受賞歴多数の一流コピーライターが教える「成功するビジネス文書」2つの技術

川上徹也さん「断言と問いかけの使い分け方」01

プレゼン原稿や企画書といったビジネス文書には、必ず「成否」がついてきます。読み手の心が動いて企画が通れば成功ですし、通らなければ失敗です。その成否を分けるポイントはどこにあるのでしょうか。

お話を聞いたのは、言葉を駆使して多くの人の心を動かし続けているコピーライターの川上徹也(かわかみ・てつや)さん感情に働きかけることがビジネス文書の重要ポイントであるとしつつ、その大前提として読みやすい文章であることも同じくらい大切だと川上さんは言います。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

つい使いがちな、「順接の『が』」に要注意

プレゼン原稿や企画書、プレスリリースといったビジネス文書における文章では、ただ相手に情報を伝えるだけではなく、読み手の心を動かして行動に向かわせることが最大の目的となります。そういった文章のことを、私は「働く文章」と呼んでいます。

「働く文章」を書くうえで重要な要素はいくつもありますが、大前提としては読みやすさ」「伝わりやすさが挙げられます。

このことは、「働く文章」にだけ言えるものではありません。日常的に書く定期報告書や事務的な文書であっても、読み手に内容が伝わらなければ意味がありませんから、あらゆるビジネス書に読みやすさと伝わりやすさは必要です。だからこそ、大前提なのです。

読みやすく伝わりやすい文章の特徴をお伝えするために、逆に読みにくく伝わりにくい文章に多く見られるNG項目をいくつか紹介しましょう。ひとつが、順接の『が』を使っているというものです。

順接とは、「前の内容が、あとの内容の順当な理由、原因、きっかけなどになっている接続」のことです。その反対に、「前後の内容が、矛盾、対立するものとして結びつける接続」は逆接です。簡単な例文を挙げると、「春になったので、暖かくなった」は順接であり、「春になったが、寒い」が逆接です。

「それがどうしたの?」と思った人もいるかもしれません。ところが、内容としては順接であるべきなのに、「が」とか「けれど」「でも」「しかし」といった逆接の接続詞や接続助詞を使っているケースが、一般の人の文章には本当に目立つのです。先の例で言えば、「春になったが、暖かくなった」というものです。これでは読み手は混乱してしまいます。

あるいは、純粋な順接ではなく単純な接続にも、わざわざ「が」を使う例は目立ちます。「例の件ですが、進捗はいかがですか」といったメールを送っていませんか? 「例の件の進捗はいかがですか」としたほうが、相手にはよほどわかりやすいはずです。

「順接の『が』」が使われがちな要因は、話し言葉で頻繁に使われることにあるのでしょう。特に、「けど」という逆接の接続助詞は、順接で使われがちです。「昨日、映画を観に行ったんだけど、すごくよかった」といった内容です。前後のつながりを無視して、「けど」「だけど」と連発している人はいませんか? その癖があなたの文章をわかりにくくしているかもしれません。

また、「春になったが、暖かくなった」の例のような短い文の場合なら間違うことはほとんどないかもしれませんが、一文が長くなりがちな人は要注意です。文の前半の内容と後半の内容のつながりを見失ってしまい、このNGを犯す傾向が高くなるのです。

川上徹也さん「断言と問いかけの使い分け方」02

「一文一義」を心がけ、漢字が多くなりすぎないようにする

そして、一文が長くなりがちだという場合、それ自体が相手に伝わりにくいことの要因にもなります。「私は走りますが、父は歩きます」のようにふたつの文が並列に重なる重文などによって一文が長くなればなるほど、内容は読み手に伝わりにくくなります。

基本的には、ひとつの文でひとつの意味を伝える「一文一義を心がけましょう。極端に言えば、先の例の「春になったが、寒い」も、「春になった」「でも寒い」というふうにしたほうがより好ましいということです。

それから、漢字とひらがなの表記やその割合に気をつけることも大切ですね。一般の人たちが目にする文章のほとんどは、出版社や新聞社によってきちんと整えられたものです。だからこそ気づいていない面もあるのですが、出版社や新聞社には、より読みやすくするために、漢字で表せる表現であってもその意味合いなどによりひらがなで表現するといった表記ルールがあります。

ところが、一般の人の場合、つい漢字を使いがちです。特に、ほとんどすべての文章をパソコンで作成するいまなら、変換で出てきた漢字表現をそのまま使ってしまうということも多いでしょう。でも、そうしてできあがった漢字だらけの文章は、読み手にとっては非常に読みづらいものです。あるいは、意味合いが正確に伝わりにくいという可能性も否定できません。

そこでおすすめしたいのは、『記者ハンドブック』です。『記者ハンドブック』とは、書籍や雑誌の編集者、ライターにとって必携と言われる辞書です。たとえば、「出す」という言葉の場合、「〜し始めるという意味では『だす』を使う」と『記者ハンドブック』には記されています。

「思い出す」という言葉も、「思い始める」という意味で使うのなら「思いだす」とするわけです。もちろん、前後の文脈からどちらかの意味合いかを判断できる面もありますが、読み手を混乱させないためにはこのような書き分けをしたほうがより親切だと言えます。

川上徹也さん「断言と問いかけの使い分け方」03

読み手の感情に働きかけてこそ、「働く文章」になる

では、読みやすさと伝わりやすさを備えているという大前提を押さえたうえで、「働く文章」にするには何が必要でしょうか? その要素にはいくつかありますが、ひとつは、読み手の感情に働きかけるというものです。

「働く文章」とは、読み手の心を動かして行動に向かわせる文章のことでした。そして、「人間は感情の生き物」とも言われるように、人が行動するときには必ず感情が絡んできます。そのため、読み手の感情に働きかけることが大切になるのです。

私は、心理学的見地から文章によって読み手の感情を動かす方法を研究してきました。その方法は数多くありますが、コピーライターという私の仕事にも大きく関わるものをひとつ紹介しましょう。それは、断言と問いかけを使い分けるというものです。

世のなかのキャッチコピーは、大きくふたつに分けると断言か問いかけかのどちらかしかないと言われます。前者は「たしかにそうかもしれない」と、後者は「自分と関係があるかもしれない」と読み手に思わせ、それぞれ感情に働きかける働きがあります。

断言の場合、言葉は短いほうが効果的です。なぜなら、短い言葉ほど脳に届くスピードが速く、スムーズに意味が読み手の脳に伝わるからです。「仕事は文章が10割!」なんて短く断言されたら、「たしかにそうかも……」と思わされませんか?

一方、問いかけの場合は、読み手がドキッとしたり答えを知りたくなったりするような、「自分と関係があるかもしれない」と思わせる内容が効果的です。新宿伊勢丹のかつてのキャッチコピーに「恋を何年、休んでいますか?」というものがありました。これなどは、まさにその典型です。

断言にしろ問いかけにしろ、プレゼンなどでは大きな力を発揮してくれるはずです。その際、読み手、あるいはプレゼンの場合なら聴衆の興味関心にも注意を向けておきましょう。読み手や聴衆の関心が高いことなら断言されたほうが行動に結びつきやすく、関心が低いことなら問いかけられたほうが行動に結びつきやすいという特性が人間にあるからです。

川上徹也さん「断言と問いかけの使い分け方」04

【川上徹也さん ほかのインタビュー記事はこちら】
「0点の文章」とはこんな文章。“伝わるだけ” のビジネス文書に決定的に足りない要素
説得力ある文章で相手を落としたいなら、アリストテレスの “3要素” を盛り込みなさい

文章の鬼100則

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【プロフィール】
川上徹也(かわかみ・てつや)
コピーライター。湘南ストーリーブランディング研究所代表。大阪大学人間科学部卒業後、大手広告代理店勤務を経て独立。数多くのプロジェクトに携わるなかで「働く文章」という武器を手に入れる。東京コピーライターズクラブ新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴多数。なかでも、企業や団体の「理念」を1行に凝縮して旗印として掲げる「川上コピー」が得意分野。社会人向けの「文章講座」は、「コピーライティングの方法論」と「心理学の知見」を融合させたオリジナルのメソッドで、わかりやすく結果が出ると人気。製造・小売・金融・サービス・ITシステムなど様々な業種の大手企業から、社員向けライティング研修の依頼があとを絶たない。『400年前なのに最先端! 江戸式マーケ』(文藝春秋)、『使えば使うほど好かれる言葉』(三笠書房)、『文章の鬼100則』(明日香出版社)、『仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ』(ポプラ社)、『臆病ネコの文章教室』(SBクリエイティブ)、『川上から始めよ 成功は一行のコピーで決まる』(筑摩書房)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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