みなさんは、語彙力に自信はありますか。なんでも「すごい」「やばい」で済ませてしまってはいないでしょうか。
今回は、ビジネスパーソンに語彙力がないとどうなるのか、そして語彙力を鍛えるためにはどうしたらよいのかをお伝えします。
語彙力とは「言葉を使う力」
語彙力とは、そもそもなんでしょうか。「語彙力がない」とは、ただ単に単語を知らないことではありません。言語学者の石黒圭氏は、語彙力について次のように述べています。
語彙力には「知っていること」と「使えること」の2つの側面があり、それぞれ「語彙の量」と「語彙の質」と呼んでいます。これらのかけ算で語彙力は決まります。
(引用:新R25|単語を覚えるだけじゃダメ。語彙力を鍛える方法を言語学者に聞いてきた)
つまり、【語彙の量(言葉を知っていること)】×【語彙の質(言葉を使えること)】=語彙力なのです。量ばかり増やしても、使えない=質が悪ければ、語彙力は低いまま。
語彙力を高めたいときには、難しい単語をたくさん覚えようとしがちですよね。しかし石黒氏いわく、すでに知っている言葉をうまく使えるようになり、語彙の質を高めることが、語彙力アップへの近道なのだそう。
語彙力がないデメリット
では、ビジネスパーソンに語彙力がないとどうなるのでしょうか。伝え方に関するビジネス本を多く執筆している山口拓朗氏は、語彙力がないと「理解する能力」や「深く思考する能力」「伝える能力」などが失われると言います。
私たちは、言葉で物事を理解し、思考し、伝達します。つまり、言葉を知らなかったり、うまく使えなかったりすると、「理解し、考え、伝える」という基本的なことが十分にできないのです。
ビジネスパーソンにとっては、課題や仕事相手の話を理解する・解決策や新しい案を考える・プレゼンや商談などで相手に伝えるというように、どれも欠かせない能力。語彙力がないと、仕事の質に大きな影響が生じてしまいます。ビジネスパーソンにとって、語彙力は絶対に無視できない存在なのです。
語彙力トレーニング
では、どうすれば語彙力を鍛えられるのでしょうか。博報堂のスピーチライター、クリエイティブプロデューサーであるひきたよしあき氏は、著書『博報堂スピーチライターが教える 5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』で語彙力のトレーニング方法を紹介しています。そのなかから3つ抜粋してご紹介しましょう。
【1】30秒間でものの名前を10個言う
すでに知っている言葉をスムーズに引き出せるようになるトレーニングです。
「30秒間で動物を10種類言う」「30秒間で県庁所在地を10ヶ所言う」など、スキマ時間を利用して「30秒間で◯◯を10個言う」を繰り返します。頭のなかだけでなく、声にも出してください。初めのうちは詰まりますが、繰り返すうちにスラスラひらめくようになりますよ。
【2】あらゆるものを実況中継する
文章をスラスラ生み出せるようになるトレーニングです。
電車の窓から見える景色、テレビドラマのシーン、自分の行動など、あらゆるものを実況します。目に入るものをどんどん言葉にする習慣をつけると、言語化力・表現力が身につき、とっさに説明できる分量が膨らみます。また、観察力が身につくという利点も。
【3】形容詞を捨てる
人に伝わる表現力をつけるトレーニングです。
方法は、日常でなるべく形容詞を使わないよう意識するだけ。「このプリンは甘くておいしい」では「へえ〜」となって終わり。「このプリンはなめらかかつ濃厚で、卵の風味が生かされている」と言うと、そのプリンならではの魅力が伝わってきますよね。形容詞は便利な反面、説明を怠ける言葉なのです。形容詞を避けると、表現の幅がぐっと広がりますよ。
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普段「語彙力がないかも」と思っている方や、言葉で伝える力に自信がない方は、ぜひ語彙力トレーニングを試してみてください。言葉を引き出し、使う力を身につけて、仕事に活かしましょう。
(参考)
リクナビNEXTジャーナル|言葉は「思考の種」、持っていないと奪われる“5つの能力”とは?―山口拓朗の『できる人が使っている大人の語彙力&モノの言い方』
ダイヤモンド・オンライン|なぜ今「書く力」がビジネスパーソンに必要なのか?【予告編】
新R25|単語を覚えるだけじゃダメ。語彙力を鍛える方法を言語学者に聞いてきた
ひきたよしあき(2019),『博報堂スピーチライターが教える 5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』,株式会社大和出版.
Book Bang|「形容詞」を捨てれば、あなたの文章はもっと伝わる――日本語のプロが教える、大人の文章表現力
【ライタープロフィール】
梁木 みのり
大学では小説創作を学び、第55回文藝賞で最終候補となった経験もある。創作の分野のみでは学べない「わかりやすい」「読みやすい」文章の書き方を、STUDY HACKERでの執筆を通じて習得。文章術に関する記事を得意とし、多く手がけている。