年700冊の書評家、大学教授、哲学者ら “賢人たち” が説く「ほとんど無意味」な読書法4つ

熱心に本を読んでいるがダメな読書法を実践しているので、まったく内容が頭に定着していない様子の人物

「どうも本で読んだ内容を覚えられない
「読書で得た情報を実際に活かせない

こうした状況が起こるのは、間違った本の読み方をしているせいかもしれません。いますぐやめたほうがいい4つの読書法を紹介しましょう。

【ダメな読書法1】内容を丸のみにする

19世紀に活躍したドイツの哲学者、アルトゥル・ショーペンハウエルは読書について、「他者の思考過程を反復的にたどるに過ぎない」と説いたそう。そして、イギリス・ルネサンス期の哲学者、フランシス・ベーコンは、「信じて丸のみするために読むな、熟考するために読みなさい」と説いたのだとか。

独立研究者・著作家・パブリックスピーカーの山口周氏はこの2例を挙げ、「書かれている内容をそのまま丸のみするような読書を繰り返していると、しなやかな知性で戦う能力の獲得が難しくなる」と意見を述べています。

『東大式節約勉強法 世帯年収300万円台で東大に合格できた理由』(扶桑社)の著者で現役東大生の布施川天馬氏も、「“著者の意見をうのみにする本の読み方” では知見が深まらない」と指摘します。

布施川氏によれば、本に挙げられた例は「著者の主張を前提に挙げられたもの」なので、該当する場面では活かせるものの、ほかの場面では応用しにくいとのこと。つまり、内容を丸のみするだけでは物事の一部分を知ったに過ぎず、実践に活かせるほど本質を理解できていないと言えるわけです。

そのため布施川氏は、読書の際に以下のアプローチを行なうようすすめています。

  • 著者の主張とは違う観点で考えてみる
  • 著者の主張に沿った具体例を探してみる
  • 著者の主張の例外を考えてみる

たとえば本のなかに、“脳を最も健康にする方法として「ウォーキング」が挙げられている” としましょう。上記のアプローチ順に考えた場合、次のとおりになります。

  1. 「ウォーキングが脳にいいなら、早足で買い物するのもいいのか?」
  2. 「よく散歩をする人で、頭の働きがいい友人は誰かいただろうか?」
  3. 「ウォーキングを日課にしていても『いいアイデアが出ない』と嘆く人がいるのはなぜか?」

このように、あらゆる場面を自分自身の頭で考え、検証することにより、主張の整合性を確認できるとともに、理解度も高まるとのこと。本は読むだけではなく、考えてこそ活きるのですね。

本を読んで考えをめぐらせている学生あるいはビジネスパーソン

【ダメな読書法2】つまらなくても読み通す

明治大学文学部教授で教育学者の齋藤孝氏は、一般的な実用書などの場合、無理に1冊を読み通そうとしなくていいと伝えています。必要な情報さえ引き出せばいいので、全体のうち2~3割でも読めば十分とのこと。

コラムニストで明治大学サービス創新研究所研究員の尾藤克之氏も、読書は本来 “楽しむもの” なので、つまらないなら途中で読むのをやめていいと述べます。つまらないと思いながら最後まで読むのは時間のムダとのこと。 この意見は科学的な観点からも説明できます。

脳神経外科医の林成之氏によれば、私たちが外部から得た情報は「A10神経群」と呼ばれる中枢を通って脳の前頭前野に入り、理解・判断されるのだそう。その「A10神経群」は入ってきた情報に感情のレッテルを貼るのですが、“好き・おもしろい” というレッテルが貼られた場合は脳のパフォーマンスが向上し、“嫌い・つまらない” というレッテルが貼られた場合は脳の働きが悪くなり、思考が深まらず、理解もできず、記憶も定着しにくくなるそうです。

「読んだほうがいい」という理由だけで、つまらないと思いながら読み通しても、不毛な時間を生むだけということ。

ちなみに尾藤氏によれば、ビジネス書や実用書の場合、著者が最も伝えたいことは早い段階で示されている傾向が強いので、第1章を読めば “おおむね” 内容がつかめるとのこと。そのため、第1章を読んだ時点で「つまらない・必要性がない」と感じたら、読まない判断を下してもいいそうです。

読んでいる本がつまらないと気づいた学生もしくはビジネスパーソン

【ダメな読書法3】“読書回路” だけで読む

活字中毒を自覚する読書家でも、読んだ内容を覚えられないケースがあります。筆者が出会ったなかにも、「本をたくさん読んでいるのに、読んだ内容が頭に残らないんです」と悩む人がいました。どうやらこれは、本をよく読む人にありがちな脳のクセのようです。

株式会社「脳の学校」代表で、医学博士の加藤俊徳氏によると、本を速く読める活字中毒の人は、すでに脳内でつくられた “読書回路” だけを使って本を読むので、脳がまんべんなく刺激されず、記憶に残りにくくなってしまうとのこと。

だからこそ加藤氏は、思考時間を延ばすことで脳に変化を与えるべく、スラスラと本を読めてしまう人にあえて「ゆっくり読み」をすすめています。そうすることで、インプットした情報を脳内に長く留めてグルグル回しながら、さまざまな脳領域を刺激できるとのこと。

よく本を読むわりには内容が頭に残らないと感じるときは、ぜひお試しくださいね。

本の山に埋もれる活字中毒者

【ダメな読書法4】動きのないマンネリ読書

加藤氏は、いつもと同じ場所にジッと座って静かに本を読みふける「静の読書」も残念な読書法だと述べます。せっかく本を読んでも、この方法では脳が鍛えられないとのこと。脳が鍛えられなければ、記憶力や応用力も停滞してしまいます。

もしも思い当たるなら、加藤氏が「動の読書」としてすすめるように、屋外などいつもと違う場所で本を読んだり、読書の時間帯を変えたり、読んだばかりの内容をどんどん人に教えたりしてみてはいかがでしょう。

『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)著者で、年700冊以上読む書評家・印南敦史氏が提唱する呼吸読書法もおすすめです。呼吸をするとき、息を吸い込んだら、そのまま吸い続けるのではなく、しっかりと吐いてから次の息を吸いますよね。これと同じように、本を読んだら、そのまま読み続けるのではなく、情報を書き出してからまた読む。こうすることで、とても楽に読めるようになるそうです。

脳の健康医療の観点からも、読書でインプットした情報を、自分が感じたことや考えたことと一緒に書き出せば、「記憶系・感情系・思考系・理解系・運動系」の脳番地(※同じような働きをする神経細胞の集まりが刺激される」と加藤氏が説明しています。読書はアクティブに楽しんでこそ効能があるわけです。

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ダメな読書法を4つ紹介しました。楽しい気持ちで読書しながら、日々に活かせるといいですね。

(参考)
プレジデントオンライン|「読んだ本は忘れない」そんな東大生が実践する"忘れない読書"の3要点
月刊 元気通信|その習慣、もしかしたら脳に悪いかも?!あなたの脳タイプをチェック!
東京大学法学部・大学院法学政治学研究科|コラム45:マイナスのレッテル貼りはやめよう
AERA dot.|せっかくの読書がムダに!? 「残念な読書」になっている3つのケース
ITmedia eBook USER|本は最後まで読まなくていい? 読書初心者向けの読書法
ダイヤモンド・オンライン|勉強しているつもりが実は「バカ」になってしまう間違った読書法とは?
ダイヤモンド・オンライン|なかなか本が読めない真の理由
東洋経済オンライン|本を読んでも理解できない人の典型的パターン
脳の学校|第212号 脳を育てる読書のコツ

【ライタープロフィール】
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