大学生もビジネスパーソンも読書離れが深刻化しています。全国大学生協連によると、“1日の読書時間が0分” という大学生は53%と半数を超えているそう。そしてマイナビ調べの「社会人の読書量」によると、“1か月に読む本は0冊” というビジネスパーソンが約4割を占めるそうです。
仕事や勉強で忙しいから仕方ないのかと思いきや、スマートフォンを使う時間は1日平均3時間越えで、主にゲームやSNSに時間を費やしています。スマートフォンにも良いところはありますが、読書にしかないメリットにも目を向けてみませんか?
1日1時間スマートフォンを本に持ち替えるべき、読書で得られるメリットを3つご説明しましょう。
【読書のメリット1】創造力が養われる
東京大学大学院の酒井邦嘉氏によると、読書をしているときの脳は、ほかの活動をしているときとは違う特徴があるのだそう。
たとえば「雪国の景色」をテレビで見た場合、次々と変わる映像を追うように見て、情報の意味を理解することで終わってしまいます。一方、本で「トンネルを抜けると雪国であった」という一節を読んだ場合は、自分で景色を思い浮かべ、そこにいる主人公の人物像や心情を想像し、ひとつのイメージを膨らませるといった活動が脳の中で広がるのです。
読書による、こうした脳のサイクルが創造力を養うと酒井氏は述べます。
視覚的に映像を頭の中に想起するとか、過去の自分の体験と照らし合わせて対比して考えるとか、自分で得られた情報から更に自分で自分の考えを構築するというプロセスがはいってくるので、人間の持っている創造的な能力がフルにいかされることになります。
(引用元:NHK クローズアップ現代+|広がる“読書ゼロ” ~日本人に何が~)
創造力が役立つのは、ゼロから何かを生み出すときだけではありません。何か決断を求められたときに客観的な分析ができる、幅広い視野を持って最善の答えが出せるといったときにも役立ちます。与えられた情報を鵜呑みにする、言われたとおりにしか動けないといった受け身な自分を変えられるのです。
【読書のメリット2】追体験を通して精神的な成長が得られる
明治大学教授の齋藤孝氏は、読書を通して「過去の偉人の人格に触れること」や「古典的な名作に触れて疑似体験をすること」が良い追体験になると述べます。
SNSを断ち、1時間でいいので別の世界に沈潜してみる。古典や文学作品に当てる。すると、それまで知らなかった世界を知ることになります。
(引用元:東洋経済オンライン |「本から学ばない人」と「読書家」の致命的な差)
ロンドンオリンピックのミドル級で金メダルを獲得したボクシングの村田諒太選手は、ナチスの強制収容所経験に基づいた本『夜と霧』を読んで心を打たれた経験が、心身を強くしたのだそうです。
自分の生きる時代では経験できないこと、会うことができない過去の偉人に近づくことができるのが読書の魅力です。自分の人生に、読書によって培われた追体験をプラスすれば、本を読まない人以上の精神的な成長が得られます。名作と言われる文学作品や古典は情景描写がリアルなので、特にこうした追体験が期待できますよ。
精神的に成長し人格を陶冶するためには、経験を積むことが不可欠です。
とはいえ、1人の人間が実際に体験できることは限られています。そこで有効なのが本であり、読書です。読書によって自分が実際に体験していないことも、ある程度追体験することができるのです。
(引用元:同上)
【読書のメリット3】ストレスを軽減できる
イギリスのサセックス大学の研究によると、6分間の読書は現代人のストレスの68%を軽減させる効果があるのだそうです。読書でストレスを解消するには、静かな場所で本を読むのが良いとのこと。
この結果を踏まえ、メンタリストのDaiGo氏は、純文学を1日30分以上ゆっくりと読むスローリーディングを勧めています。1日最低30分としているので、もちろん40分、1時間と読書時間を増やしても構わないそうです。
厳密に言えば最低30分ですから、それより長く読んでもかまいません。40分でも1時間でも、読める人は長くてもいいのです。ただ、その間はスマホやパソコンなどに触らない。最低でも1日30分間、ゆっくり読書に集中する時間をつくりましょう。
(引用元:レタスクラブニュース|1日30分の読書でストレス軽減!? メンタリストDaiGoが教えるメンタル強化術)
読書には速読という方法もありますが、ストレス解消の効果が高まるのはスローリーディングとのこと。純文学を読むと登場人物に感情できるため、共感能力やコミュニケーション能力を鍛えることにもつながります。逆に、ニュース記事のようなものは、ストレス解消に向きません。
登場人物に感情移入して読むことで共感能力が高まり、現実でも相手の気持ちや言っていることが、よくわかるようになります。つまり、コミュニケーション能力が高まるのです。ストレスのほとんどは人間関係に原因がある、と言っても過言ではありませんから、コミュニケーション能力の向上はストレスの軽減につながります。
(引用元:同上)
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もともと読書習慣がない人は、1時間本を読むのが難しく感じられるかもしれません。そういった場合は、1日30分から始めて、徐々に時間を増やしていくと良いでしょう一度に時間を確保するのではなく、通勤時間やスキマ時間などで小分けすると手軽に読書が始められます。本を読む楽しさに目覚めると、1時間があっという間に過ぎるようになりますよ。
また、「この本を今月中に読む」といったように目標を持つのもひとつの手です。ちなみに、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は、1週間に約1冊のペースで本を読んでいました。
ゲイツ氏だけでなく、偉大な成功者の中には読書家が数多く存在します。スマートフォンを持つ時間を減らして、ぜひ読書のメリットを得てくださいね。
(参考)
日本経済新聞|大学生「読書時間ゼロ」半数超 実態調査で初
マイナビフレッシャーズ|意外と少ない社会人の読書量、最多は約4割の0冊「忙しい」「ネットで十分」
NHK クローズアップ現代+|広がる“読書ゼロ” ~日本人に何が~
東洋経済オンライン |「本から学ばない人」と「読書家」の致命的な差
産経ニュース|たった6分間で脳のストレスの約7割を解消!
レタスクラブニュース|1日30分の読書でストレス軽減!? メンタリストDaiGoが教えるメンタル強化術
BUSINESS INSIDER JAPAN|著名な成功者8人が強調する「読書のパワー」
【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。