ビジネスパーソンの「正しい怠け方」。成長を止める“悪い怠け癖”はこうして改善する

菅原道仁先生インタビュー「怠け癖の解消法」01

「大事な案件を抱えているのに面倒くさくてやる気が出ない……」「集中すべき仕事に取り組んでいてもすぐに飽きてしまう……」。私たちは、ついつい怠けてしまいがちです。やるべきことはわかっているのですから、その「怠け癖」さえ解消できれば、ビジネスパーソンとしてもっと高い評価を勝ち取れそうですよね。

そこで、テレビやラジオ等の各種メディアでも活躍する脳神経外科医の菅原道仁(すがわら・みちひと)先生に、怠け癖解消法を教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

人間はもともと「怠ける」ようにできている

「怠ける」という行為は、人類の「生き残り戦略」と言えます。私たちは生命体ですから、まずなによりも生き残ることが最大の目的。そのためには、いざというときに備え、エネルギーの消費を抑えておく必要があります。

では、私たちの体の消費エネルギーの内訳がどうなっているかというと、じつは脳が消費する割合が非常に多く、なんと全体の約20%も占めています。ですから、生き残るためには、面倒なことを考えるといった、脳をたくさん働かせるようなことは避ける必要が出てくる。つまり、人類はもともと脳をなるべく働かせないように、怠けるようにできているのです。

たとえば、歯磨きをするときに、多くの人は「この歯を磨いたら、次はこの歯を磨こう」などと考えながら磨きません。それはもう習慣化されていて、ほとんどなにも考えずに歯を磨いているはず。そのことがよく表れているのが、虫歯ができやすい場所です。右利きの人の場合、左側の歯のほうが磨きやすく、意識しなければ右の奥歯は磨きにくいもの。そのため、右利きの人は右の奥歯に虫歯が多いのです。

あるいは、いまは在宅ワークをしている人も多いでしょうけれど、毎日の通勤電車に乗るにも、いちいち「○時△分の電車の□号車の×番目の扉から乗車しよう」なんて考えないでしょう? 日常的に使う通勤ルートなら、家を出て会社に着くまで、それこそほとんど自動化されているはずです。決断の回数、つまり、考えるという脳を働かせる回数を減らすことで、なるべくエネルギーの消費を抑えて忙しい毎日を生き抜くという我々の自衛策が、怠けるということなのです。

また、有名な話ですが、アップル社の共同設立者のひとりであったスティーブ・ジョブズは、いつも同じ服を着ていました。ジョブズは、同じ服を着ることで「今日はあのスーツにしよう、ネクタイはどうしようか」といった決断の機会を減らし、本当に大事な場面で間違いのない決断をするための脳のリソースを確保していたのです。「怠ける」と言うと悪いことのように思いがちですが、そうとは限らないわけです。

菅原道仁先生インタビュー「怠け癖の解消法」02

自分を成長させるために意図的に脳に負荷をかける

そうは言っても、なんでもかんでも怠け、自動化すればいいということではない。「自分を成長させたい!」「こういうスキルを身につけたい!」といった、ビジネスパーソンとしての願望を持っているのなら、やはり意識的に脳に負荷をかけて鍛えることも必要です。たとえば、将来のキャリアアップを目指して勉強することもそうでしょう。

ただ、そのときに、まわりのバリバリと勉強しているように見える同僚と自分を比べ、「自分は怠け癖が強いな……」なんて考えて落ち込むような必要はありません。なぜならば、どこで誰がなにをしているかということについては、本当のところはまわりの人間にはわからないから。バリバリ勉強しているように見える同僚も、自宅ではテレビゲームに明け暮れているかもしれないし、休日にはアイドルの追っかけをしているかもしれない(笑)。トータルの勉強量は、あなたと変わらないかもしれません。ですから、他人を見て自分を評価することはナンセンスと言えます。

ところが、人間にとって絶対評価をすることは意外なほど難しいもの。つい相対評価し、まわりと比べて自分を評価してしまうのが人間という生き物です。平均年収が100万円の国で自分の年収が120万円だったら「自分はすごい!」と思いますし、自分の年収が同じ120万円でも平均年収が1,000万円の国にいたなら落ち込んでしまうわけです。

だけど、本当に大事なことは、周囲と比較して自分を評価するようなことではないはずです。どこかの誰かのものさしなどで自分を測るのではなく、ビジネスパーソンとして人間として、自分のことをしっかりと見つめて考え、自分のやりたいことや自分の生き方を持つことが大事なのではないでしょうか。

菅原道仁先生インタビュー「怠け癖の解消法」03

自分の「軸」を持てれば、怠け癖を治せる

じつは、そういった自分の「軸」を持つことができると、怠け癖を治すということにもつながります。なぜなら、怠ける――自動化すべきところとそうではないところが、軸に照らし合わせることできちんと見分けられるようになるからです。

自動化できそうなことがあったとしても、それを軸に照らし合わせてみて自分の成長につながると思えることなら、そうしない。自動化することにはいい面もありますが、あまりそれに頼ってしまうと、自ら成長を止めてしまうことになってしまいます。

あるいは、先のジョブズの例のように、本当に大切なことに全力を注いだり自分がやりたいことを徹底的に追求したりするために、それ以外のことはできるだけ自動化する。そのようにして、自分の怠け癖をうまくコントロールしていくような思考を持ってほしいと思います。

菅原道仁先生インタビュー「怠け癖の解消法」04

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【プロフィール】
菅原道仁(すがわら・みちひと)
1970年生まれ、埼玉県出身。脳神経外科専門医、抗加齢医学専門医、日本体育協会公認スポーツドクター。1997年に杏林大学を卒業後、国立国際医療研究センター病院脳神経外科で研修を行う。クモ膜下出血や脳梗塞といった緊急の脳疾患を専門とし、国立国際医療センター、北原脳神経外科病院にて、数多くの救急医療現場を経験。2010年以降、北原ライフサポートクリニック院長、日本健康教育振興協会会長、四谷メディカルクリニック院長などを歴任。2015年、東京・八王子に菅原脳神経外科クリニックを開業。2019年、医療法人社団赤坂パークビル脳神経外科理事長に就任し、また、菅原クリニック 東京脳ドックを開業。「病気になる前に取り組むべき医療がある」との信条で、新しい健康管理方法である「予想医学」を研究・実践している。『認知予防のカキクケコメソッド』(かんき出版)、『頭の中の貧乏神を追い出す方法 世界一役に立つお金の授業』(KADOKAWA)、『0〜3歳の成長と発達にフィット 赤ちゃんの未来をよりよくする育て方』(すばる舎)、『なぜ、脳はそれを嫌がるのか?』(サンマーク出版)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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