不安すぎて「もう限界」と感じたら……この3ステップで心を落ち着かせて

ストライプ柄のブラウスを着た落ち着きのある女性

仕事や日常生活における大きな失敗や損害、世界的な経済危機にパンデミックなど、私たちが突然不安やパニックに陥る可能性は決してゼロではありません。

そんなときは、自分のなかにいる【大人の自分】を呼び戻すといいそうです。さっそく説明しましょう。

ストレスの限界が引き起こすこと

ニューズウィークやニューヨークタイムズなどで活躍したジャーナリストであり、従業員の生産性向上に焦点を合わせたコンサルティング会社の社長兼CEOでもあるトニー・シュウォーツ氏らいわく、「疲労・不安・パニックは、思考力や創造力、集中力や的確な判断能力、人間関係を管理する能力までも低下させてしまう」とのこと。

慢性的なストレスにさらされ続けると、私たちの身体に摩耗(すり減り)が蓄積してしまうのだそう。それを「アロスタティック負荷」と言います。山口大学大学院医学系研究科の渡邉義文教授らは、このアロスタティック負荷を「ストレスレベルがある “しきい値” を超えたことによる『心身の疲弊』」と説明しています。

シュウォーツ氏らによれば、アロスタティック “過負荷” が生じると、判断力の低下に加え、衰弱やバーンアウト(燃え尽き症候群)までも起きてしまうのだとか。

大きなストレスを抱え、眉間をおさえるビジネスパーソン

「いまの自分」はどの自分?

では、もしもアロスタティック “過負荷” が生じたとき、私たちはどう対処すればいいのでしょう。

シュウォーツ氏らは、心理学者のピーター・ラヴィーン(Peter Levine)氏が開発したトラウマ療法の「ソマティック・エクスペリエンシング療法(Somatic Experiencing®)」に基づき構築した「3人の自分」モデルを挙げ、そのなかの1人を取り戻すようアドバイスしています。

私たちのなかには「3人の自分」がいるそうですよ。ただし、いま自分が「どの自分」に影響されているか知る必要があるとのこと。「3人の自分」それぞれの特徴を説明します。

  • 1人目【圧倒された自分】:最も無防備で傷つきやすい未熟な部分。
  • 2人目【サバイバルモードの自分】:強い脅威を感じたとき防御のために出てくる部分。反射的で衝動的かつ無計画。
  • 3人目【大人な自分】:愛情深い親のように、怯える「圧倒された自分」を落ち着かせ、安心させる部分。とても有能で、強さと共感力がある。

もしかして、大きな失敗をしたり、思わぬ脅威にさらされたりしているあなたは、【圧倒された自分】としてブルブル震えているか、あるいは【サバイバルモードの自分】として「こうしなきゃ」「ああしなきゃ」とがむしゃらになり、事態を悪化させているかもしれません。

サバイバルモードになると、思考や創造性を担う脳の最高中枢「前頭前野」が働かなくなってしまうのだそう。 つまり、アロスタティック “過負荷” がかかったとき、私たちが呼び戻さなければならないのは自分のなかの【大人の自分】です。

3人の自分

不安やパニックに対処する方法

ではここで、シュウォーツ氏らが説く「不安やパニックに対処する方法」を紹介します。先述のとおり、重要なのは、自分のなかの【大人の自分】を呼び戻して主導権を握らせることです。

ステップ1:感情を観察する

自覚していないことをコントロールするのは不可能なので、まずは自分が感じていることに意識を向けます

たとえば、不安や恐怖を感じていたら「こわがりちゃん」、イライラしていたら「おこりんぼう君」などと感情に名前をつけることで、ネガティブな感情と距離を置くことができ、客観的にとらえやすくなるそうです。

ステップ2:自分を落ちつかせる

自分を落ち着かせる際に効果的なのは、<呼吸法>と<運動>です。

  • <呼吸法>:シュウォーツ氏らによれば、「鼻から息を吸い(3つ数える)、ゆっくり口から息を吐く(6つ数える)」をわずか1分間行なうだけで、ストレスホルモンとして知られる「コルチゾール」の血中濃度が低下するそう。

    宮崎県立看護大学が健康な成人女性11名を対象に行なった2008年発表の研究でも、腹式呼吸時に尿中のコルチゾール濃度が有意に低下したとのこと。
  • <運動>:シュウォーツ氏らによれば、「挙手跳躍運動(ジャンピングジャック:直立からジャンプして脚を広げる。そのとき同時に頭上で手を合わせる、を繰り返す)」や「階段の上り下り」は、効率よくストレスを解消し、心身を静めてくれるとのこと。

家で挙手跳躍運動(ジャンピングジャック)をする女性

ステップ3:自分をいたわる

自分を落ちつかせることができたら、今度は【大人の自分】になりきって、「こんなときだから、不安になったり怖くなったりするのは仕方がないよ」「これが永遠に続くわけじゃないからね」などと【圧倒された自分】に話しかけ、いたわります

こうして【大人の自分】が主導権を握ると、自分の最も弱い部分である【圧倒された自分】を、不安と恐怖の感覚から守ることができるのだとか。

また、視野が広がり客観性が生まれるそうです。 事実と思い込みの区別もできるようになるそうですよ。ぜひお試しください。

***
自分のなかには「3人の自分」がいること、不安やパニックに対処する方法として、自分のなかの【大人の自分】に主導権を握らせることを紹介しました。

恐れる自分も、引っかき回す自分も、とても思慮深く冷静で有能な自分も、あなたの一部。それをしっかりと覚えておきましょう!

(参考)
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|危機の渦中で疲労や不安、パニックに対処する方法 サバイバルモードから抜け出すために
田中美智子, 長坂猛, 矢野智子, 小林敏生, 榊原吉一(2008),「健康成人女性を対象とした腹式呼吸による自律神経反応と尿中ホルモンの変化」 , 日本看護研究学会, 日本看護研究学会雑誌, 31巻 4号 pp. 4_59-4_65.
Wikipedia|Tony Schwartz (author)
SE Japan | Somatic Experiencing® Japan
Wikipedia|Allostatic load
脳科学辞典|ストレス
脳科学辞典|前頭前野

【ライタープロフィール】
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