「退屈」と向き合うと人生が好転する。あえて “何もしない時間” をつくるべき理由

退屈と向き合う01

やるべきことはたくさんあるのに、毎日がぱっとしないと感じていませんか? 

私たちは「退屈」を嫌い、せかせかと忙しく過ごして「充実しているふう」を演出しがち。しかし、ふとしたときに虚しさが湧いてきたり、「自分の人生は本当にこれでいいのだろうか?」という疑問が頭の片隅にへばりついていたりする方は多いのではないでしょうか。

これまでに1万人以上の人々の悩みを解決してきた実績をもつ行動心理コンサルタントの鶴田豊和氏は、著書『「つまらない」がなくなる本』のなかで、「つまらない」という感覚は私たちに大切なことを教えてくれる、ありがたいものだと語ります。退屈を嫌って忙しくしている人ほど、じつはつまらない人生を送っているのだとか。

今回は、なんとなく忙しく過ごしている人が、自分と向き合い、人生を好転させる方法をお伝えしていきます。「自分も当てはまるかもしれない」と心当たりのある人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

「退屈」の原因とは?

なぜ、私たちは「つまらない」と感じるのでしょう? 

経済学者のアリシア・チン氏や、カーネギーメロン大学の教授らによる研究チームが、3,867名の大人を対象に、「退屈」に関する共同研究を行ないました。被験者らは専用のスマートフォンアプリをわたされ、7〜10日間、30分ごとに行動(いつ、どこで、誰と、何をしているか)および、感情(退屈・怒り・満足感・自信・喜び・希望・安心感・疲れ・無関心・関心・イライラ・興奮・孤独・愛・圧倒される・悲しみ・不安)をメモするよう指示されました。

その結果、63%の被験者が、調査期間の7〜10日間のなかで最低でも1回は「退屈」を感じていたそう。また、退屈は、7番目に頻繁に見られる感情で、多くの場合ネガティブな感情(孤独・怒り・悲しみ・不安など)とセットで感じられていたのだとか。

残念ながら、特定のシチュエーションや行動、考え方などと、退屈を感じることとの因果関係は、調査からは見えてこなかったそう。とはいえ、退屈を感じる場面として最も多いのは「自分にとって重要ではなく、あまり意味がない」と感じていることに取り組んでいるときである、と研究者らは結論づけています。

退屈を感じる場面や理由は人それぞれ違っているものの、多くの場合は「自分にとって重要ではないこと」をしているときが「退屈」なようですね。

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「退屈」を無理やり解消するデメリット

『「つまらない」がなくなる本』の著者である鶴田氏は、退屈なときに無理やり暇つぶしをすると、金・健康・時間を失うなどのデメリットがあると語ります。

なんとなくつまらないから仕事帰りに飲みに行き、お金を使ったうえに健康に悪影響を与えたり、休日にやることがないから買い物に行き、浪費したうえに不要な物を買って部屋のスペースがなくなったり……退屈を嫌うあまり、私たちは手軽な方法で暇つぶしをしがちですよね。それが本当にやりたいことなのか、自分のためになっているのか、立ち止まって考えることはほとんどないはず。

鶴田氏によると、慢性的な退屈こそが私たちに大事なことを教えてくれるそう。「毎日つまらない」「退屈な人生だ」と感じている人は、本来の自分を生きていないのだ、と言います。逆に、意味のある人生を送っている人は、一時的に退屈になることはあっても、慢性的な退屈になることはないのだとか。

たとえば、事務的な書類作成は「つまらない」かもしれませんが、自分の目的や本当にやりたいことのためのひとつのステップであれば、「つまらない」という感情は一時的なものであり慢性的な退屈ではありません。

慢性的な退屈を感じている人は、次に紹介する退屈と向き合う方法を参考にしてみてください。

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「退屈」から逃げずに向き合う方法

現代は、退屈をしのぐものであふれています。スマートフォンがあれば、何時間でも動画を見たり、ゲームで遊んだり、漫画を読んだりすることが可能ですし、流れてくる広告は、次に遊びにいく場所や次に買うもの、旅行場所などを提案してくれますよね。 

暇つぶしに逃げるのではなく、本来の自分と向き合い、本当に充実感のある人生を送るためには、「つまらない」という感情と向き合うことがポイントとなります。

心の声を聞いていますか?

「毎日つまらないけれど、別にこれといってやりたいこともない」という人は、心の声が聞こえていないのかもしれません。「これをしたほうがいい」と頭で思うことと、「これがやりたい」という心の声があるとすると、前者に従うことのほうが多いのではないでしょうか。「心の声」とは、すなわち「信念」「自分の内なるモチベーション」「心の底からやりたいこと」のことです。

このことに関する研究があります。イエール大学とスワースモア大学の心理学者らが、アメリカの陸軍士官学校生徒たちを対象に実施したものです。入学の際、生徒らにアンケートに答えてもらい、学校に対する思いが「内なるモチベーション」(つまり本当にやりたいこと)なのか、「外的要因のほうが大きいのか」(親の期待に応える、まわりの目を気にして選択した、など)を調査しました。

その結果、内なるモチベーションが高い生徒のほうが、卒業できる確率が20%上がり、さらに、仕事を続ける可能性は10%、早期に昇格できる可能性は20%高かったのだとか。自分の心の声に従っている人のほうが、目標を達成する可能性が高いのです。

人、は「自分にとって重要ではないこと」をしているときに「退屈」だと感じる傾向にあります。「毎日つまらない」と感じるのであれば、自分の心の声を無視しているのかもしれません。

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心の声を聞く方法

鶴田豊和氏によると「何もしないこと」が、心の声を聞けるようになるコツなのだそう。

同氏がすすめる何もしない方法は、「何も考えずに、ただぼーっとする」「公園や自然のなかで立ち止まり、花や草木を眺め、自然を感じる」「瞑想する」など。頭を空っぽにする時間をつくることによって、思考のノイズがとれて、心の声が聞こえるようになり、本来の自分に合った選択ができ、本当にやりたいことが見えてくるのだとか。

「何も考えずに、ただぼーっとする」「公園や自然のなかで立ち止まり、花や草木を眺め、自然を感じる」「瞑想する」3つの方法に共通するのは、いまこの瞬間に意識を向けるマインドフルネスな状態を目指すということ。マインドフルネスとは、過去の後悔や未来の不安などを考えず、今この瞬間を大切にすることです。

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瞑想によって「いまこの瞬間」に意識を向ける

マインドフルネスな状態は、瞑想によってつくり出すことができます。瞑想にはさまざまな方法がありますが、初心者の場合は、何かを行ないながら瞑想状態に入るメソッドがおすすめ。心理学系オンラインメディア「Psychology Today」で紹介された精神科医マーリン・ウェイ氏のすすめる「ウォーキング瞑想」をご紹介します。

  1. まず、立った状態で腕をダラリと下げてリラックスしましょう。何度か深呼吸をし、体の力を抜きます。そして、足の裏から伝わる地面の感覚に意識を向けましょう
  2. 深呼吸から、自然な呼吸に戻します
  3. ゆっくり歩き始めましょう
  4. 足の裏の感覚に注意を向けます(前足のカカトが地面に着き、体重を前に移動する感覚、後ろ足を地面から離したとき、どんな感じがするか、など)
  5. 歩きながら、両足に体重が交互に移る感覚に意識を向けましょう
  6. 背中や腕、肩、胸、首など足以外の体の状態にも意識を向けながら歩きます

たとえば、会社の帰りにひと駅だけウォーキング瞑想を実践しながら歩いてみるのもよいでしょう。電車のなかでスマートフォンを操作するよりも、心身ともに健康的ですね。

鶴田氏によると、自分が本当にやりたいこと、もしくは、やりたくないことは、考えて答えが出るのではなく「気づく」のだそう。退屈を常に埋めて、頭のなかの雑音が多い状態だと、気づきづらいもの。だからこそ、瞑想をしたりぼーっとしたりするのです。

「ハードスケジュールで動いていたけれど、じつはけっこう疲れてるな」と気づいたら、会社に有給休暇を申し出てみたり、「本当はずっとギターを習ってみたかった!」と昔からやりたかったことを思い出したなら、教室に通ってみたりしてはどうでしょう。

一度しかない人生。暇つぶしに費やすのではなく、心からやりたいと思えることを実践していきたいですね。

***
「毎日、忙しいけれど、なんだか虚しい」「暇さえあればスマートフォンで時間を潰してしまう」「飲み会でストレスを発散する」など、一見充実しているようで、じつは充実していないビジネスパーソンは、ぜひ立ち止まって「退屈」と向き合ってみてください。自分が本当にやりたいこと(もしくはやりたくないこと)に気づいたり、本来の自分らしさを取り戻したりするきっかけとなるでしょう。

【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。

(参考)
鶴田豊和(2016),『「つまらない」がなくなる本』,フォレスト出版株式会社.
Psychology Today|Bored in the U.S.A.
American Psychological Association|Bored in the USA: Experience Sampling and Boredom in Everyday Life
American Association for the Advancement of Science|One type of motivation may be key to success
TOCANA|10分の瞑想と散歩をするだけで不安がなくなると判明! 医師が解説、6つのステップでできる「マインドフル・ウォーキング」とは?

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