「仕事や人間関係で、大小さまざまな悩みがある。どうしたらいいんだろう……」
「モヤモヤするだけで、悩みが増えていく一方。サクッと解決したい!」
こうした問題を抱えている人は、メモを活用してみてはいかがでしょうか。悩みを吐き出してすっきりしたり、自分を客観的に見直して問題に対処したりできる可能性があります。
今回は、悩みを解決するのに役立つメモ術を3つ、実践を交えてご紹介しましょう。
1. 困っていることを「因数分解して書く」
仕事でミスをしてしまうという問題や、難しいタスクを抱えていて、「どうすればいいかわからない……」。そんなときは、悩みを “因数分解” しながら紙に書き出してみましょう。
ボストン コンサルティング グループ出身の戦略プロデューサー・村井瑞枝氏によると、因数分解とは「目標や課題をブレイクダウンしていき、具体的に行動できることを見出す」こと(引用元:下に同じ)。村井氏はこう述べています。
一見実現できそうもないことでも、必要な事を一つずつ分解していくと糸口が見つかるものです。
(引用元:マイナビニュース|<メモの極意>村井瑞枝さんに聞く「ビジネスに効く7つの図解パターン(前編)」)
村井氏は、夢や願望を叶えるためのほか、複雑な課題を解決するために、とるべき行動を考える手段として、図を書きながら因数分解することをすすめています。
たとえば、「仕事で同じミスをしてしまう」という悩みを因数分解してみましょう。同じミスが続く理由には「業務内容の把握不足」「周囲との連携不足」などが思い浮かびます。業務内容を把握できていないのであれば、「マニュアルを再確認する」、そして「わからない点を質問する」といった改善策が考えられますね。このようにして悩みをブレイクダウンし、解決策を見つけていくのです。
(図は編集部にて作成)
実際に悩みを因数分解してみた!
今回、筆者も「読書の時間がとれない」という自身の悩みを因数分解してみました。
読書の時間がとれない主な原因としてまず思い浮かんだのは、「夜にも仕事をしている」ことと「スマートフォンを触る時間が長い」こと。
「夜にも仕事をしている」理由は「フリーランスのため働く時間が自由」だからであり、それゆえ「朝はゆっくりし、夕方から集中するルーティン」になっていることに気づいた筆者。そこで「朝に読書をする」という解決策を打ち出しました。じつはこれまで、読書は仕事のあとにだけするものだと無意識に思い込んでいたせいで、読書の時間がとれていなかったということにも、気づけました。
また、「スマートフォンを触る時間が長い」という原因に対しては、一時は「電子書籍を利用する」という解決策がいいのでは、と思ったのですが……「SNSのついでにほかのコンテンツも見てしまう」という問題が思い浮かんだことと、未読の紙の本がたまっていたため、「スマートフォンを触る時間を決める」という解決策を採用することに。
さまざまな解決策を具体的に検討しながら、状況に応じて行動を選べる点が、この方法のいいところだと感じました。
悩んでいると、つい自分の思い込みにとらわれてしまいますよね。でも、因数分解をすれば、悩みを客観的にとらえられるので、解決策の幅が広がりますよ。
ちなみに筆者はA4の方眼紙を横向きにして使いました。深掘りして図を書きやすくなったので、紙は横置きがおすすめです。
2. 嫌なことを「A4裏紙へ1分で書く」
人間関係で嫌なことがあって、忘れようとしてもたびたび思い出してしまう。ふとしたときに、過去にモヤモヤした経験が頭をよぎる……。こうした場合は、感じたことを思うまま、紙に書き出してみましょう。
「モヤモヤが湧いてきたらその都度吐き出す」ようすすめるのは、元マッキンゼー勤務で『ゼロ秒思考』著者の赤羽雄二氏。その効果について次のように述べています。
言語化することで、曖昧だった悩みが整理され、『自分はなぜ不安なのか』が明らかに。悩みの正体が分かれば、おのずと取るべき対処法も見えてきます
『今すぐに対処すべきこと』『気にしても仕方ないこと』を明確に切り分けられて、必要以上に悩まなくなります
(引用元:日経xwoman|「1枚1分のA4メモ書き」で心を整える、自信が湧く 太字は編集部にて施した。以下カギカッコ内は同資料より)
モヤモヤした感情を整理して客観視できると、原因や解決策などについて冷静に考えられるようになるのです。
言語化する際のポイントはこちらです。
- 「『1行20〜30字、4〜6行』を目安に文章化する」
→“つらい” “不安” などのひとことで終わらせないほうが、悩みを深掘りできる - 「1つのテーマにつき1分と超高速で書く」
→いつまでも考え続けない
なお、紙はA4サイズが推奨されています。裏紙でもかまわないそうです。不要な資料や広告の裏面などを利用すれば、気兼ねなく書けそうですね。
実際にモヤモヤをA4裏紙へ1分で書いてみた!
筆者も嫌なことがあると、気持ちをなかなか切り替えられずに落ち込んでしまいやすいため、このメソッドを試してみました。
赤羽氏が推奨するように、A4サイズの裏紙を横向きにして、タイマーを1分にセット。スタートと同時にタイトルから書き始めました。今回のテーマは、「オフィスでの悪口」。ある同僚が別の人について言っている悪口が聞こえて嫌な思いをし、モヤモヤしていたのです。
上の画像のような感じで「オフィスでの悪口」をテーマに2枚。その後、「私は外注スタッフという自分の立場に不安を感じているのかも」と気づいたので、それをテーマにもう1枚書きました。たった3枚書いただけでも、不思議と心が軽くなった実感を得られました。
モヤモヤしたら、たった1分紙に書く――それだけで心をすっきりとさせられるのが、この方法のメリット。つらいことがあった日の夜や、憂うつな予定がある日の朝などに、ぜひ取り入れてみるといいのではないでしょうか。
3. 嫉妬することを「行動比較アクションボックスで書く」
「会社の先輩はいつも人に囲まれている。自分はあんなふうにはなれない……」
「SNSを見ると、キラキラした人たちが大勢いる。それに比べて自分は……」
このように自分をうまくいっている人と比べて、落ち込むこともありますよね。卑屈になったり嫉妬したりしてしまうときは、自分とうまくいっている人の行動を比較して、書き出してみましょう。
そう提案するのは、国家資格キャリアコンサルタントの池田千恵氏。「行動比較アクションボックス」というフォーマット(詳細は後述)に書き込んでいくことで、
他者が成功しているという「結果」ではなく、他者が成功するに至った「原因」や「経緯」を考えることができるようになります。
夢を叶えた人と自分を冷静に比較できるため、憧れの人が嫉妬の対象から研究対象に変わります。
(引用元:朝時間.jp|“人と比べて落ち込む”…モヤモヤを洗い流す「朝ノート」の書き方)
とのこと。つまり、
- 「あの人はうまくいっている。でも自分はうまくいっていない」という “結果” ではなく……
- 「あの人は○○している。一方、自分は××している」という “行動” を客観的に比較する
わけです。こうすることで、「余計な感情を抜きにして、素直に『成功者から学ぼう』と思えるように」なると池田氏(引用元:同上)。成功者から学ぶスタンスになれば、感情に振り回されることなく「自分には何ができるだろう?」と前向きに考え、行動できるようになるのです。
行動比較アクションボックスのフォーマットはこちら。
うまくいっている人と自分の行動(事実)・結果・その結果になる理由を、各欄に箇条書きにし、残りのスペースを使って「自分が次にとるべき行動」を考えて書いていきます。
実際に行動比較アクションボックスへ書いてみた!
筆者はよく、結果を出している同業者と比較して「自分はまだ、これくらいしか実績を残せていない」と劣等感を覚えることがあります。
たとえば「あの人はSNSを活用して成果を出せていて、すごいなぁ……」と感じたとき、以下のように行動比較アクションボックスを書いてみました。
「あの人はなぜ上手に活用できるのだろう」「自分はどうするべきだろう?」などと、行動に目を向けるうちに、思考が自然と “分析モード” へシフトして、モヤモヤした感情を薄れさせることができました。
結果を出せていない劣等感があるからといって、何をすべきか考えないままいきなり結果を出そうとしても、うまくいきませんし負担になってしまうだけ。行動比較アクションボックスを使って、成功へ確実に近づける行動を、他者にならって決めましょう。簡単なことからでも焦らず行動に移していけば、「自分もできる」と自信がもて、悩みもきっと解消されますよ。
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今回ご紹介したメモ術を使えば、悩みを効果的に解消できるはず。紙とペンさえあればすぐできるものばかりなので、ぜひ試してみてくださいね。
(参考)
マイナビニュース|<メモの極意>村井瑞枝さんに聞く「ビジネスに効く7つの図解パターン(前編)」
ITmedia エグゼクティブ|ビジネスパーソンのための「図を使って思考を磨く技術」
日経xwoman|「1枚1分のA4メモ書き」で心を整える、自信が湧く
朝時間.jp|“人と比べて落ち込む”…モヤモヤを洗い流す「朝ノート」の書き方
朝時間.jp|他者の成功を自分に活かす!行動につながるノートの書き方【実践編】
【ライタープロフィール】
藤真 唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいてわかりやすく伝えることを得意とする。