社会人にとって超重要「認知機能」低下の5つのサイン。あなたはいくつ当てはまる?

認知機能低下のサイン01

やる気が出ない、仕事がはかどらない、勉強に集中できない……。そんなあなたの脳では、認知機能が低下しているかもしれません。

認知機能とは、理解や判断、記憶、計算、言語などの知的機能のこと。言うまでもなく、ビジネスパーソンにとって超重要な機能です。今回は、認知機能低下のサインとなる5つの症状予防・改善策をご紹介します。

あなたの認知機能はうまく働いている?

専門家の解説をふまえ、認知機能の働きを確認するテストを用意しました。次の項目のなかで、最近のあなたに当てはまるものはありますか?

認知機能低下のサイン02

これらはいずれも、認知機能が低下しているときに起きがちなことです。次の項目以降で詳しく解説しましょう。

1. 物覚えが悪い、“うっかり忘れ”をしてしまう

認知症の症状としてよく知られる “もの忘れ”。覚えが悪かったり “うっかり忘れ” をしたりといったことは、まさしく認知機能低下のサインです。

慶應義塾大学医学部准教授の伊東大介氏によると、こうした記憶のトラブルは、脳のゴミと呼ばれる「βアミロイド」が脳にたまることで起きるのだそう。βアミロイドが一定量に達すると「タウ」というタンパク質がたまり、神経細胞を破壊。すると、記憶をつかさどる脳の部位である「海馬」の働きが衰え、物事を忘れやすくなるのだとか。

予定を忘れてしまったり、上司の指示を覚えていなかったり……などの“うっかり忘れ”が多いあなたは注意が必要です。

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2. 物事を計画的に進められない

段取りよく物事が進められないというのも、認知機能の低下を表すサイン。この背景には、脳の「ワーキングメモリ」という記憶能力の低下があります。

作業療法士の菅原洋平氏によると、ワーキングメモリとは、覚えた情報を次の行動に反映させる能力のこと。一度得た情報を、ほかの行動に移ったときにも頭に留めておき、必要になった時点でタイミングよく思い出す能力です。

このワーキングメモリの働きが落ちると、必要な情報をタイミングよく思い出せなくなるため、やるべき仕事を忘れてしまいます。つまり、計画的に行動できなくなるのです。

チェックテストの2にあるような、電話に出たら直前まで作業していたことを忘れてしまった、というようなことをよくしてしまう人は、ワーキングメモリの働きが低下していると言えるでしょう。

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3. 作業に集中できない

菅原氏によれば、ワーキングメモリの機能が低下すると目の前のやるべき作業に集中できなくなるのだそう。

ワーキングメモリの能力が高い人は、その時点では必要ない情報をマスキングし、必要になった段階で使うという「情報の選別能力」が高いのだそう。しかし、ワーキングメモリの機能が低下していると、不要な情報を選別してマスキングすることができません。そのため、周囲の不要な情報が頭に入ってきてしまい、目の前のやるべきことに集中できなくなるのです。

周囲の音や声が気になって、仕事や勉強に身が入らない。あなたのそんな症状は、ワーキングメモリが衰えているせいなのかもしれませんよ。

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4. やる気が湧かない

脳神経外科医の奥村歩氏によると、認知機能を担う脳部位である前頭葉の働きが衰えると、記憶や言語といった知的機能に悪影響が及ぶほか、やる気が湧かなくなるのだそう。なにをしてもつまらないと思ったり、好奇心をもてなくなったりするのです。

奥村氏いわく、その原因は、スマートフォンによる情報の過剰なインプットが引き起こす「脳過労」だとのこと。絶えず情報をインプットしてばかりで整理する時間をとらないと、脳内が情報だらけになり、処理が追いつかず疲れてしまうのです。息抜きのつもりのスマートフォンが脳を疲れさせているケースが非常に多い、と奥村氏は指摘します。

仕事中やテレビを見ているあいだにもスマートフォンを気にしたり、トイレやお風呂にまでスマートフォンを持ち込んだりする人はいないでしょうか。こういった行動によって、あなたの認知機能もやる気も低下してしまいますよ。

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5. 数量的な見積ができない

精神科医の広川慶裕氏いわく、前頭葉の機能低下は、計算力の衰えももたらすそうです。

計算力とは、数字を理解して計算する力のこと。四則演算だけでなく、買い物をしたり、時計を見たり、時間配分を考えたりするときにも、計算力は働いています。前頭葉の機能低下により比較的早い段階で影響が出るのが計算力であるため、日常生活で使うような簡単な計算や数量的な見積もりができなくなってきたなと思ったら、もうその時点で要注意です。

計算力が衰えると、スケジュール管理をするのも難しくなります。営業で1日に何件も取引先を訪問しなければいけないとき、計算力が衰えていると時間配分を考えて計画を立てられないので、すべての訪問先を回れなくなってしまうでしょう。スケジュール管理で苦労することがある人は、認知機能が低下しているのかもしれません。

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認知機能低下は、こうして予防&改善!

5つのサインのなかに当てはまるものがあった人は、以下に紹介する改善策を実行してみてください。現時点で問題がない人でも、予防策としてぜひ実践してはいかがでしょうか。

【1】質のよい睡眠をとる

記憶力の衰えにつながるβアミロイドを増やさないようにするには、良質な睡眠が大切です。

快眠セラピストの三橋美穂氏によると、βアミロイドは睡眠中に排出されることが研究で明らかになっているそう。睡眠が足りないとβアミロイドが排出されず、蓄積しやすくなるのです。

三橋氏いわく、適切な睡眠時間の目安は、25歳で7時間、45歳で6時間半。忙しいと睡眠を削ってしまう人もいるかもしれませんが、やはり睡眠は疎かにしないほうがいいでしょう。

【2】マルチタスクをしない

計画性や集中力の欠如をもたらすワーキングメモリの機能低下を防ぐには、マルチタスクを減らすとよいと菅原氏は言います。ワーキングメモリを含む脳をうまく働かせるには、脳への負担を軽くしなくてはなりません。同時並行で異なる作業を行なうマルチタスクは、脳への負担が大きいため、避ける必要があるとのこと。

菅原氏によれば、マルチタスクを減らすには、意外にも姿勢を正すことが効果的なのだそう。脳には、作業効率が上がる体の使い方ほど価値が高いと判断する働きがあります。作業に適した姿勢をとると、ワーキングメモリを担う上頭頂小葉という部位が働き、情報の要・不要を選別してやるべき作業に集中することができるようになるのだとか。逆に、ダラダラした姿勢で作業をすると、情報の要・不要を選別できなくなり、「つい別のことをしてしまう」といったマルチタスクにつながります。姿勢を正せばそれを防げるというわけです。

また、早稲田大学教授で脳神経科学者の枝川義邦氏は、スマートフォンはマルチタスクを生みやすいと言います。理由は「ながら使い」ができてしまうから。そのため枝川氏は、暇なときにスマートフォンを見るかわりに散歩をしたり、皿洗いのような単純作業を行なったりすることで、少しでもスマートフォンから離れる時間をつくることが大事だと述べています。

【3】計算力トレーニングをする

最後に、計算力が衰えないようにするためのトレーニング法を紹介しましょう。先述の広川氏が、次の方法をすすめています。

  • 決められた時間内で計算をする(簡単な足し算や引き算でよい)
  • 買い物をしながら合計金額を計算する
  • 通りがかりの車のナンバーを瞬時に覚えて、足し合わせる

仕事中も、難しすぎる計算でない限りは電卓やExcelを使わず、自分で計算してみるのはどうでしょうか。時間をかけず思いついたときにできるようなトレーニングを、ぜひ日常生活に取り入れてみてください。

***
認知機能低下のサイン、あなたはいくつ当てはまりましたか? デキるビジネスパーソンになるために、一度ご自身の生活を見直してみてくださいね。

(参考)
e-ヘルスネット|認知機能
NIKKEI STYLE|認知症の原因は脳のゴミ 40代なら知るべき基礎知識
STUDY HACKER|仕事のミスを誘発する「ワーキングメモリ」低下のサイン。あなたはいくつ当てはまる?
NHK|“スマホ脳過労” 記憶力や意欲が低下!? - NHK クローズアップ現代+ 
認知症ねっと|計算力とは
新刊JP|睡眠不足で脳にゴミがたまる!? 脳が若返る睡眠のひけつ
STUDY HACKER|マルチタスクによる脳への負担を減らす方法。「○○を正す」のが意外と効果的
菅原洋平(2019),『超すぐやる! 「仕事の処理速度」を上げる“科学的な"方法』, 文響社.

【ライタープロフィール】
YUKA
大学ではフランス語を専攻。高校では一年間オーストラリアへ留学。海外への一人旅も経験し、夢は海外移住。趣味は音楽鑑賞・グルメ巡り・旅行など。

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