あなたのまわりには「地頭がいい」と感じさせる人はいますか? 地頭と聞くと、努力とは関係のない生まれ持った素質のように思えますが、地頭の良さの本質を理解できると、それを養うこともできると野村克也さんは考えています。
今回は、さまざまなジャンルで活躍する人が必ず備えていると言っても過言ではない、「地頭」を養うための考え方をご紹介します。
【格言】 「地頭がいい」とは、 相手の立場に立ってものを見られること
「地頭がいい」という言葉を耳にすることがあるが、「地頭がいい」とはいったいどういうことなのだろうか? 対義語は、おそらく「バカ」なのだろう。わたしは選手たちによく「野球バカになるな」と言ってきた。
「○○バカ」とは、なにかに夢中になっている人間のことを指す言葉である。愚直にひとつの道を邁進するイメージがあるためか、いい意味で使われることも多い。しかし、なにかに夢中になっている人間は視野が狭くなるものである。つまり、バカは自分の立場でしかものごとが見られなくなるわけだ。
野球は、それでは勝てない。ピッチャーならバッター、バッターならピッチャーというように、相手の心理を読むことではじめて状況に対応できるようになる。自分の目でしかものごとを見ることができないようでは、勝負に勝てるはずはない。
裏を返せば、「地頭がいい」とは、相手の立場に立ってものを見られるということである。視座が高く、視野が広い。だから目の前の相手が「なにを嫌っているのか」、あるいは「なにを狙っているのか」が判断できるようになる。それができれば、対応は簡単だ。
地頭がよければ、どんな世界でも成果を出せるはずである。
【プロフィール】 野村克也(のむら・かつや) 1935年、京都府に生まれる。京都府立峰山高校を卒業し、1954年にテスト生として南海ホークスに入団。3年目の1956年からレギュラーに定着すると、現役生活27年間にわたり球界を代表する捕手として活躍。歴代2位の通算657本塁打、戦後初の三冠王などその強打で数々の記録を打ち立て、MVP5回、首位打者1回、本塁打王9回、打点王7回など、タイトルを多数獲得。また、1970年の南海でのプレイングマネージャー就任以降、延べ4球団で監督を歴任。ヤクルトでは「ID野球」で黄金期を築き、楽天では球団初のクライマックスシリーズ出場を果たすなど輝かしい功績を残した。現在は野球評論家として活躍中。
Photo◎産経ビジュアル
*** 「ID野球」に象徴されるように、プロ野球という天賦の才能を持つ者たちの世界に、地頭の良さで戦いを挑んだのが野村さんでした。世間には「野球バカ」という言葉もありますが、ID野球はまさにその対極にある思考であり、勝つためのひとつの方法論だったのです。
自分がうまくいくやり方を追求するのは良いことですが、ときに視野狭作に陥ったり、チームで行動する場合は致命的なミスにつながったりすることも。そこで、なかなか良い結果が出ないと感じるときは、一度「地頭」という角度から自分の方法を見直してみることをオススメします。