時間が足りない、知識が足りない、お金が足りない……。より良くなりたいと思うあまり、足りないものにばかり注目して、疲れてしまってはいませんか?
高みを目指そうとする姿勢は前向きで素晴らしいものですが、「ない」ものばかりに目をむけるよりも、今すでに「ある」ものに着目したほうが良いようです。なぜなら、その方が充実した時間を過ごすことができ、結果的に前進にもつながるから。
今回は、自分がすでに持っているものに目を向ける重要性について考えてみたいと思います。
足るを知るということ
中国に古くから伝わる、老荘思想。言わずと知れた古代中国の思想家、老子と荘子の教えをまとめた思想のことを指します。「無為自然」という考え方を中心に、人はあるがままに生きるべきだと説くこの思想。現代まで脈々と伝えられ続けています。
そんな老荘思想を教える『老子』という書物の中には、次のような一節が記されています。
足るを知る者は富む (中略) 満足することを知っている者は、たとえ貧しくとも精神的には豊かで、幸福であるということ。
(引用元:故事ことわざ辞典|足るを知る者は富む)
努力も時間も才能も、自分が今持っているものを認めることで、私たちは満足し、心豊かな生活を送ることができるようになると老子は説いているのです。自分にないものをあれもこれもとほしがってばかりいたら、すぐに消耗してしまいます。現代を生きる私たちにも通じる教えですね。
足るを知れば、本当にやりたいことに挑戦できる
足りない、持っていないという考えを脱して、今あるものに目を向けるようにすると、具体的に何が変わるのでしょう?
現代は様々な誘惑であふれています。街を歩いていてもスマホでネットサーフィンしていても目に入ってくる広告は、その最たるものでしょう。
しかしながら、それらの誘惑は私たちが本当に欲しいと望んでいるものでしょうか? もしかしたら、私たちは別段必要もないことに大切なお金や時間、才能を使っているのかもしれません。
私たちが今持っているものに目を向けることによって、自分が持っている時間などのリソースは、どのように使うと無駄になり、どのように使えば有効に使えるのかを知ることができます。そこで見出した無駄を削れば、その分のリソースを、別の有意義なことのために費やすことができるようになるでしょう。
アプリシエイティブ・インクワイアリーという、個人や組織の強みを見つけ能力を高めていくプロセスを提唱しているデイビッド・クーパーライダー氏は、「ある」ことに目を向けることにより積極的な行動がとれるようになるといいます。
「人は希望があると感じ、環境が味方してくれていると実感できるときに積極的な行動を取ることが多い」
(引用元:ダイヤモンド社書籍オンライン|人生を変える「夜の○○の習慣」って?ハーバードの研究でわかった人生必勝法)
足るを知り、今の自分に満足することができれば、自信をもって物事に積極的に挑戦できるようになるかもしれません。
毎日夜に感謝の習慣を
私たちがすでに持っているものを見つめるためには、感謝を心がけることが大切です。
私たちは、欲しいのにもかかわらず持っていないものに感謝はできません。例えば、時間がなくて忙しいと困っている人は、おそらく時間がないことに感謝できないでしょう。そのため、感謝をすることは必然的に自分の持っているものを見つけることでもあるのです。
感謝することと幸せとのつながりについてTEDでスピーチを行った、ベネディクト会僧侶のデヴィット・スタインドル・ラスト氏は、感謝をするには一度立ち止まる必要があるといいます。
全ての瞬間に感謝しながら生きる方法はどうすれば見つけられるのでしょうか? それはとてもシンプルです。子どもの頃に横断歩道の渡り方を学んだように、「止まって、見て、行く」ただそれだけです。
(引用元:logmi|幸せが先か、感謝が先か とある僧侶が語った、幸福になるために必要なたったひとつの習慣)
ただ流されるままに生きていたら、今あるものすべてが当たり前のように感じられてしまいます。今自分が持っているものに気付くためには、立ち止まり、自分の周りを観察することが必要なのです。
ハーバード大学で幸福について教えているタル・ベン・シャハー氏は、自分がいま何に感謝できるか、毎日夜に書くことを勧めています。夜、その日一日に何があったのかを立ち止まって振り返り、そして感謝する時間を作ってみてください。そうすることで私たちは、足るを知り、自分に満足して充実した毎日が過ごせるようになるのです。
*** 最近疲れだけが溜まり充実感がないという方、ないものばかりをいつも追いかけてしまうという方は、一度立ち止まって、今自分にあるものを見つめてみてはいかがでしょうか。
足るを知ることで、きっとみなさんの生活がより有意義なものになると思いますよ。
(参考) ダイヤモンド社書籍オンライン|人生を変える「夜の○○の習慣」って?ハーバードの研究でわかった人生必勝法 Wikipedia|老荘思想 はじめての三国志|老荘思想の創設者|老子と荘子の二人を分かりやすく解説してみた ちょんまげ英語日誌|老子 第三十三章 足るを知る者は富み、強めて行なう者は志有り Hana.bi|リオ会議でもっとも衝撃的なスピーチ:ムヒカ大統領のスピーチ (日本語版) HUMAN VALUE Knowledge|AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー) logmi|幸せが先か、感謝が先か とある僧侶が語った、幸福になるために必要なたったひとつの習慣 故事ことわざ辞典|足るを知る者は富む