「仕事は一生懸命こなしてるし、サボってるつもりもない。なのに、気がついたら1日が終わってしまう……」
そんなとても忙しいビジネスパーソンを3パターンに分けて、それぞれのタイプ別に最適な仕事術をご紹介します。あなたはどのタイプでしょうか?
これを読めば、あなたの仕事がなぜ終わらなくて、どうすれば改善できるかがわかりますよ。では、ご説明しましょう。
気がついたら1日が終わってしまう人の3パターン
この記事では、仕事が終わらないまま1日が終わるビジネスパーソンを、次の3タイプに分けて考えます。
1.「リサーチ先行」タイプ
情報を幅広く集めてから仕事に取りかかりたいタイプ。リサーチに必要以上に多くの時間を費やしがちなうえ、集めた情報をまとめきれないことも。
「時間をかけて情報を集めまくったのに、肝心な結論になかなかたどり着かなかった」という経験がある人は、これに当てはまります。
2. 何事も「じっくり没頭」タイプ
「○分以内で終わらせよう」といった期限を設定することなく、目の前の作業に没頭するタイプ。「あれこれ考えていたらもうこんな時間!」ということの繰り返しで、あっという間に夜になる毎日。
「資料のタイトル、どうしようかな。ああでもないこうでもない……」と悶々とするうちに20分もたっていた! なんて経験、ありませんか?
3.「頭のなかがごちゃごちゃ」タイプ
仕事中に「何だったっけ?」と記憶を探すことが多々あるタイプ。質問にすぐ答えられなかったり、重要なことを忘れたりして調べ直しが発生し、貴重な時間をロスしがちです。
「さっき上司からデータの修正を頼まれたけど、どの資料のことだったっけ」と慌てるうちに、1日が終わってしまうのです……。
ご自身が当てはまるものはあったでしょうか? ここからはタイプ別に、いまより仕事を早く終わらせる方法をご紹介しますね。
1.「リサーチ先行」タイプ⇒まずは仮説を立てよう
ついいろいろと調べすぎてしまう「リサーチ先行」タイプのあなたは、調べる前に仮説を立てる習慣をつけましょう。
コンサルタントの大石哲之氏は、調査の前に仮説を立てて、考えうるシナリオを描き、それを検証しながら情報を集めることをすすめます。これは「仮説思考」という思考法です。
最初から網羅的に調べて多くの情報を集めようとすると、かえって話が拡散し、不必要な調査に時間を浪費してしまうもの。ですが仮説を立てれば、調べるべきポイントが絞られ、効率的に結論にたどり着けるのだそうです。
たとえば「競合A社の菓子のヒット理由を調べる」とき、その菓子の価格、味、包装、客層などたくさんの情報を集めてから議論をすると……? 価格はこうだ、味はどうだ、包装は……と次々に話題が広がり、収集がつかなくなります。あとになって「じつは包装は全然関係なかった」となれば、包装について長時間調べたことが無駄に。
そこで、仮説思考を次のステップで実行してみます。
- 間違っていてもよいので、「もしかしたら、こうではないか?」と仮説を立てる。
例:「A社菓子のヒット理由は、価格が安いからではないか?」 - 仮説に沿ったシナリオを考える。
例:「安いからどの年齢層も購入しやすい」「特に、拡散力をもつ若者の購入意欲を掻き立てている」 - 仮説を検証しながら情報を集める。
例:上の仮説に合わせ、客層や購入理由を調査。 - 仮説が正しければ調査終了。正しくなければ1に戻って仮説を立て直す。
例:「価格が安いから」と結論づけられたら調査終了。そうでなければ「味を改良したからでは?」など新たな仮説を立てて検証を開始。
この方法なら議論が散らかりませんし、不必要な調査をして労力を無駄にする心配も減ります。情報集めに時間がかかって仕事が終わらなくなる人は、ぜひ試してみてください。
2. 何事も「じっくり没頭」タイプ⇒常に時間を区切ろう
目の前の作業に考え込みすぎる「じっくり没頭」タイプのあなたは、どんな小さな仕事でも常に時間を区切りましょう。期限を設ければ、「制限時間内に終わらせよう」という意識を強くもてるからです。
資格試験特化型オンライン学習サービスを経営する鬼頭政人氏は、仕事が遅い人と速い人には以下の違いがあると述べています。
- 仕事が遅い人:スケジュールを細かく管理しない。最終的な納期しか考えていない。
- 仕事が速い人:最終的な納期から逆算して、途中途中でこまめに期限を区切る。
つまり、限られた時間の中でやるべきタスクを順序よくこなすには、細かく締め切りを設けてひとつひとつ守ることが大切だということ。「報告書の作成」であれば「ドラフト作成期限」「上司の一次チェックをもらう期限」など、小さなタスクの期限を決めて着実に実行すれば、「気がついたらもう提出日直前」という事態を防げるのです。
何日にもわたって取り組む仕事だけでなく、日々の業務のスピードアップにも、もちろん同じことが言えます。
たとえば、顧客からの問い合わせに回答するため、調べ物をするとき。まずは「15分調べよう」と期限を区切ります。15分調べても回答にたどり着かなければ、手を止めて同僚に相談。このやり方なら、「調査に2時間も没頭してしまった」といったことにはなりません。
そんな制限時間にまつわる、驚きのエピソードを紹介しましょう。ソフトバンクグループ代表取締役・孫正義氏の考え事の制限時間は、たったの10秒! 「10秒考えてわからないものはそれ以上考えても無駄」というのが孫氏の持論。10秒たっても答えが出なければ、足りない情報を集め始めたり、場合によっては「今は結論を出さない」という答えを導いたりするのも孫氏流です。世界的成功の背景には、こうした時間への意識があったのですね。
目の前の作業に没頭しがちという心当たりがある人は、時計を見ずにいきなり仕事に着手するのはやめ、10秒とまではいかなくても必ず制限時間を設けてくださいね。
3.「頭のなかがごちゃごちゃ」タイプ⇒デスクを片づけよう
「この話って、どの案件に関することだっけ?」などと頭が混乱しがちな人は、ぜひデスクの片づけをしてみましょう。意外にも、物を整理すると思考も整理できるのです。
脳神経外科医の築山節氏によると、仕事の書類を(悪い意味で)適当に置いている人は「思考のファイル化」ができていないのだそう。思考のファイル化とは、大小さまざまな案件を覚えるとき、「この小案件はあの大案件に属するものだ」などとひもづけながら整理して覚えることです。
思考を整理すると、案件の重要度や優先度を把握できるため、おのずと書類整理もしやすくなります。「この資料は重要だから目立つ場所に置く」「この資料はあの案件に関係があるから、あの箱にしまう」などと、デスクを整頓できるわけです。
逆に、思考を整理しなければ、各書類の重要度や優先度、関連性を把握できません。そのため、書類を大ざっぱに置いてはデスクを散らかすことに……。
そこで築山氏がすすめるのが、書類整理やデスクの片づけです。「この書類はどこにしまうべき?」と考えるうちに、ごちゃごちゃだった思考が強制的に整理されるのだそう。
まずはクリアファイルや箱、ラベルなどを用意して、書類の分類から始めるといいとのこと。自分だけでなく他人が見てもわかるようにすると効果的だそうです。パソコンのデータを整理するのもいいかもしれませんね。
経営者向けに片づけを指導する “片づけ士” の小松易氏は、机を整理すれば、探し物に費やす無駄な時間が減り、そのぶん大切な業務に取り組めると述べます。小松氏いわく、片づけは「新しい時間を生み出す投資」。実際、デキるリーダーの机は片づいているのだそうですよ。
あなたも片づけの癖をつけて、思考の混乱をなくし仕事スピードを上げましょう。
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時間は限られていますから、少しでも効率的に仕事をしたいもの。ご紹介した仕事術をぜひ試してみてくださいね。
(参考)
大石哲之(2014),『コンサル一年目が学ぶこと』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
東洋経済オンライン|仕事が遅い人と勉強が苦手な人の意外な共通点
THE21オンライン|孫正義・「超スピード」仕事術の秘密とは
築山節(2006),『脳が冴える15の習慣 記憶・集中・思考力を高める』, NHK出版.
プレジデントオンライン|デキる人のデスクが"かたづいている"理由
【ライタープロフィール】
こばやしまほ
大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。