会社に勤めるビジネスパーソンにとって、「評価面談」は避けて通ることのできないイベントです。ただ、いつも目標を達成できるような優秀な人は別として、「評価面談が大好き」という人は多くないでしょう。
とはいえ、避けて通れないのであれば、評価面談もできるだけ自分にとって有意義なものにしたいところです。そうするために、人事評価コンサルタントの岡田洋介さんは、評価面談における「上司に寄り添う姿勢」の重要性を強く説きます。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人
【プロフィール】
岡田洋介(おかだ・ようすけ)
1974年2月21日生まれ、埼玉県出身。株式会社アクティベーションコンサルティング代表取締役。人事評価コンサルタント、経営人事コンサルタント、組織開発コーチ。早稲田大学商学部卒業後、日本ブレーンセンター(現エン・ジャパン)に入社。約100名の組織が1500名規模の一部上場企業に急成長するまで、さまざまなあつれきやトラブルを組織内部にて経験しながら、20年にわたりその成長を支える。在籍時は、経営人事のトップコンサルタントとして、管理職教育を含む研修実績は延べ400開催以上、人事評価に関しては延べ100社以上の指導を行なう。2018年に独立。1万枚以上の評価シートを実際に指導するなかで、評価されている社員がやっていることを整理。さらに現在は、日本では200名しかいない組織開発コーチングの有資格者(ORSCC)としての活動も行ない、「心理的安全性」「共感的な対話」「自分と向き合う勇気」をテーマにした研修やセッションも数多く開催している。
【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
上司目線から、自分に与えられた目標を深く理解する
組織において自分の評価を高めるには、その前段階にある上司との「目標設定」の場も重要なものです。そして、目標設定の際には、「上司に寄り添う姿勢」が鍵になると私は考えています。
部下の立場からすると自分の目標ばかりに目が向かいがちですが、もちろん上司にも会社の上層部から降りてくる目標があります。その目標を達成するために、「あなたにはこの役割を果たしてほしい」という期待が部下の目標になるのです。
しかし、チームを任されている上司といえども優秀な人ばかりではありません。人事評価コンサルタントとして数多くの企業の組織開発に携わるなかで、たとえば営業成績の数字だけを示すような、部下に期待する役割をきちんと説明していないケースがよく見られるのです。
ここで、上司に寄り添う姿勢が効いてきます。上司に寄り添って上司が会社から期待されている目標を理解します。そのうえで、「その目標達成のために私にできる役割はなんですか?」と問いかけをしてみましょう。
そうすることで、上司としては「自分のために頑張ろうとしてくれている」と思って嬉しく感じますし、部下に期待する目標や役割について具体的に説明してくれるはずです。「なんのためになにをしなければならないのか」という目標の理解が深まるため、その達成の可能性、そして評価される可能性も高まるのです。
しかも、期待される目標や役割をきちんと理解できると、逆提案できるメリットも発生します。上司に対して、「その目標達成のためには指示していただいた方法もいいですが、こういうアプローチはどうでしょう?」という具合に、自分にやりやすいかたちで仕事を進められるようになるのです。もちろん、自分にやりやすいかたちですから評価につながる可能性も高まります。
意識次第で、評価面談を成長につなげられる
また、上司に寄り添う姿勢は、目標設定のほかに「評価面談」の場でも重要なポイントです。目標設定の際と同じように、上司目線を意識するのです。
みなさんは評価面談が好きですか? おそらくほとんどの人が「苦手」「嫌い」と思ったことでしょう。でも、それはみなさんだけではありません。ほとんどの上司が評価面談を嫌がっています。
全員が全員、目標をきっちり達成してくれる部下ばかりではありません。時には、部下の仕事ぶりを改善させるために厳しいことを伝える必要もあります。「こんなことは言いたくない」という気持ちを抱きながらも、上司としての職務を果たすために仕方なく嫌いな評価面談に臨むわけです。
私が残念だと感じているのが、上司がやる行動はすべて当たり前だと思っている部下が多すぎること。上司が部下の育成をやるのは当たり前、部下のモチベーションを上げて意欲形成をするのも当たり前、問題にぶつかった部下をサポートするのも当たり前……というふうに思っているのです。でも、上司はスーパーマンでもなんでもなくひとりの人間です。苦手なことややりたくないこと、役割として無理をしてやっていることだってあります。
そう考えると、上司に寄り添う姿勢が評価面談でも有効だとわかります。上司が部下に苦言を呈するのも、「部下に成長してほしい」という思いがあるからこそです。テレビドラマなどに登場するような、「部下に嫌がらせをしてやろう」などと考えている上司などほとんどいません。
ですから、上司に寄り添い、「感謝」の気持ちをもって評価面談に臨みましょう。感謝の気持ちは言葉だけでなく、表情や態度にも表れます。たとえ高い評価を得られずなんらかの課題を指摘される面談であっても、それを上司と衝突する場にするのか、それとも自らの成長につながる場にするのかは、部下の意識次第です。
目標を達成できそうもない場合は、まず相談する
上司に寄り添う姿勢は、営業成績の数字だけの目標を示されるような定量評価の会社に勤めている人にとっても、自分の評価を高めることにつながります。
重要なのは、「タイミング」です。目標の数字に到達できそうもない場合、あなたが上司だったら部下にどうしてほしいでしょう?
もし期中に部下からなんの相談もされなかった場合、「順調なのかな?」と考えるはずです。ふたを開けてみたら目標に遠く及ばなかった場合、「途中で相談してほしかった」と思いませんか?
上司に寄り添う姿勢があれば、こうはなりません。部下の目標達成は上司やチームの目標達成に直結するのですから、「このままでは上司の評価も下がってしまう」「上司のためにもなんとかしよう」と考え、上司に現在の状況を報告したりぶつかっている課題について相談したりします。
相談されて嬉しくない上司はいません。しかも、そうして相談さえしてくれれば、上司なりに打ち手を考えて部下にアドバイスもできるでしょう。結果的に、部下は自らの目標達成に近づくことができるのです。
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