定によって高められると、ダックワーズ氏は説きます。下位の目標というのは、たとえば「毎朝1時間勉強する」「1日30ページテキストを読む」といった日々の目標、中位の目標は「資格を取得する」「社内試験に合格する」といった下位の目標の先にあるゴールです。そして最上位の目標は、心理学で「究極的関心」といい、人生の方向性に関わる目標を指します。たとえば、「マーケティングに強い企業で、企画開発の業務に就きたい」といった感じのものが挙げられるでしょう。

ダックワーズ氏いわく、やり抜く力に欠ける人には究極的関心がなく、中位までの目標ばかりが乱立しているケースが多いのだそう。そうした人が「やり抜く力」を高めるには、次のふたつのコツを参考に、目標設定を行なってみてください。

3段階の目標に関連性をもたせる

最初のコツについて、たとえば「貿易系の国際関連業務に就きたい」を最上位の目標とした場合。中位の目標には「通関士と英語の資格取得」が、また下位の目標には「一日のうち朝は通関士の勉強に取り組み、夜は英語の勉強を行なう」がきて、目的と手段がひとつのピラミッドにおさまります。しかし、「社労士の資格もとりたいし、ビジネスに有利だから英語も勉強したい」という目標のみの場合、それぞれに具体性や関連性がなく、ひとつのピラミッドには収まりません。したがって、どちらかを思い切って切り捨てるべきでしょう。そう考えると、やり抜く力がある人には、最上位の目標達成に不要なものを切り捨てる能力があるとも言えますね。

自分に合った目線で目標を立てる

目標達成に主体性が欠かせないことは言うまでもありません。著書『一流の育て方』で、勉強におけるグリットの重要性を説くムーギー・キム氏も、一流に受け身の動機で行動を起こすものはひとりもいないと述べています。

ビジネスパーソン向けに勉強法を提案するビジネスフレームワーク研究所が示すところによれば、「他人の評価に左右されない自分目線で目標を立てる」とよいそう。というのも、自分目線の目標なら「前回に比べて数点がアップした」「スキマ時間にこれだけ勉強ができた」と自分なりの評価ポイントを見つけ、モチベーションを保つことができるからです。たとえ「毎朝1時間勉強する」という目標が達成困難でも、「朝の勉強は1日30分にしよう」のようにハードルを下げるなど、工夫ができるに違いありません。

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「粘り強さ」を高める第一歩は、 “楽観的思考” にあり

一方、「粘り強さ」のスコアは、脳の前頭前皮質の抑制機能に直結します。そして、この脳構造を活性化させる方法はただひとつ、困難を克服して「やればできる」という経験をすることだと、ダックワーズ氏は述べます。

しかし、粘り強さのスコアが低い人がいきなり「やればできる」と気持ちを切り替えることは難しいでしょう。そこでまずは、「楽観的思考」を身につけることをダックワーズ氏はすすめています。楽観的思考を身につける具体的な方法はふたつ、「失敗への解釈を改める」と「人の力を借りる」です。

「失敗への解釈を改める」とは、失敗を成長のチャンスと考えること。たとえばテストの点数が悪かった場合、「やっぱり自分には無理だ」と悲観せず、「この分野に弱いから、もう1回勉強しなおそう」「大きな試験の前に弱点を把握できてよかった」と、ポジティブにとらえることを意識してみましょう。

また「人の力を借りる」とは、誰かに相談したり、励ましやアドバイスをもらうことを指します。精神科医の和田秀樹氏によると、「孤独な勉強は損」とのこと。勉強仲間をつくり、お互いの勉強法や出題傾向などの情報を共有すれば、「自分もやればできる」と楽観的に考えられるようになりますよ。

***
勉強ができる人が持つ「やり抜く力」は、いつからでも高めることができます。目標の設定や失敗のとらえ方など、できることから始めてみてください。

(参考)
アンジェラ・ダックワーズ(2016),『やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』, ダイヤモンド社.
国立精神・神経医療研究センター|脳画像から「やり抜く力」を予測する手法を開発 ~目標の細分化が脳を変化させ達成を支援
ビジネスフレームワーク研究所(2020),『99%が気づいていない大人の勉強力』, 青春出版社.
ムーギー・キム、ミセス・パンプキン(2016),『一流の育て方―――ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる』, ダイヤモンド社.
和田秀樹(2009),『大人のためのハイスピード勉強法』, PHP研究所.

【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

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