「0点の文章」とはこんな文章。“伝わるだけ” のビジネス文書に決定的に足りない要素

川上徹也さん「働く文章を書くには読み手の視点に立つ」01

書店に行くと、文章術に関するビジネス書籍が無数に並べられています。それだけ、文章術を磨きたいと考えるビジネスパーソンがたくさんいるということなのでしょう。それらの書籍の読者の多くが目指すのは、日本語として正しく「伝わりやすい文章」を書けるようになることです。

しかしコピーライターの川上徹也(かわかみ・てつや)さんは、ビジネスシーンにおいては、「伝わるだけの文章」では場合によっては「0点」と断言します。その理由について、詳しくお話を聞きました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

伝わりやすいことは、大前提であり最低限のこと

ビジネスにおける文章については、「伝わりやすい」ことが最重要と言われます。最重要かどうかはともかく、重要であることは確かでしょう。文章とは、読み手になんらかの情報を伝えるために存在するのですから、その目的を果たせなければ意味がありませんよね。

しかし、伝わりやすい文章であることは、ビジネス文書においてはあくまでも「大前提」「最低限」と言えるものです。

もちろん、ビジネス文書の種類によっては、伝わりやすいだけで十分だというものもたくさんあります。日次や週次で行なう日常的な定期報告書や、出張精算書や勤怠届のような事務的な文書であれば、伝わりやすいだけでなんの問題もありません。

でも、たとえば上司や得意先に提出する企画書の場合ならどうでしょうか? 伝わりやすいだけで十分ですか? その企画書の目的を考えてみてください。

企画書の場合、上司や得意先など相手に情報を伝えることさえできればOKというものではありませんよね。上司や得意先の心を動かし、「この企画を進めよう!」と行動に向かわせることが目的だからです。あるいはプレスリリースの場合も、同じように読み手の心を動かし、メディアに取り上げてもらうという行動に向かわせることが目的となります。

極論すれば、そういった類いの文書の場合、読み手を動かすことができない——つまり、結果を出せない文書は、「0点」と言っていいのです。

川上徹也さん「働く文章を書くには読み手の視点に立つ」02

相手の心を動かし、行動に向かわせる「働く文章」

このような、読み手を動かして結果を出す文章のことを、私は働く文章と呼んでいます。

読み手を動かして結果を出すとは、「仕事で関わる相手を本気にさせる」と言い換えてもいいでしょう。仕事のほとんどは、ひとりでできるものではありません。上司に部下、得意先、取引先、顧客など数多くの相手と関わりながら仕事は進められます。

その相手がみなさんの文章による提案に納得してくれて、本気になって実行してくれたなら、結果はおのずとついてきます。そうなれば、その文章の書き手であるみなさんの評価も上がります。だからこそ、「働く文章」なのです。もっと言うと、あなたの代わりに「働いてくれる文章」と言ってもいいかもしれません。

それらの文章が働く場はじつにさまざまです。仕事においては数多くの人と関わる必要があり、その相手に読ませる文書も多種多様だからです。

プレゼンに勝つ。企画を通す。メールで依頼する。
ECサイト・DM・チラシ・セールスレター・POPなどで商品を売る。
プレスリリースをメディアに送って記事にしてもらう。
ウェブサイトで企業の紹介をして学生たちに「ここで働きたい」と思わせる……。

このようにさまざまな場がありますが、原則は同じです。相手の心を文章でグッと動かし、その結果として相手を行動に向かわせる——それこそが、「働く文章」の最大の目的であり、ビジネス文書において最も大切なことです。

川上徹也さん「働く文章を書くには読み手の視点に立つ」03

最大のポイントは「相手にとってのハッピーを考える」こと

その具体的な書き方については、次回以降の記事(『受賞歴多数の一流コピーライターが教える「成功するビジネス文書」2つの技術』『説得力ある文章で相手を落としたいなら、アリストテレスの “3要素” を盛り込みなさい』参照)で解説しますが、ここでは「働く文章」を書くうえで絶対に外せないポイントについて解説しましょう。

それは、読み手の視点に立つことです。

たとえば企画書を書く場合、その企画に対する熱量があればあるほど、「この企画はこんなにすばらしいんですよ!」というふうに、書き手側の視点からの内容に偏りがちです。

でも、実際に企画の採否を決める相手はどうでしょうか? どんなに企画そのものはすばらしいものであっても、その企画を採用した結果としてどんないいことが起こるのかが伝わってこなければ、その企画を通すことはないと思います。

だからこそ、読み手の視点に立つ、もっと言えば「相手にとってのハッピーを考える」ことが大切になります。「この企画を採用したら、ハッピーになれそう!」と相手に思わせることができれば、その企画書は立派な「働く文章」となります

そして、読み手の視点さえ常に意識しておけば、細かいテクニックなど知ることなどなくともみなさんの文章は大きく変化するはずです。それゆえに、「読み手の視点に立つ」ことが「働く文章」を書くうえで絶対に外せないポイントなのです。

川上徹也さん「働く文章を書くには読み手の視点に立つ」04

【川上徹也さん ほかのインタビュー記事はこちら】
受賞歴多数の一流コピーライターが教える「成功するビジネス文書」2つの技術
説得力ある文章で相手を落としたいなら、アリストテレスの “3要素” を盛り込みなさい

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【プロフィール】
川上徹也(かわかみ・てつや)
コピーライター。湘南ストーリーブランディング研究所代表。大阪大学人間科学部卒業後、大手広告代理店勤務を経て独立。数多くのプロジェクトに携わるなかで「働く文章」という武器を手に入れる。東京コピーライターズクラブ新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴多数。なかでも、企業や団体の「理念」を1行に凝縮して旗印として掲げる「川上コピー」が得意分野。社会人向けの「文章講座」は、「コピーライティングの方法論」と「心理学の知見」を融合させたオリジナルのメソッドで、わかりやすく結果が出ると人気。製造・小売・金融・サービス・ITシステムなど様々な業種の大手企業から、社員向けライティング研修の依頼があとを絶たない。『400年前なのに最先端! 江戸式マーケ』(文藝春秋)、『使えば使うほど好かれる言葉』(三笠書房)、『文章の鬼100則』(明日香出版社)、『仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ』(ポプラ社)、『臆病ネコの文章教室』(SBクリエイティブ)、『川上から始めよ 成功は一行のコピーで決まる』(筑摩書房)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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