「忙しい」が口癖になっていませんか? やるべきことをたくさん抱えていたり、心に余裕がなかったりすると、つい言いたくなってしまいますよね。人からのお誘いや依頼を断りたいときに、「忙しい」を言い訳に使っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、「忙しい」を口癖にしても、いいことはないようです。公認心理師の山名裕子氏は、「『忙しい』と口にすると、脳が『あ、今自分は忙しい状態なんだ』と勘違いして、精神的な余裕がなくな」ると言います。(引用元:ダイヤモンド・オンライン|「忙しいときに何て言うか」でわかる!好かれる人と嫌われる人の決定的な違い)
では、「忙しい」のかわりにどんな言葉を言えばいいのでしょうか。
- 忙しすぎてイライラしているとき:「大丈夫!」
- 人から「忙しい?」と聞かれたとき:「暇で暇で」
- 忙しくて対応できないとき:「今週は厳しいですが来週でしたら」
- 忙しい状況で催促メールを送るとき:「進捗状況はいかがでしょう」
忙しすぎてイライラしているとき:「大丈夫!」
仕事や家事に忙殺され、イライラが極まって「忙しい!」と口に出しそうになったら、「大丈夫!」と言い換えてみましょう。ポジティブな言葉を口に出し、自分の耳で聞くことで、張り詰めた気持ちがふっと楽になり、やる気が出てきてパフォーマンスが向上するかもしれません。
山名氏いわく、「たとえ無意識であっても、ネガティブな口ぐせは感情に大きな影響を与え、どんどん自身をマイナス方向に導きます」。(引用元:山名裕子(2017),『幸せを引き寄せる「口ぐせ」の魔法』, ダイヤモンド社.)
冒頭で紹介したように、「忙しい」は精神的余裕を奪うフレーズ。気持ちに余裕がなくなれば、仕事のミスが増えたり、質が低下したりする可能性もあるでしょう。タスクに追われて大変なときにこそ、気持ちに余裕をもって取り組みたいものですよね。
山名氏によると、「忙しい」を「大丈夫!」と言い換えれば、「自分を鼓舞」することができ、「仕事の質を上げ、さらに上を目指すパワーが生まれ」るそうです。(カギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|「忙しいときに何て言うか」でわかる!好かれる人と嫌われる人の決定的な違い)
思わず「忙しい!」と口走りそうになったら、すかさず「大丈夫!」と言ってみてください。
「資料づくりが終わらない。締め切りが迫っている。でもやらなきゃいけない仕事がほかにもたくさん……どうしよう!」――そんなときは「大丈夫!」という言葉で、気持ちに余裕を生み出しましょう。落ち着いて仕事に取り組めるようになりますよ。
人から「忙しい?」と聞かれたとき:「暇で暇で」
人から「忙しい?」と聞かれたときに、たとえ忙しくとも「暇で暇で」と言ってみてはいかがでしょう。相手の話を聴く姿勢が示せるので、「忙しいです」と返事をするよりも会話がスムーズに。人間関係が円滑になり、成長できる機会に恵まれやすくなるメリットも期待できます。
『一瞬で「信頼される人」になる! できる大人のことばの選び方』の著者、松本秀男氏は、こう語っています。
「松本さん、忙しいでしょう?」
などと聞かれた時には、
「いやあ〜、暇で暇で!」
と答えることにしております。
(引用元:今日もひとこと、ほめてみた。|暇で暇で!)
松本氏によると、「暇で暇で」という言葉には、「場が和んで、相手との距離が近くなったり」「頼りにされたり」する効果があるのだとか(カギカッコ内引用元:同上)。
そもそも、人が「忙しい?」と聞いてくるのは、あなたに何か頼み事があるから。そんな場面で「忙しい」と答えたら、相手は「話を聞く暇もないのか」とがっかりし、「余裕がない人なのだな」と思い、あなたから離れていってしまうかもしれません。
ですが「暇ですよ」と答えれば、
「そうなの?じゃさ、ちょっとだけ、今、時間いい?これまっちゃん得意だよね??」
(引用元:同上)
などと頼りにされて新たな仕事が生まれる、と松本氏。
不用意な口癖のせいで、あなたを頼りしたいと思っていた人が去り、自分にとって新たなチャンスまで逃してしまうとしたら、残念なもの……。
人に忙しいか尋ねられたら、いつでも「暇ですよ」と答えることを習慣化してみてはいかがでしょうか。周囲から、「どんなときも心のゆとりを失わない頼れる人だ」と信頼され、成長につながる機会を与えてもらえるかもしれませんよ。
忙しくて対応できないとき:「今週は厳しいですが来週でしたら」
忙しくて対応できないとき、人からの依頼を「いまちょっと忙しいので……」と断っていませんか? 断り文句として「忙しい」は便利な言葉ですが、じつは相手を不快な気分にさせてしまう危険もはらんでいます。
産業カウンセラーの大野萌子氏は、著書『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』のなかで「『忙しい』は『あなたのための時間はありません』と言っているようなもの」だと伝えています。大野氏は、次のような言い換え方を提案。
「今ちょっと忙しいので」
→「今週は厳しいですが来週でしたら」
(カッコ内引用元:同上書籍)
たとえば、もしもあなたが職場の同僚に思いきって頼み事をしたときに、「忙しいから」と断られてしまえば、今後頼み事をしづらくなりますよね。
依頼に対応できない理由を「忙しい」のひと言でまとめずに、具体的な代案とともに、依頼に対応する意志があると示しつつ断ってみてください。ストレートに「忙しいので」と言うよりも誠意が伝わり、好感度がアップするはずですよ。
忙しい状況で催促メールを送るとき:「進捗状況はいかがでしょう」
相手から返事がなく仕事が進められないとき。「こちらも忙しいんだから早く対応してほしいのに……催促メールを送らなくちゃ」と、イライラ・モヤモヤした気分で催促メールを書くと、「まだですか?」「返事をお待ちしていたのですが」などと、感情的な言葉になりやすいもの。
そんな状況に最適な、相手の気分を害さず、急いで対応してもらえるようやんわりと促せるフレーズがあります。
それは「進捗状況はいかがでしょう」。
ベストセラー『気のきいた短いメールが書ける本』の著者、中川路亜紀氏いわく「催促をする際は、『進捗状況』という言葉がとても便利」。(引用元:ダイヤモンド・オンライン|「忙しいときに何て言うか」でわかる!好かれる人と嫌われる人の決定的な違い)
中川路氏が上の資料で紹介している内容をふまえ、言い換え方の例を挙げてみます。
「書類チェックはまだしていただけないのでしょうか」
→「書類チェックの進捗状況はいかがでしょう」
中川路氏によると、「まだでしょうか」というフレーズは、「メールでは嫌味」になってしまうそう。責めるような言い回しを使うと、相手を不快に感じさせたり、萎縮させたりするおそれがあります。返事がさらに遅れる事態に陥るかもしれませんよね。
それに対して、「進捗状況はいかがでしょうか」は、仕事の進み具合を尋ねているだけの、“感情抜き” のフレーズです。仕事の話として相手もすんなり受け入れやすく、事務的に現状を報告してくれるのではないでしょうか。
快く相手に動いてもらえるように、「忙しい」という言葉は角の立たない言い回しに変えてみましょう。
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以下のシーンで「忙しい!」と言ってしまいそうになったら、次のフレーズに言い換えてみてください。
- 忙しさでイライラしたら→「大丈夫!」
- 人から「忙しい?」と聞かれたら→「暇で暇で」
- 忙しくて対応できないときには→「今週は厳しいですが来週でしたら……」
- 忙しいときに催促メールを送るなら→「進捗状況はいかがでしょう?」
ご紹介した「いい口癖」を身につけて、仕事をスムーズに進めましょう。
(参考)
山名裕子(2017),『幸せを引き寄せる「口ぐせ」の魔法』, ダイヤモンド社.
ダイヤモンド・オンライン|「忙しい」と口にすると、 脳が勘違いする
松本秀男(2019),『一瞬で「信頼される人」になる! できる大人のことばの選び方』, 青春出版社.
今日もひとこと、ほめてみた。|暇で暇で!
大野萌子(2020),『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』, サンマーク出版.
中川路亜紀(2017),『気のきいた短いメールが書ける本――そのまま使える! 短くても失礼のないメール術』, ダイヤモンド社.
ダイヤモンド・オンライン|「忙しいときに何て言うか」でわかる!好かれる人と嫌われる人の決定的な違い
【ライタープロフィール】
上川万葉
法学部を卒業後、大学院でヨーロッパ近現代史を研究。ドイツ語・チェコ語の学習経験がある。司書と学芸員の資格をもち、大学図書館で10年以上勤務した。特にリサーチや書籍紹介を得意としており、勉強法や働き方にまつわる記事を多く執筆している。