現代人はとかく覚えることを強いられます。そうなると種々の記憶術がもてはやされるのが当然でしょう。書店には耳触りのいいタイトルの書物がたくさん並んでいます。 今回ご紹介する「『1分スピード記憶』勉強法」も、タイトルだけではよく見かける、いかがわしげなものに思えるかもしれません。
『「1分間スピード記憶」勉強法』
宇都出 雅巳著 三笠書房 2012年
記憶の基本「繰り返し」と「量を減らす」をいかに行うか
本書のようなタイトルから連想される内容は「大量の情報を短時間で一気に覚えられる秘訣」でしょうか。しかし、現実はそんなものは存在せず、記憶するためには「覚えられる量」を「繰りかえす」しかありません。
本書も基本的にはこの二本の柱に依ってたち、それをいかに効率よくするかを述べています。 そして勘違いしてはいけないのが、本書は「1分ですべて覚える秘訣」を紹介するのではなく「覚えるために繰り返す1分」について解説しているという点です。
その内容は、 「最初はざっくり大雑把に覚える」「知識や情報を経験する」 といったものです。
いざ覚えようと構えると、なかなか覚えられない。しかしその一方で、意識したわけではないのに昔のことを妙に覚えていることがあります。これは、先に挙げたコツを日常で我々が無意識の内に行っているためであり、そのことを再認識して行うことがこの本のベースです。
覚えるメソッドの基本は「馴染み深くする」こと
もちろん、単に「覚えられる量」を「繰り返す」ことが記憶の基本ですが、本書で紹介されているのはそれだけではありません。より効率よく覚えるためのメソッドとして「イメージ化」、身につく読書法に「タイトル、目次を覚える」といったものが紹介されています。
これらは馴染みのないものを身近に感じさせて脳が覚えやすくするための方法です。 イメージ化やタイトル、目次把握により近しい存在となることで、ちょうど興味のある分野の話はよく理解し覚えられるように、記憶しやすく、また、身に付きやすくなるのです。
また、これらの方法のさらなるコツとして「道のりを目印とする方法」(これは場所法と呼ばれています)などが紹介されています。
イメージ化、場所法に効果についてはStudyHackerでも紹介されてるので割愛します。 以下の記事もぜひご一読ください。 「記憶の鍵はイメージ化! 『場所法』と『メモリーリーディング』」
「1分スピード記憶」は様々な学習に応用できる
本書の後半、第4章第5章では資格や受験勉強、英語の学習方法について紹介しています。 これらの学習はどれも覚えることが核となっているため、これまでに紹介した「1分スピード記憶」が応用できるわけです。特に英語に関しても、「読む」ことが「聴く」「話す」の繰り返しに変わるだけで本質は一切変わりません。 そういった意味で、様々な分野に対応するいわゆる頭のいい人になるためのコツなのでしょう。
学問、記憶法に王道なし。 しかし同じ道のりでもより速く(効率的に)行く手段はあり、いわゆる頭のいい人たちは無意識にその方法をとっているわけです。本書は、誰でもできる効率的な方法を紹介した本です。