「目標を立てても、いつも達成できない」
このようなお悩みを持つ学生やビジネスパーソンに試してもらいたいのが「あいまいな目標」を立てることです。
一般的には、「目標を達成するためには、具体的なゴールを決め、スケジュールを立て、それを守って行動するべきだ」といったことが述べられていますよね。
しかしじつは、幅をもたせたあいまいな目標を立てることで、達成率が上がるという研究結果があるのです。
目標を達成できないのはなぜ?
「毎日必ず1時間勉強する」
「1ヶ月で3キロ痩せる」
「毎日5時半に起きる」
このように目標を立てたものの、気づけば三日坊主で終わっていた……なんて経験はないでしょうか。
「絶対にやるぞ」と意気込んでいても、しばらくするとモチベーションが下がってしまうのはよくあることですよね。私たちは、なぜ目標を達成できないのでしょう。
一般社団法人行動科学マネジメント研究所コンサルタントで、『どうして? 自分に聞く力で問題解決!』(クロスメディア・パブリッシング)などを著書に持つ冨山真由氏によると、目標を達成するためには、まず実現可能な数字を定める必要があるのだそう。
たとえば、「毎日5時半に起きる」ことが目標であるとしましょう。いきなり5時半に起きるのは、初日はまだしも、継続するのはなかなか難しいのではないでしょうか。その場合、「最初の1週間は7時に起きる」「次の1週間は6時に起きる」「3週目から5時半に起きる」など、実現できそうな数値目標を立てるのがよいのだそう。
たしかに、今までできていなかったことを突然行動に移していくわけですから、継続が難しいのは当然のこと。少しずつでも目標に近づくには、実現可能な行動目標を設定する必要があるのです。
また、冨山氏は、私たちの認知の歪みも目標を妨げる原因になると言います。たとえば「毎朝ジョギングをする」と決めた人が、3日目にサボってしまったとしましょう。「やっぱり私には無理だった」「自分は本当に意思が弱い」「ジョギングなんてする必要ないかも」など投げやりになってしまうことがあるかもしれません。
しかし、冨山氏によれば、これこそが認知の歪み。そもそも、ハードルの高い目標を達成するのに「意思」や「根性」は関係ないのだとか。目標を達成できずに挫折してしまったときは、意思の低さを気に病むのではなく、行動に焦点を当てるべきなのです。
たとえば、最初に決めた目標が難しい場合は、「ランニングではなく、ウォーキングにする」「毎日ではなく3日に1回からはじめてみる」など、ハードルの低い行動目標に変更してもよいでしょう。
「あいまい目標」とは
「漠然とした目標のほうが達成しやすい」という研究結果を、アメリカのユタ大学が発表しています。研究で行なった3種類の実験のうちのひとつである、ダイエットに関する実験をご紹介しましょう。
グループ1:健康診断の結果を、具体的な数値で伝えます。
(例)「あなたは体脂肪20%です」
グループ2:健康診断の結果を、上下3%程度の幅をもたせて伝えます。
(例)「あなたは体脂肪18~22%の間です」
3週間後に、具体的な数値を伝えたグループ1と、曖昧な数値を伝えたグループ2で、どちらのほうがダイエットに対するモチベーションが上がったかを調査しました。
結果、曖昧に伝えたグループ2のほうがダイエットに対するモチベーションが上がり、体脂肪が減ったのだとか。
長期的なゴールに向かっていく場合は、目標があいまいであるほうが、モチベーションが上がりやすいということが判明しました。
たとえば、「体脂肪率を5%落とす」と決めていたとすると、達成できなかった際に自分に落胆してしまいますが、「3〜5%の間でOK」と決めれば、4%落ちたときに「けっこうがんばったな、これからもがんばろう」とポジティブにとらえることができますよね。
また、「毎日単語を30個覚える」という目標を立てた場合、達成できなかった日は「自分はなんてダメなんだ」と落ち込み、次の日からやる気がなくなってしまうかもしれません。しかし、「毎日単語を5〜30個覚える」というあいまいな目標を設定していた場合は、「今日は5個しかできなかったけれど、明日は頑張ろう」という具合にモチベーションを落とさずにマイペースで進められます。
勉強やダイエットなど、数日間ですぐに結果が出ないものに関しては、無理をせずに継続することが重要なのですね。
実際に目標を立ててみた
筆者が実際に「あいまい目標」を3つ立ててみました。
上記を1週間の目標として実践した結果、3つの目標をあいまいに設定しておくことで、あきらめずに全て継続することができました。
やはり、最低ラインのハードルを低くしておいたのがよかったと感じます。たとえば、忙しかったり、モチベーションが上がらなかったりしたときでも、本を3ページ読み、瞑想を3分行なうことは可能でしょう。ランニングについては2日に1回で良いので、雨が降ったり、今日はどうしても気分が乗らなかったりする場合は、「明日やればいいか」と考えられるので重荷になりません。最低限やるべきことを途切れさせずに継続し、「昨日よりも1歩だけでも前に進んでいる」と思えることが、モチベーションにつながったのだと思います。
また、何もしていない状態から何かを始めることはエネルギーを使いますが、継続することはそれほど大変ではないので、たとえば3ページだけ読むと決めて本を読み始めたものの、結果的にのめり込んで数十ページ読んでいたこともありました。行動を起こすハードルが低いので、エンジンがかかりやすかったように感じます。
***
目標をいつも達成できずに悩んでいる人は、自分に課しているゴールが高すぎて、あまりの遠さにあきらめてしまっているのかもしれません。重要なのは、やり始めることと、継続すること。ぜひ、「あいまい目標」を試してみてくださいね。
(参考)
Research Gate|In Praise of Vagueness: Malleability of Vague Information as a Performance Booster
Mentalist DaiGo Official Blog|三日坊主を防ぐ「曖昧目標」のススメ
東洋経済オンライン|あなたが目標を達成できない根本的な理由
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。