あの人より優れていたい……その「不健全な優越性」があなたをむしばんでいる可能性

不健全な優越性01

他人からの目を気にして生きていませんか?
友人より自分のほうが優れている点があったとき、勝ち誇ったような気持ちになりませんか?
当てはまる方は、もしかしたら「不健全な優越性」にむしばまれているかもしれません。

今回は、この「不健全な優越性」というキーワードに焦点を当て、原因や解決策について考えていきましょう。

「不健全な優越性」とは

「不健全な優越性」とは、他人と自分を比較し、自分の優っている点に固執する状態のこと。「自分が相手より劣っている」ことを認めたくないので、すぐに相手と自分を比較し、自分の優位を自分でも認識するとともに、相手にも認めさせようとするのです。

たとえば、試験の結果が返ってきたとき、やたらと点数を聞いてきては、自分より点数が低いとわかると勝ち誇ったような顔をする人がいるとしましょう。彼らは、成績よりも「そのグループの中で精神的に優位に立ちたい」と感じています。こうした、他者との比較を通じて自分の優位性を誇りたい状態が「不健全な優越性」なのです。

反対に、他者との比較ではなく、過去の自分との比較を通して生まれ出てくるものを「健全な優越性」と呼びます。「健全な優越性」は、自分自身との戦いなので、不要なストレスに苛まれることもありません。前回の失敗を反省し、現在に活かすその姿勢は、自分自身を成長させることができるのです。

不健全な優越性02

「不健全な優越性」に陥る原因

では、なぜ「不健全な優越性」に陥ってしまうのでしょう。

前述のように、この状態の根底にあるのは「自分が優れていることを自認したい、また認めてほしい」という気持ち。つまり、承認欲求が働いている状態なのです。

アメリカの心理学者アブラハム・マズローの唱えた『欲求5段階説』の4番目に位置する承認欲求は、自分自身を高めようとする自己承認型と、他者から認められたい他者承認型に分かれ、「不健全な優越性」は後者の状態に内包されています。

アドラー心理学に基づいたベストセラー『嫌われる勇気』の著者・岸見一郎氏は、不健全な優越性が精神的健康を損ねるというアドラーの考えを紹介しています。他者との比較にばかり気をとられていると、自分の存在意義が他者の反応ありきになってしまうのです。

「周りから称賛されたいから一流の大学に入りたい」「尊敬されたいから出世したい」といった理由で勉強や仕事に打ち込んだとしても、これらの結果が目に見えるまで、あなたの欲求は満たされませんし、自分の想像通りの反応が返ってくるとも限りません。まず、他人の目を気にしすぎている状態から抜け出すことが、「不健全な優越性」に陥らないための第一歩なのです。

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「不健全な優越性」に飲み込まれないためには?

今まで見てきたように、「不健全な優越性」は他者との比較の上に成り立つものです。したがって、この状態にならないための最も簡単な策は、自分と他者を比較しないこと。相手がどう思うかは相手の主観でしか決められません。そして、相手からどう思われているのかという自身の思考も非常に主観的なものです。

アドラーは、こうした承認欲求を徹底的になくすことを良しとしていますが、完璧にこれをなくすのは難しいはず。精神科医の名越康文氏は、「承認欲求というのは誰もが持っている、普遍的な欲求である」と述べています。もちろん他人をまったく意識しない人が一定数いるのは事実ですが、多くの場合、自身の所属するコミュニティや会社などで周囲の人を気にしているのではないでしょうか。

そこで、承認欲求を「なくす」のではなく、「コントロールする」ための手法を以下でご紹介しましょう。

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対面で自分を認めてくれる仲間を増やす

現代は、SNSによって「いいね」やフォロワーの数が顕著に見えてしまう時代。自分がどう見られているのかが非常に気になり、承認欲求に支配されやすくなってしまいます。たくさんの「いいね」をもらうために、そして自分をより良く見せるために、食べきれない料理の写真や、きれいな景色をSNSに投稿し続けてしまいますが……インターネット上での評価に執着してもキリがありません

精神科医の熊代享氏は、直接会えて自分という存在を認めてくれるような友人を増やすことをすすめています。同氏によれば、マズローの欲求階層の「所属欲求」を満たすことで、承認欲求は改善されるそう。

職場のつながりでも、趣味のつながりでも、あなたという存在を認めてくれる人は周囲に大勢います。SNSで自分を良く見せることに疲れてしまったときには、友人と連絡を取り合ってみたり、新しい仲間を探したりしてみてはいかがでしょうか

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「人は自分に興味がない」ことを知る

承認欲求が高い人は、そもそも「頑張れば自分が認めてもらえる」と思って生活しているのではないでしょうか。そのような場合は、「思っている以上に他人は自分に興味がない」ことを認識するべきです。

脳科学者の茂木健一郎氏によれば、脳は、自分に直接的に関わる物事には強く反応を示すものの、自分に関係のない物ごとにはあまり反応しないそう。たとえば、職場で同僚に挨拶をしたのに、無視されてしまったとしましょう。あなたは、「何か悪いことをしたかな」「嫌われてしまったかな」と考えるかもしれませんが……実際は、その人がたまたま聞いていなかったり、ほかのことを考えていたりしただけかもしれません。

その反対に、あなたがそれほど目を向けていない人が、あなたのことを考えてくれているかもしれません。それを自覚すれば、あなたの承認欲求も少しずつ下がっていくでしょう。

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アドラーも言うように、承認欲求は誰しもが抱える心理。完璧になくすことは難しいかもしれません。しかし、他者の目を少し気にしないようにするだけで、「不健全な優越性」から抜け出すことは可能です。意図せずマウントをとらないために、注意してみましょう。

(参考)
新R25|承認欲求が強くなる原因は? どうやって充たせばいい? 精神科医に聞いてきた
ビジネスのためのWeb活用術。|承認欲求とは?強い人に潜む5つの欲求と特徴・原因・対処法
THE21オンライン|「アドラー心理学」入門 ストレス社会をサバイブする!
タウンワークマガジン|承認欲求との付き合い方│名越康文
心理学用語集|劣等感と優越感
Interaction Design Foundation|Esteem: Maslow's Hierarchy of Needs
岸見一郎, 古賀史健(2013),『嫌われる勇気—自己啓発の源流「アドラー」の教え』, ダイヤモンド社.
茂木健一郎(2018),『「いい人」をやめる脳の習慣』, 学研プラス.

【ライタープロフィール】
YG
大学では日韓比較文学を専攻し、自身の研究分野に関する論文収集に没頭している。言語学にも関心があり、文法を中心に日々勉強中。これまでに実践報告型の記事を多数執筆。効果的で再現性の高い勉強法や読書術を伝えるべく、自らノート術や多読の実践を深めている。

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