「職場の人とうまくコミュニケーションをとれていますか?」
「同僚と楽しく話し、上司や部下と信頼関係が築けていますか?」
こう聞かれて、迷わず「はい」とうなずける人は多くないはずです。
職場の人間関係がうまくいかずに悩んだり、人付き合いが苦手で孤立するのを常に恐れたりしている人には、いくつかの共通点があります。人間関係に悩んでいる人たちに共通することを知り、改善すれば、スムーズなビジネスライフが送れますよ。詳しく解説します。
人間関係に悩みがちな人は「感情のやり取りをしていない」
コミュニケーションは、目的別に大きく2種類に分けられます。問題解決を目的とした「情報のやり取り」と、人間関係の構築を目的とした「感情のやり取り」です。
仕事上のコミュニケーションでは、情報のやり取りが大部分を占めます。案件の進捗はどうなのか、商談時の相手の反応はどうだったのか、今後の戦略は何か、など。
しかし、上で挙げたような“必要最低限の情報” をやり取りするだけがビジネスではありません。人間関係を考えると、お互いの気持ちや気分を共有する「感情のやり取り」もまた重要なのです。コミュニケーション講師の川島達史氏は次のように述べています。
最近困ったことを相手が話しているなら、「解決できたか、どう行動したか」を聞く前に「大丈夫かどうか」を聞く。相手が新しいものを身に着けているなら「どこで買ったか」を聞く前に「素敵だね」「○○色が好きなの?」などと伝える。こうしてひと言、ふた言を挟むだけで会話はとてもスムーズになります。
(引用元:東洋経済オンライン|飲み会の会話が苦手な人はこのコツを知ろう-忘年会で周りから浮かないための鉄板話法 ※太字は筆者が施した)
わかりやすい例を挙げましょう。「腰が痛くて」と言われたのに対し「病院に行けば?」と返すのは、情報のやり取りしかできていない会話です。相手の「そうだね」の一言で会話は終わってしまいますし、相手は「この人にまた話したい」と思ってくれないでしょう。
しかし、「大丈夫?」「仕事に支障はなさそう?」などと、相手を思いやった言葉を投げかけてあげれば、「いや、じつは……」と会話が続いていきます。会話が増えると、相手は「この人ともっと話したい」と思うようになり、互いにとって心地良いコミュニケーションもさらに増える、という好循環が生まれるのです。
仕事上での「情報のやり取り」と、仕事以外での「感情のやり取り」を使い分けることが重要なのですね。
人間関係に悩みがちな人は「相手の懐に入り込もうとしていない」
「気が合わない人とは付き合わなくてもいい」といったアドバイスをよく耳にします。たしかに、気が合わない人を全て遠ざければ、ストレスはないかもしれませんね。しかし、嫌な相手を避けるのは “くさいものに蓋をしている” だけ。根本的な解決とはいえません。
気が合わない人と円滑に付き合うにはどうすればいいのでしょうか。人材開発などのサービスを展開する株式会社Indigo Blue代表取締役の柴田励司氏は、次のように話しています。
「私の場合は、気が合わない人ほど自分から声をかけて、一緒に食事をしたり、お酒を飲んだりするようにしてきました。
(中略)
もちろん、嫌いな人に声をかけるのは、大変なストレスです。でも、だからといって逃げ回っていると、永遠に相手との距離は縮まりません。気が重くても、『えいやっ』と声をかけることが大事です」
(引用元:THE21オンライン|重要なのは、メンタルを「マネジメント」する技術 ※太字は筆者が施した)
柴田氏は、気が合わない人と話すとき、相手から話を聞き出すために、とにかく聞き手に徹することをすすめています。話を聞くことによって、相手の価値観や考え方が見えてくるので、相手との接し方が少しずつつかめるようになるとのこと。同時に、人は話を聞いてもらえると、会話を心地よく感じて気分がよくなるので、気を許してくれるのです。
聞き手にまわるコツは、先ほど述べた「感情のやり取り」がヒントになるでしょう。会話が増えたら案外気が合うことに気づいた、なんてことも決して珍しくはないのです。
人間関係に悩みがちな人は「自分の失敗談を話したがらない」
ここまでの話と矛盾するようですが、会話において「とにかく聞き手に徹すればいい」というわけではありません。特に、相手があまり話さないタイプの人であれば、逆にこちらから積極的に話す必要性も出てきます。
では、どのように話せば相手に好印象を持ってもらえるのでしょうか。行動科学マネジメント研究所所長の石田淳氏は、次のように述べています。
生命保険のトップセールスには、この手のタイプ(※筆者注:自慢話をしたがるタイプ)が少なくありません。(中略)成功体験が豊富なので、つい自慢話をしてまわりから顰蹙を買うのです。
ただ、知り合いのトップセールスの中には、マネジャーとして成功した人もいました。その理由を尋ねると、ある人は「いつも失敗談を話していた」と答えてくれた。これは重要なヒントです。
(引用元:プレジデントオンライン|職場の摩訶不思議10篇-敵をつくる人、つくらない人は、どこが違うか)
「この前上司に褒められてさ」「10キロダイエットできたよ」など、良いことがあったら話したくなりますが、聞き手側には、他人の成功体験にあまり興味を示さない人もいます。逆に「この前営業先で怒られてさ」「この前落とし物をしちゃったんだ」といった失敗談は、聞き手の興味を引きつける可能性があります。「デートに行った話」と「別れ話」、どちらに聞き手が飛びつきやすそうか想像すれば、わかりやすいでしょう。
自らの株を下げないようにと、失敗やミスを隠し、株を上げるための成功アピールばかりしていては、「親しみの持てないお高い人」と思われてしまいます。失敗やミスも気さくに話して、成功は語らず結果で示してこそ、周りが話しかけたくなるような「気取っていない良い人」になれるのです。
人間関係に悩みがちな人は「下の人をないがしろにしている」
縦社会を上手に生き抜いてキャリアアップするために、「上に立つ人や有力者に気に入られるように努力するべきだ」という考え方は、たしかに間違ってはいないでしょう。しかし、上の人たちばかりを見て、同僚や部下に目を向けない人は、職場で孤立して見放されてしまいます。
人付き合いの考え方を間違えると、人間関係だけでなくキャリアにも響くと語るのは、株式会社セブンイレブン代表取締役社長の高城幸司氏です。
頼りにしている有力者もいつかは退職する日を迎えますし、高齢の役員であれば突然亡くなるかもしれません。
(中略)
有力者の後ろ盾を失ったとき、彼らの多くは悲惨な立場に立たされます。
新しく台頭した有力者に疎んじられたときはもちろんのこと、新たな権力者にすり寄ることに成功したとしても、その序列のなかでは低位に甘んじざるをえません。
(引用元:ダイヤモンド・オンライン|「立場の弱い人」を敵に回すと怖い!-社内で「安定的な地位」を保つ方法)
社内政治は栄枯盛衰だ、と高城氏は話します。事実、終身雇用が崩壊し、転職が当たり前になっている現代社会においては、上司の年齢や性別にかかわらず、すがっている上司がいついなくなるのかわかりません。未来のわからない会社生活で大切にするべきなのが、自分よりも立場が下の人間からの評価であり、部下や後輩とのコミュニケーションで培う、信用と信頼なのです。
上司に片っ端から気に入られようとしても、派閥や人間関係によって思うようにいかず、限られた上司にしかついていけません。一方、同僚と仲良くしたり部下に世話を焼いたりすれば、多くの人から幅広い支持を得られます。
高城氏は、幅広い民意を得るには平等な人付き合いをしたうえで「最も立場の弱い人」に気を配ることがポイントだと話しています。立場の弱い人こそ、キャリアアップの伸びしろが大きいからです。自分より立場が下の人だからこそできる仕事のアドバイスや、ほかの社員への口利きをしてあげましょう。
のちに、キャリアアップ果たした相手は、「あの人にはお世話になった」と周囲に話します。「自分があの子を育てた」と自慢しても誰も聞く耳を持ちませんが、実際にお世話になった人が話すと、あなたの評判は一気に広まるのです。
誰にでも平等に接したうえで、弱い人にこそ手を差し伸べるという精神が、長い目で見ればあなたの良い評価と信頼につながっていきますよ。
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「仕事ができるかどうか」のなかには、当然「周囲と良い人間関係を築けているかどうか」も含まれます。「人間関係に悩んでいる人」の特徴としてご自身に当てはまることがあったら、ぜひ改善に向けて動き出してみてください。
(参考)
東洋経済オンライン|飲み会の会話が苦手な人はこのコツを知ろう-忘年会で周りから浮かないための鉄板話法
THE21オンライン|重要なのは、メンタルを「マネジメント」する技術
プレジデントオンライン|職場の摩訶不思議10篇-敵をつくる人、つくらない人は、どこが違うか
ダイヤモンド・オンライン|「立場の弱い人」を敵に回すと怖い!-社内で「安定的な地位」を保つ方法
【ライタープロフィール】
武山和正
Webライター。大学ではメディアについて幅広く学び、その後フリーのWebライターとして活動を開始。現在は個人でもブログを執筆・運営するなど日々多くの記事を執筆している。BUMP OF CHICKENとすみっコぐらしが大好き。