みなさんは、普段の仕事において膨大な情報を扱うことがありますか。
上司から大量のデータを渡され「これ、まとめておいて」と言われたけれど、どうすればいいかわからない。 膨大な顧客アンケート。集めたのはいいけれど、次につなげるにはどうしたらいいのだろう。
こんな風に、仕事中に多くのデータを目にして途方に暮れた経験が何度かあるかもしれませんね。しかしそれらのデータは、私たちを混乱させようとするものでは決してありません。うまく活用することができれば、仕事で成果を出すために使える宝の山だと言うことができるでしょう。
そこで今回は、膨大な情報の中から必要なものを取捨選択し、仕事にきちんと活かしていくための方法についてお伝えします。
情報は、使いこなせなければ意味がない
現代は様々な情報で溢れていますが、たくさんある情報の中から必要なものを選び出し活用していくことは、たやすそうに見えて意外とできないもの。上に挙げたような状況はその典型例です。
著作家であり、イノベーションや組織開発などのコンサルタント業務も行っている山口周氏は、「情報は量よりも『密度』である」と述べています。多くの情報を持っているだけでは意味がないということ。情報の中から、なんらかの示唆や洞察が得られなければ、それはただ宝の持ち腐れでしかありません。
仕事では、多種多様なデータを基にして重要な意思決定を行う場面が多くありますよね。そこで適切な判断ができるためには、情報を得るだけでなく、適切に取捨選択し、十分に活用することが必要不可欠なのです。
ただ、実際どうすれば情報をうまく選び出し活用できるのか分からないという方も中にはいらっしゃるでしょう。そこで、みなさんの役に立つ有用な手段として「2R2Aサイクル」を紹介します。
「2R2Aサイクル」とはなにか
「2R2Aサイクル」とは、得た情報から従来にない新たなパターンを見出していくためのプロセスのこと。成功哲学の提唱者ナポレオン・ヒルの教えを実践するために、米国ナポレオン・ヒル財団初代理事長であるW・クレメント・ストーン氏が説いた行動方式です。
ビジネスパーソンにおなじみのPDCAサイクルが実行・改善に関する活動であるのに対し、2R2Aサイクルはその前段階である学習活動において用いられます。
2R2Aサイクルは、「Recognize(認識)」「Relate(関連づけ)」「Assimilate(同化)」「Apply(実践)」の4つのステップから成っています。このステップに沿って行動すれば、情報を選び出しうまく仕事に活用することができるでしょう。仕事において高い成果を上げることが可能となるはずです。
「2R2Aサイクル」の回し方
では、私たちはどのようにして2R2Aサイクルを回していけば良いのでしょうか。それぞれのステップを詳しくご紹介します。
1. Recognize(認識) まずは、情報をもとに何か新しい兆候を認識することから始めます。認識するとは言っても「これは面白い」、「これはチャンスだ」といった程度の直感で構いません。
例えば、ある製品の売り上げや利益、顧客満足度などのデータを扱っているとしましょう。過去のこれらのデータを見て、何か新しい兆候はないか探ってみます。「製品Aは販売数量は少ないけれど顧客満足度は高い」といったような興味深い傾向に気付いたら、その製品Aは今後ヒットする可能性があるもの。ヒットに向けた施策(マーケティングや生産量の変更など)に乗り出すことができるかもしれませんね。
2. Relate(関連づけ) 次に、認識した兆候が現在行っている業務にどのような意味があるのか、将来的に影響はあるのかなどを関連付けて検討しましょう。もし複数のデータがあるならそれらを関連付ける作業も含みます。
ここではビッグデータによるデータ解析を参考にしてみると分かりやすいと思います。ネットで買い物をしていると、消費者の検索履歴に応じて商品を勧める機能がありますよね。これが、身近な関連付けの例。検索履歴と商品の相関関係を識別し新たなパターンを認識していることが分かります。
私たちの実際の仕事においては、パターンの認識のみにとどまらず、現在の業務へさらに関連づけることが必要です。
例えば、製品の生産現場で不良品を減らしたいと考えたとしましょう。データから不良品の生産率と相関するものを探し出します。特定の従業員が関与している、現場の休み明けに不良品が増える、といった傾向が見られたら、その部分に働きかけて改善を促すことができますね。このようにすれば、データから見出された兆候を業務に関連付けることができるのです。
3. Assimilate(同化) これまでのステップで業務に関係づけられたデータのパターンを検討することができたら、関連付けた情報を実際に業務に取り入れましょう。その際は、より具体的で取り組みやすいアクション・プランに落とし込むことが重要です。また、そのプランは柔軟に調整できるようなものにすることも必要。例えば複数の部門がそのプランに関係している場合、一方の部門にとっては使い勝手が良くても、他方にとっては都合が悪いのであれば、不満が出てきてしまいます。
先ほど挙げた生産現場の例を続けましょう。不良品の生産率と相関するものがもし見つかったとしても、技術部門と管理部門の間で折り合いがつけられない場合があるかもしれません。その時には、考えたアクション・プランをそのまま押し進めるのではなく、それぞれの実情やニーズをできるだけ汲み取れるように修正することが必要なのです。
4. Apply(実践) 最後のステップでは、アクション・プランを実行に移すことになります。上で述べたように、2R2Aサイクルは学習プロセスであるため、このステップ以降の行動について詳細に説明することはありません。ここから先は、PDCAサイクルを取り入れましょう。2R2AサイクルとPDCAサイクルを組み合わせると、実行・改善の段階もきっとうまくいくはずです。
*** 2R2Aサイクルのプロセスを繰り返し回していくことで、情報を体系的に業務へ活かすことができるようになりますよ。みなさんも、2R2Aサイクルを実践して情報活用能力の向上を目指しましょう。
(参考) 原田勉著(2016),『イノベーションを巻き起こす「ダイナミック組織」戦略』,日本実業出版社. DIAMOND online|情報氾濫時代に必要なのは、知識より「使いこなす力」 PHP Online衆知|情報を最大限に活かすための「20の引き出し」 ITmedia エンタープライズ|企業はなぜ“情報活用”ができないのか?