「怒り」に振り回されるのはもうやめよう。アンガーログをつけるだけで負の感情から解放される

怒る人に振り回されない02

「ちょっとしたことでイライラしてしまう」
「上司がすぐ怒るので、精神的につらい」
「怒られないか心配で、いつもビクビクしている」
怒りっぽい自分自身や、周囲の人間の怒りに振り回されていませんか? 

「怒り」という負の感情から解放されれば、私たちの生活は、よりポジティブで楽しいはず。それなのに、ちょっとしたことでイライラしてしまったり、怒っている他人に振り回されたりするのはなぜなのでしょう。

怒りの感情は、一見コントロール不可能に思えますが、じつは、私たちは怒ることを選択しているのです。今回は「怒る自分」「怒る他人」に振り回されなくなる方法をご紹介します。

「怒る他人」に振り回されないためには

理不尽なことですぐに怒る上司や、何かと文句ばかり言う家族……。「怒る人」が周りにいると、精神的な負担が大きいですよね。自分以外の人間が怒ることによって、気分を害してしまい、仕事や勉強のパフォーマンスが下がるのはもったいないこと。「怒る人」に振り回されないためには、どうしたら良いのでしょう?

まずは、なぜ「怒る人」に振り回されてしまうのかを考えてみましょう。たとえば、家族があなたの就職先について「あなたならもっと良い会社に入るかと思った。失望した!」と文句を言ったとします。たとえそれがあなた自身の行きたかった会社だったとしても、親が認めず不満を露わにした場合、思わず悲しい気持ちになったり、「親の満足するような会社に就職しなければ」と就職先を変更したりしてしまうかもしれませんね。

自分の本当にやりたいことよりも、他者が求めていることに応えようとするのには、「承認欲求」が関係しています。承認欲求は、人から好かれたい、人に認められたい、という気持ちで、誰しもが持つもの。しかし、それによって「怒る人」の言いなりになることは、良い人生とはとうてい言えないでしょう。怒る人に振り回されないためには、「怒る人の期待に応えない」ことが重要です。

著書『嫌われる勇気』で注目を浴びた「アドラー心理学」を提唱したアルフレッド・アドラーは、承認欲求に否定的です。承認欲求は誰しもが持つものですが、それが強すぎる人は、周りにどう思われているかを気にしすぎてしまいます。たしかに他人から嫌われるのはつらいことですが、誰かの期待に応えるために生きるのは非常に不自由なことです。

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怒る他人に振り回されないために、課題を分離する

では、どうすれば自分の気持ちを大切にして生きることができるのでしょうか。

アドラーの教えによると、自分を見失わないためには「課題の分離」が必要なのだとか。たとえば、上司の機嫌が悪く、理不尽なことで怒ってきた場合、それは上司が抱えている「自分の気分をコントロールできない」という課題であり、あなたの課題ではありません。

もしも、あなたが仕事のミスをしたことに対して怒っているのならば「ミスをしてしまった」というあなたの課題に向き合い、今後の改善策を考えればよいのです。

それについて上司が必要以上に責め立てたり、あなたの人格を否定したりするのであれば、それは上司の課題になります。人は、正義感から人に怒るとき、脳内にドーパミンという快楽物質が放出され、快感を覚えます。間違ったことをした相手を必要以上に攻撃する人は、怒る行為自体が快感になっている可能性があるのです。

自分の「次からはミスをしないよう対策をとる」という課題と、上司の「人を攻撃することの中毒になっている」という課題を切り離しましょう。それでも上司の期待に応えたいし、気に入られなければ自分の仕事が危うい、と思うかもしれませんが、アドラー心理学の考え方によると、それこそが他者の人生を生きることになってしまいます。

上司に好かれることは、自分の課題ではありません。それは上司次第であり、私たちのコントロールできる範囲ではないのです。たとえ嫌われていたとして、給料がもらえないわけではないでしょうし、その上司のもとで昇進できないのであれば、別のチームに移れるよう工夫したり、周りが無視できないくらいの結果を残すべく仕事に集中したり、転職できるように新しい知識をつけたり……と、自分の課題に向き合えば、選択肢はいくらでもあります。

相手が怒っているとき「これは私の課題ではなく相手の課題だ」と認識することがポイントです。「他者の課題には介入せず、自分の課題には誰ひとりとして介入させない」ということが、アドラーの教え。これこそが、相手の怒りに振り回されず、自分のやるべきことに集中できるようになるための心持ちになるのではないでしょうか。

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「自分の怒り」をコントロールするには

では、自身の怒りをコントロールするにはどうすればよいのでしょう。

つい、かっとなってしまったり、怒りで冷静な判断ができなくなったりしてしまうのは、ビジネスパーソンとして致命的です。怒りをコントロールできずに悩んでいる人は、ぜひ以下の方法を試してみてください。

セロトニン不足を補う

怒りやすくなる原因のひとつに、セロトニンという前頭前野の機能をスムーズに動かすための神経伝達物質の欠乏が考えられます。東邦大学名誉教授の有田秀穂氏によると、現代はセロトニン不足によって、怒りやすい人が多くなっているそう。

セロトニンを分泌させるセロトニン神経は、疲労・ストレス・夜型生活・運動不足・人とのコミュニケーション不足などによって、その働きが弱まってしまうのだとか。

有田氏いわく、パソコンやスマートフォンが普及したことにより、現代人はセロトニン神経が弱りやすいそう。朝早くから夜遅くまでパソコンの前に座り、ほとんど動かず、会話もオンラインのコミュニケーションツールを使い、疲労とストレスがたまり続ける……。このような生活は、セロトニン不足を招き、怒りっぽい人を作り上げてしまうのです。

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セロトニン不足を補うには

では、どうすればセロトニンを増やせるのでしょう。

精神科医の和田秀樹氏は自身の著書『「もう怒らない」ための本』の中で、脳内にセロトニン物質を増やす方法を紹介しています。

以下を参考にしてみてください。

  • ジョギングやウォーキングなどのリズミカルな運動
  • お日様に当たる
  • ヨガや気功
  • お経をあげる
  • ガムをかむ
  • マッサージをしてもらう

仕事が忙しい人は少しだけ早起きをして、会社まで一駅だけ歩いてみてはいかがでしょう。仕事帰りにヨガ教室に通うのもいいかもしれません。ぜひ、取り入れられそうなものを探してみてくださいね。

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「アンガーログ」をつける

日本アンガーマネジメント協会が推奨する方法「アンガーログ」をご紹介します。

アンガーマネジメントは、1970年代にアメリカで生まれたとされており、怒りの感情と上手に付き合うための心理教育、心理トレーニングです。日本でもアンガーマネジメントは冷静な判断のできるビジネスパーソンを目指すうえでは欠かせないスキルとして、セミナーを実施する企業も増えています。

アンガーマネジメントの方法のひとつに「アンガーログ」をつけることが挙げられます。人が怒る理由はそれぞれ違い、同じ状況でも、怒る人と怒らない人がいますよね。アンガーログは、自分自身が、どのようなときに怒りを感じるかを把握しておくことが目的としたもの。方法は以下の通りです。

イライラしたり怒りを感じたとき、その場で手帳やスマホに記録します。

日時・場所・出来事・思ったこと・怒りの強さ(10段階)を記入しましょう。

(例)

  • 日時:2/15(月)11時頃
  • 場所:会社
  • 出来事:会議にAさんが10分遅刻してきた。
  • 思ったこと:こちらも忙しいなか時間を割いているのに失礼だ。遅れそうなら前もって知らせるべき
  • 怒りの強さ:4

出来事が起こってすぐに書くことがポイントです。

アンガーログを続けることのメリットは、自分が何に腹を立てやすいのか、怒りの傾向がわかること。傾向がわかれば、対策が立てられ、不要な怒りを感じることを減らしていけるでしょう。

たとえば、自分が「待たされることに強い怒りを感じる」とわかれば、それを避ける方法を考えればいいですね。待ち合わせの相手に「遅れそうなら事前に連絡ください」と伝えたり、相手がもし遅刻してしまった場合の待ち時間の過ごし方を決めておいたりするなどの対策が考えられます。

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「アンガーログ」をつけてみた

筆者が実際にアンガーログを試してみました。

怒りをコントロールする01

実際にやってみて感じたのは、怒りを感じたときに言語化して書き出すことで、ある程度気持ちが収まることでした。イライラしていても、いったんノートに書くことで、客観視することができ、「きっとこんなことよくあることだ」「それほど腹を立てることでもない」と思えました。

「比較的、午前中のほうがイライラすることが多い」という自分自身の怒りのパターンも判明しました。おそらく、午前中のほうが仕事に集中できるので、あまり気分を阻害されたくないのだと思います。

外出先で、マナーの悪い人に出会うことなどは対策が難しいので、イヤホンでヒーリングミュージックを聴くなど、心穏やかに過ごせる工夫をしたいと思います。また、家族や友人については、コミュニケーションを深めることによって改善していく予定です。

今までは、怒りを抱えたまま時間とともに消えてくれるのを待っていましたが、今回アンガーログをつけてみて、怒りをなくすための対策ができることがわかりました。今後も続けていきたいと思います。

***
「怒りをコントロールできない他人」や「つい、イライラしてしまう自分」など、怒りという負の感情に振り回されていては、冷静な判断をしたり、大切なことに集中する妨げになってしまうでしょう。ぜひ、上手に付き合う方法を実践してみてください。

(参考)
岸見一郎(2013), 『嫌われる勇気―自己啓発の源流「アドラー」の教え』, ダイヤモンド社.
中野信子(2019), 『キレる!: 脳科学から見た「メカニズム」「対処法」「活用術」』, 小学館.
和田秀樹(2016), 『「もう怒らない」ための本』, アスコム.
President Online|キレる人は、なぜキレるのか? 脳科学から見る「3つの原因」
日本アンガーマネジメント協会|怒りの記録「アンガーログ」をつけよう

【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。

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