イマイチな二流ビジネスパーソンには、武士道「7つの徳」が欠けている可能性

武士道の7つの徳を身につければ成長できる01

仕事のスキルはあるはずなのに、なかなか評価を得られない……。まわりの人と良好な人間関係を構築するのが苦手……。そう悩んでいる人は、仕事の心得を名著から学び取ってみてはいかがでしょうか。

参考にしてほしいのは『武士道』。思想家の新渡戸稲造が1899年に全編英語で記した書物です。アメリカで一躍ベストセラーとなり、かのセオドア・ルーズベルト大統領にも感銘を与えた『武士道』は、新渡戸稲造が「日本人の道徳観を世界に発信するために」著したもの。100年以上の時が経った現代にも十分に通じる内容が書かれています。

武士道の精神を支える7つの徳「義」「勇」「仁」「礼」「誠」「名誉」「忠義」について、現代の私たちに照らし合わせながら考えてみました。

義――ルールや常識を守れているか?

7つの徳のうち、最初に説かれているのが、“正しさ” を表す「義」です。当時の武士は裏取引や不正を最も嫌い、正義の道徳である「義」を何よりも重んじていたのだそう。現代に置き換えると、「社会の規律やビジネスパーソンとしての常識をきちんと守る」ことが該当するでしょうか。仕事をするうえでは基本中の基本ですよね。

たとえば、約束した時間に遅刻したり、ミスを報告しなかったり、会議中にプライベートな電話をかけたり……。人としての基本を守れない人は、「義」の徳を備えているとは言えないでしょう。

日経就職ナビ編集長を務めるなど人材育成に詳しい渡辺茂晃氏は、自分の普段の行動を振り返り、ルールや常識から逸脱しているものがないか確認するべきだと述べています。自分では「これぐらい大丈夫でしょ」と許容していたとしても、第三者目線で見ると「これはよくなかったかも」と感じるものは多分にあるはず。

仮にあったとしても、渡辺氏は「素直に反省し、次回は守るようにすればいい」と述べています。行動をいい方向に少しずつ変えていき、「義」の備わったビジネスパーソンを目指しましょう。

勇――どんな事態でも平常心を保てるか?

2番目に説かれている「勇」は “動じない心” のこと。新渡戸は『武士道』のなかで、「勇気が人のたましいに宿れる姿は、平静すなわち心の落ちつきとして現れる」と記述しています。つまり、どんな事態があっても平常心を保てる人が、「勇」の徳を備えていると言えるでしょう。

逆に、「勇」の徳が欠けているとどうなるでしょう。イレギュラーの仕事が発生したときに慌ててミスをしたり、緊張のあまりプレゼンで実力が発揮できなかったりなど、さまざまなデメリットが考えられますね。

不測の事態で心が乱れたときは、「Box Breathing(=ボックス呼吸)」という呼吸法を試してみてください。手順は、息を吐き出したあとに「4秒間ゆっくりと息を吸う」→「4秒間息を止める」→「4秒間ゆっくりを息を吐いていく」だけ。深い呼吸により自律神経系が整い、緊張やストレスが軽減されるとのこと。アメリカ海軍やアスリートたちも実践しているテクニックだそうですよ。

武士道の7つの徳を身につければ成長できる02

仁――他者に寛容になれているか?

3つめの「仁」は “優しさ” のこと。先に述べた「義」が厳格さを表すのならば、仁はそれとは対照的に、弱者に対する「寛容さ」を指します。しかし、この2つは表裏一体。新渡戸稲造は、「仁に過ぐれば弱くなる。義に過ぐれば固くなる」という伊達政宗の言葉を引用し、正しさで物事を計りすぎると、他者への思いやりに欠けることになると指摘しています。

たとえば、「マニュアル通りに作業しなければならない」「ミスは1つもあってはならない」と正しさに重きを置くあまり、チームメンバーにいらだちながら接してしまう……あなたが考えることはもっともですが、ある程度の寛容さがないと、チームはギスギスしてしまうでしょう。 

心理カウンセラーの中島輝氏は、いらいらしてしまいがちな感情をコントロールするには「メタ認知能力」を使うのが有効だと述べています。メタ認知とは、もうひとりの自分が上から自分を眺めるような客観的な視点で物事を見ること。これがうまくできると、小さな物事にとらわれていた自分から離れ、「ま、いっか」と鷹揚になれるそうです。

メタ認知能力を高めるには、1日の終わりに日記をつけるのがおすすめ。1日を振り返ってノートに書き留め、自分の感情や思考を冷静に理解する習慣をつくりましょう。

礼――相手が何を考えているかわかるか?

4つめの「礼」とは、他者への敬意を表明すること。『武士道』には、誰かとともに喜んだり泣いたりできる “共感する力” が、「礼」の徳の必要条件とされています。

この共感力が欠けていると、「相手が何を求めているのか」「相手が何を感じているのか」をうまく察知できません。たとえば、自分の考えを中心に動き、チームメンバーとの連携がうまくいかなかったり、顧客への理解が及ばす、満足のいくサービスを提供できなかったり……なんてことも。

共感力を高めるには、純文学に触れるのがよいでしょう。米ニュースクール大学の研究者が発表した研究によると、「純文学」「ノンフィクション」「大衆小説」のなかで、心の複雑な動きを描写する純文学が、人間の感情理解能力を深めるのに最も有効なのだそう。登場人物たちの心を読み解きながら共感力を養い、日頃から周囲の気持ちに注意を払えるようになりましょう。

武士道の7つの徳を身につければ成長できる03

誠――自分の発言に責任をもてているか?

5番目の徳として紹介されている「誠」とは、“真実性” や “誠意” を表します。当時の武士の発言は信頼性が高く、証文なしでも取引が成立するほどだったのだとか。

現代のビジネスシーンにおいても、クライアントや上司からさまざまな要望が降りてきますよね。もちろん、明らかな無理難題を突きつけられたら折衝する必要もあるでしょうが……相手が期待しているのは、あなた自身がもちうる能力を駆使して、その要望をきっちり満たしてくれることです。

「武士に二言はない」という言葉も存在します。「できます」「やります」と言ったからには、その完遂を目指して全力を注ぐようにしましょう。完遂させたあかつきには、あなたの信頼度は大きくアップしているに違いありません。

名誉――恥を避けるための行動をとれているか?

6番目に来る「名誉」とは、“恥じない生き方” をすることを指します。「人から笑われる」「体面が汚れる」「恥ずかしい」といった廉恥心を大事にすることは道徳意識の出発点になると、新渡戸稲造は述べています。武士たちは「恥ずかしい」という意識があることで、武士としての生き方を正し、名誉を守ることができたのです。

「また失敗したらどうしよう」と問題から避けたり、「わからないと思われるのが恥ずかしい」とわかったふりをしたり……恥を感じても、解決するための策をとらなければ、名誉の徳を備えているとは言えないでしょう。

恥ずかしさは、避けるのではなく生かすことに使いましょう。失敗しないように準備を入念にする、過去のミスを書き出してどんなミスを起こりやすいのかを分析するなど、失敗を回避するための努力はできるはずです。また、「何がわからないのかわからない」状態を防ぐうえでは、「なんの」「どの部分が」わからないのかを明確に言語化しておくと、自分なりにも状況を分析できて相手にも聞きやすくなるでしょう。

武士道の7つの徳を身につければ成長できる04

忠義――上の者に自分の考えを言えているか?

最後の「忠義」とは、“上の者への忠誠” を意味します。しかし、盲目に主君の意見に従うこととは限りません。リーダーが時に誤った道に進もうとしているならば、リーダーのために正しい道を諭してあげることも忠義のひとつなのです。

たとえば、上司から無理な指示を出されたり、リーダーの独断でリスクのある企画を押し進めなければならなくなったりしたとき。私たちは波を立たせないために、意見を述べることをつい避けてしまいがちですよね。でも、冷静になって考えてみると、素直に従うよりもリーダーに進言することで、結果的によりよい方向へ導いていけるかもしれません

経営者でビジネス作家の臼井由妃氏は、上司に意見を述べるときは、言葉選びを工夫することがポイントだと述べます。たとえば、「私の勘違いかもしれませんが……」という枕詞をクッションとして使えば、相手をやみくもに否定せずともこちらの意見を述べやすくなりますよね。相手にも考える余裕が生まれ、問題を見直しやすくなります。

時には正直な意見を上司に伝えてみる――できない人が多いからこそ、やる勇気をもちたいものですね。

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『武士道』の7つの徳を心がけ、デキるビジネスパーソンに近づいていきましょう!

(参考)
新渡戸稲造(1938),『武士道』, 岩波書店.
キャリエデュ|規律性 ルールを守るだけでなく、自らの行動を律する
healthline|Box Breathing
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【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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