「もう少し細かくスケジュール設定ができたらいいんだけど……」
「今年のイベントをひとめで確認できたらいいのに……」
日々のスケジュールやタスク管理に不可欠な「手帳」について、こうした悩みをもった経験のある人もきっと多いはず。
いま使っている手帳になんらかの物足りなさを感じている人は、「バレットジャーナル」と呼ばれる手帳術を試してみてはいかがでしょうか? 今回は、バレットジャーナルのつくり方を、筆者による実践談を交えながらご紹介しましょう。
箇条書きの要領で書く「バレットジャーナル」
バレットジャーナルは、アメリカのデジタル製品デザイナーであるライダー・キャロル氏が2013年に発表した手帳術。自分のことを主体的に整理できる最強のアナログメソッドとして、世界中で注目されているそうです。
バレットジャーナルでは、「コンテンツ」と「キー」というふたつの要素を組み合わせ、好きなノートやペンを用いて自分オリジナルの手帳を完成させます。
まず「コンテンツ」とは、バレットジャーナルにおける「見出し」のこと。大きく4つに分類できます。
- インデックス:どのページに何が書かれているかを確認するための目次を記入する
- フューチャーログ:半年〜1年間のおおまかな将来の予定を記入する
- マンスリーログ:1ヶ月分の予定を記入する。その月の予定だけでなく、前月にできなかったことなどもここに記入する
- デイリーログ:毎日の予定を記入する
これら4つを書く目的は、未来を可視化すること。この作業を通して、すぐにやらなくてはいけないタスクから、時間に余裕のあるタスクまでを整理、俯瞰できるようになります。
もうひとつの要素「キー」とは、タスクや予定の状態を表す記号のこと。自分がわかるような記号であれば、なんでもかまいません。文房具メーカーのコクヨ株式会社は、「・:タスク」「○:イベント」「*:重要」「!:アイデア」などを例に挙げています。わざわざ「これは重要!!」などと書かずにすむので、時間の短縮につながりますよ。
ちなみに、バレットジャーナルの「バレット」は英語で「弾丸」のこと。ここでは、箇条書きに用いる記号「・」を意味します。つまり箇条書きの要領で、スケジュール管理のみならずタスクやアイデアを整理できる方法がバレットジャーナルなのです。
バレットジャーナルって、面倒くさいの……?
「項目がいろいろあって、バレットジャーナルは少し面倒くさそうだ」と思った人もいるかもしれません。実際、キャロル氏の著書で紹介される原型的なバレットジャーナルをより単純化して使っている人がいる、と述べるのは日本手帖の会代表の折比嘉育郎氏。たとえば、デイリーログを中心に運用し、フューチャーログやマンスリーログを省略するといった使い方です。イベントやアイデアを書き込む作業や、日々やり残したことを翌日のスペースへ移す作業を面倒に感じ、省略する例があるようです。
しかし、一見すると面倒に思えるプロセスにも、それをすべき理由があります。
文具プランナーでウェブマガジン「毎日、文房具」の副編集長である福島槙子氏によると、手書きは脳の複数の領域を活性化させるそう。手を動かして書くという複雑な運動が、脳を刺激するからです。また、いつまでも残っているタスクを毎日手書きで移動させていれば、「このタスクが終わらないのには、何か解決すべき課題があるのではないか」と原因を考えるきっかけになるとも伝えています。
バレットジャーナルの作成に必要な作業をもし面倒に感じたら、上記のメリットについて考えてみると実践のハードルも下がることでしょう。もちろん、自分に合った使い方ができることが最優先なので、タスク管理をより楽に行ないたい場合は、原型的バレットジャーナルを単純化して運用してもかまいません。
自分専用のバレットジャーナルをつくってみた
筆者も実際に、以下の手順でバレットジャーナルを作成してみました。初めてなので、今回は原型的バレットジャーナルをつくることに。各項目が見やすくなるよう、付箋を使って工夫もしています。
1. バレットジャーナルで使うキーを整理する
まずノートの最初のページに、バレットジャーナルで用いるキーを書きました。これらのキーは基本的に、デイリーログを書く場面で使います。あとでインデックスも書き入れるため、下部のスペースは空けておきました。
キーには、完了したものを「○」、そうではないものを「×」にするなどして、タスクの現状がひとめでわかるようなものを書いてみました。
2. フューチャーログを書く
次のページには、1年という大きな枠のなかで現状わかっているイベントを書き出しました。どの月にどのようなイベントがあるかをざっくり把握しておくことは、準備に十分な時間を割くことに役立ちます。
ここにはすでに決まっている予定しか書けないため5月や8月の欄には何もありませんが、これから予定が入ればいつでも書き足すことができます。
3. マンスリーログを書く
そして次のページに、その月の予定を簡単に書き、月内にやらなければならない、あるいは月内での達成を目標とするタスクも一緒に書き込んでみました。アルバイトを表す記号は■とし、書く手間を省いています。
右下のタスク欄には、この月に読みたい、あるいは読まなければならない文献を書いておきました。
4. デイリーログを書く
さらに次のページでは、マンスリーログで挙げたタスクを実行できたかどうかを中心にデイリーログを書いてみました。キーを用いてタスクの状態を表しています。すべてを文章化する必要がなく、作成が非常に楽に感じました。
期限が決まっているタスク(上の例であれば、企画書やポスターの作成)は、いつまでに終わればほかの作業に支障が出ないかを同時に考える必要があります。その意味でも、やはり記号でタスクの状態を表すことは、現状の確認に役立ちました。
5. インデックスを書く
最後に、初めに言及していたインデックスへ各コンテンツのページ数を書き入れて、自分だけのバレットジャーナルを無事つくりあげることができました。
マメな性格でなくても先々の予定やタスクを管理できた!
バレットジャーナルを実践して感じたのは、案外手間をかけず、簡単に自分に合った手帳をつくれるということ。筆者自身あまりマメではなく、装飾などもうまくできないので、付箋や少しの色以外は黒のボールペンですべて書きました。やってみる前は面倒くさそうだと感じていましたが、最初に準備さえしておけば日々の記録は数分もかからず終わり、カラフルなペンも必要なくとても簡単でした。
また、直近のタスクはもちろん、数ヶ月先のタスクもあとどのくらい日数が残っているのかすぐに確認できるため、その期限に向けたスケジュール管理もしやすかったです。たとえば、かなり先の予定である12月の卒業論文提出へ向け、1ヶ月ごとに集めるべき文献のリスト(3~4冊程度)をバレットジャーナル上で管理していたことで、見通しが立ち、実際には翌月分の文献までを集めることができました。
さらに1日を終えたとき、次の日のタスクだけでなく過去のタスクも確認する習慣がつき、翌日も完了するべきタスクを覚えていられました。みなさんも、1日の終わりに見返すことを前提にバレットジャーナルを作成することをおすすめします。可能であれば毎日振り返って、できたことを確認して自分をほめつつ、翌日の目標を立てるようにすれば、モチベーション向上にもつながり継続しやすいのではないでしょうか。
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自分のオリジナルなジャーナルをつくってみると愛着が湧いて、予定やタスクを管理するのがきっと楽しくなるはず。面倒なイメージとは裏腹に簡単に作成できるので、ぜひ一度実践してみてください。
【ライタープロフィール】
YG
大学では日韓比較文学を専攻し、自身の研究分野に関する論文収集に没頭している。言語学にも関心があり、文法を中心に日々勉強中。これまでに実践報告型の記事を多数執筆。効果的で再現性の高い勉強法や読書術を伝えるべく、自らノート術や多読の実践を深めている。
(参考)
ライダー・キャロル著, 栗木さつき訳(2019), 『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』, ダイヤモンド社.
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