"やる気スイッチ"は楽観にあり! 先延ばし脱出マニュアル

悪い出来事を「外的」「一時」「特異」でとらえてみたもの。

「やらなければ」と思いつつ、ついつい後回しにしてしまうことはありませんか? この「先延ばしグセ」、実は単なる悪習慣以上に深刻な問題かもしれません。最新の研究によると、この習慣は心身の健康に悪影響を及ぼす可能性があるのです。

しかし、希望はあります。心理学の新たな知見によれば、楽観性を身につけることで、この厄介な先延ばしグセを改善できる可能性があるのです。なぜ楽観性が効果的なのか、そしてどうすれば楽観性を手に入れられるのか。

本記事では、東京大学の最新研究を基に、先延ばしグセと楽観性の関係を解説します。さらに、心理学の専門家が提案する楽観性を養うための具体的な方法を、筆者自身の体験も交えてご紹介します。

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STUDY HACKER 編集部
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先延ばしグセに効く楽観性

筆者にも先延ばし経験はありますが、それを遥かに上回る知人がいます。

大切な書類が届いても、“いまは忙しいからあとでやる” と言って、いつもほかの書類と一緒に重ね置いてしまうのです。だいぶ経ってからどうしたか尋ねてみると、何も処理されていません。じつは一緒に重ねていた書類すべてが、先延ばしされていたものだったのです。

東京大学大学院総合文化研究科教授の開一夫氏ら研究グループは、この先ストレスは増えないと信じられる楽観的な人は、先延ばしグセが少ないことを発見したそうです。

つまり、この先ストレスが増え続けると思い込んでしまう人は、そうでない人に比べて、先延ばしリスクが高いということ。そう言えば、筆者の知人も将来に対して悲観的でした。

(参考元:東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部|【研究成果】楽観的になれば先延ばし癖は改善する!? ――新指標が明らかにする、「希望」の重要性――

将来に悲観的で、先延ばしグセが激しい人

誰だって、この先ずっとストレスが増え続けると思えば、やる気なんて出てきませんよね。しかし、ストレスは減っていくと思えたら、「よーし、どんどん課題を片づけていこう!」という気にもなるはず。

つまり、先延ばしを減らすには、これからよくなると信じられる楽観性が必要です。次項では、その楽観性を手に入れるための方法を紹介しましょう。

楽観性を手に入れる方法

心理学博士・臨床心理士・公認心理師の関屋裕希氏は、ポジティブ心理学の提唱者であるマーティン・セリグマン氏の研究を背景に、楽観的な人のとらえかたを身につけて、楽観性を手に入れるアプローチを紹介しています。まずは1がその内容。

2は楽観的なロールモデルを見つけて、その人になりきる方法です。順番に説明しましょう。

1. 楽観的にとらえる練習

楽観的な人はいいことがあると、その原因を「内的」「永続」「全体」でとらえるそうです。たとえば仕事で成果を上げた場合だと、以下のようになるそう(※青枠のなかは、関屋氏の例を参考に筆者が考えた)。

  • 自分が精いっぱい努力したからいい結果が出た(内的な要因だととらえる)
  • 努力を重ねているから、これからもいい結果を出せる(永続的なものだと考える)
  • この仕事以外の、あらゆることでも成果を出せるはず(全体でとらえる)

逆に、仕事で悪い結果が出た場合、楽観的な人はその原因を「外的」「一時」「特異」でとらえるのだとか。たとえばこんな感じです。

  • いまの自分に合わない仕事を与えられた(外的な要因だととらえる)
  • ただし、悪いのは “いま” だけで、これが続くわけではない(一時的だと考える)
  • これは特別なケースなので、ほかも同じように悪い結果が出るわけではない(特異な出来事だと考える)

また、関屋氏は、起こった出来事の原因を自分がどう考えているのか、以下のような図に示してみる(プロットしてみる)ようすすめています。

マーティン・セリグマン氏の研究を背景にした、起こった出来事のとらえ方を示した図

※上の図は、関屋氏が示している図を参考に、筆者が表現したもの

そして、「良い出来事であれば、少しでも左寄りに、悪い出来事であれば、少しでも右寄りに、そのプロットを動かすようなとらえ方ができないかトライしてみる」といいとのこと。

たまたま筆者は、“ずっと待ち続けている回答をなかなかもらえない。なにか自分に不手際があったのか、どうなのか” と考えている事案があったので、それを悪い出来事だとして――

以下のように、先ほどの図の右側寄りにして、「外的」「一時」「特異」でとらえるかたちで示してみました。

悪い出来事を「外的」「一時」「特異」でとらえてみたもの。

(参考およびカギカッコ内引用元、図の参考元:LIFE IS LONG JOURNAL|楽観性を手に入れる

些細なことながら少々気を揉んでいたせいでしょうか、これだけでも意外と効果を感じられました。ただし、明るく楽しく楽観的になれたといより、冷静になれたという印象です。ネガティブな考えが、ニュートラルに近づいてくれたのかもしれませんね。さらに続けていけば、もっと楽観的になれる可能性は大きいはずです。

2. 楽観的な人になりきる

また、関屋氏は「楽観的な人になりきってみる」方法もすすめています。友人・知人、有名人や、架空のキャラクターなど、誰でも楽観的かつ前向きな人をモデルにするといいそうです。

特に落ち込んでいるときは、こちらのほうがおすすめとのこと(参考およびカギカッコ内引用元:同上)。

そういえば以前、2013年日本公開のインド映画『きっと、うまくいく』を鑑賞した際、主人公の口癖(タイトル通り)をまねてみた時期があります。いきなり楽観的なれたわけではありませんが、落ち込む気持ちや、悲観する気持ちは、だいぶ遠ざけられた気がしますよ。

楽観的なロールモデルをまねているビジネスパーソン

先延ばしグセの怖い話

なお、この記事の冒頭で、“先延ばしばかりしていると、心身の健康に悪影響を及ぼす” と述べました。その詳細も補足しておきましょう。

スウェーデン・ソフィアヘメット大学の Fred Johansson 氏らは、大学生3,525人を対象に、先延ばしと、その9か月後の健康状態との関連を調べて分析したそうです。結果、以下との関連が判明したのだとか。

  • メンタルヘルスの悪化(うつ、不安、ストレス症状)
  • 肩や手に障害をきたすほどの痛みがある
  • 不健康な生活習慣(睡眠の質・身体活動の低下)
  • 心理社会的 健康要因レベルの悪化(孤独感・経済的困難の増加)

(参考元:JAMA Network|Associations Between Procrastination and Subsequent Health Outcomes Among University Students in Sweden

先延ばしグセは、物事が終わらない、片づかないだけの問題ではないのですね……。楽観性を手に入れる努力はしても、先延ばしグセそのものに対する “楽観視” は、決してしないほうがよさそうです。

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先延ばしを減らすたの方法をふたつ紹介しました。簡単なので、ぜひ一度お試しください!

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