自分の可能性を狭めるダメな思考習慣。「“運命頼り” だと成功しにくい」というエビデンスあり。

運命に頼っていると成功しにくい01

大きな挫折を経験したとき、あまりにも悲しいことが起きたとき、前に進むため「これが運命なのだ」と受け入れることもあるでしょう。それは、仕方がないことです。

しかし、たとえば仕事や勉強などで多少の努力が必要なときに、「運命だから無理に変えようとしてもムダ」「今が充実していればいい」と、頻繁に“宿命論”のかげに隠れて努力を怠っていると、本来なら手に入れられていたはずの成功を、見す見す逃してしまいます。

つまり、運命によって挫折するのではなく、運命論(世の中の出来事はすべて成り行きや結果が定められていて、人間の努力ではそれを変更できないという考え方)によって挫折するのです。

今回は、運命論によって挫折するというエビデンスや、自分の可能性を狭めないために行うアプローチについて説明しましょう。

トップになる人は将来に重点を置いている

ロシア・HSE大学の心理学者であるAlla Bolotova氏とAnastasia Chevrenidi氏は、モスクワで働くトップマネージャー(経営トップ)とミドルマネージャー(中間管理職)の、

  • 時間的展望
  • 先延ばしのレベル
  • 生活目的指向

を比較したそうです(※この研究に用いたテストやスケールの詳細は一番下に記載)。 研究の参加者は120人。 トップマネージャーグループには38〜55歳の男性30人と女性28人が、ミドルマネージャーのグループには31〜52歳の男性27人と女性35人が含まれています。研究の結果、次のような差が確認できたとのこと。

「時間的展望」テスト

  • トップマネージャーは常に、将来の展望と、前向きな過去に重点を置いている
  • ミドルマネージャーは、たびたび現在の快楽に焦点を合わせ、運命任せにしている

「先延ばしのレベル」テスト

  • トップマネージャーの先延ばしレベルは低い(53.45)
  • ミドルマネージャーの先延ばしレベルは高い(57.2)

「生活目的指向」テスト

最も有意な違いが見られたのは以下の尺度。

  • トップマネージャーの人生目標は高い(35.28)
  • ミドルマネージャーの人生目標は低い(29.90)
  • トップマネージャーの人生プロセスは高い(34.38)
  • ミドルマネージャーの人生プロセスは低い(27.70)
  • トップマネージャーの人生パフォーマンスは高い(28.38)
  • ミドルマネージャーの人生パフォーマンスは低い(24.10)

これらの結果は、「計画的にキャリアを構築する可能性」の違いを示しており、その可能性が「キャリアの基礎」となる、とのこと。

運命に頼っていると成功しにくい02

先延ばしグセは、時間への意識に関係?

前項で紹介した、3つのテストが示した内容はこうです。

――ミドルマネージャー(中間管理職)グループは過去の記憶に満ちており、将来に十分な注意を払っていない。なおかつ現在については、宿命論的な見方をしがちである。過去と現在を重視し将来に目を向けていないため、物事を先延ばしにする傾向が強い。

一方で、トップマネージャー(経営トップ)グループはキャリアを構築する際、前向きな経験も踏まえて、しっかりと目標を設定し、自己統制しながら仕事を進めることができる。だからこそ、先延ばしレベルが低い――

そこで研究者らは、「先延ばしのレベル」と「時間的展望」のあいだの相関関係に気づいたそうです。能力・キャリア・リーダー開発のエキスパートである藤田聰氏によれば、「時間的展望」とは、“過去が現在につながり、現在が未来につながっているという意識”、とのこと。先のテスト結果から、ミドルマネージャーグループは、現在が未来につながっているという意識が薄いとわかります。

ところが、思考の特徴を逆手に取り、思考タイプによってアプローチを変えてみることで、目標達成しにくい・成果を上げにくい・成功しにくいといった現状を変えられる可能性があるのです。

運命に頼っていると成功しにくい03

「未来指向型」と「現在指向型」それぞれのアプローチ

藤田聰氏によれば、時間的展望には以下のような個人差があるとのこと。

  • 「未来指向型」:現在よりも未来を重視。未来・改革・創造といった言葉が好き
  • 「現在指向型」:未来よりも現在を重視、現在・改善・安定といった言葉が好き

HSE大学が行った比較調査を端的に当てはめると、トップマネージャーグループは「未来指向型」で、ミドルマネージャーグループは「現在指向型」ということになり、「未来指向型」のほうが出世できるという解釈に収まってしまいます。

しかし、それぞれの特徴を見て、自分はどちらにも当てはまる部分があるかも、と感じる人もいるでしょう。それに藤田氏は、“タイプに適合するアプローチをしていけばいい”とアドバイスしています。 たとえば、こうです。

  • 「未来指向型」は、自分のありたい姿を思い描き、夢や目標を設定する。
  • 「現在指向型」は、今の自分を充実させて延長し、自分のありたい姿につなげる。

どちらのタイプにも当てはまる部分があると感じたならば、目標を設定しつつ、今の自分を拡張していけばいいわけです。

運命に頼っていると成功しにくい04

成功を妨げる“もの”とは?

藤田氏によれば、それぞれの思考傾向が過度になってしまった場合、「未来指向型」は将来に目が行きすぎて、今しかできないこと・今だからこそできることを見失う可能性があり、「現在指向型」は今だけを大切にしすぎて、刹那的な生き方になってしまうとのこと。

どちらのタイプでもいいし、両方に当てはまってもいいけれど、あまりにも極端に「未来指向型」あるいは「現在指向型」に偏るのは、問題ありということです。

また、前出の研究結果でも、藤田氏のアドバイスにも、「運命に頼る」いわゆる「運命のせいにして何もアクションを起こさない」ということに対してのアドバイスはありません。

したがって、これまでのことを踏まえると、成功を妨げる“もの”はこの2つになります。

  • 大きく偏った「時間的展望」
  • 頻繁な「宿命論(運命論)」

***
近年示されたエビデンスと、専門家のアドバイスから、成功を妨げる要因を導き出しました。程よく偏らず、ときには意識的に、過去・現在・未来に目を向けましょう!

※HSE大学の研究では、心理学者のP. Zimbardo氏とJ. Boyd氏によって開発された目録が「時間的展望」テストに、C. Lay氏によって開発され、O. Vindeker氏とM. Ostanina氏によって適合されたスケール(General Procrastination Scale)が「先延ばしのレベル」テストに、J. Crumbaugh氏とL. Maholick氏によって開発され、D. Leontiev氏によって適合されたテスト(The Purpose-in-Life Test:PLT)が「生活目的指向」テストに用いられました。

(参考)
Higher School of Economics National Research University| IQ |News| Procrastination at the Top Level
Alla Bolotova,Anastasia Chevrenidi(2018), “Взаимосвязь временных перспектив и прокрастинации у сотрудников разного должностного статуса”, Psychology. Journal of the Higher School of Economics., Vol.15, No.3, pp. 573-589.
All About|ゴールを描いて目指す、だけがキャリアプランではない
Wikipedia|宿命論

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