「外で」と「デスクで」を使い分けろ! 午後の仕事内容でランチの場所を変えるべき科学的理由

みなさんは、どこでランチを食べますか? デスクでひとり黙々と? それとも職場の同僚や先輩と外に出て、会話を楽しみながら食べるのでしょうか。そのときの忙しさで選択が変わるかもしれませんね。また、ひとりが気楽だから、少食だから、昼ぐらいは気分転換したいから、色んな店でランチを食べ歩きしたいからなど、さまざまな理由があるでしょう。

しかし、「午後の仕事内容」によってランチの場所を選ぶことで、仕事の精度や効率を上げられる可能性があります。あらゆる根拠をもとに、その理由を説明しましょう。

外食ランチは最強リセット術

精神科医・作家の樺沢紫苑氏は、集中力を高め、効率よくしごとを終えたいなら、外食して昼食をとるべきだといいます。その理由は次の効果があるから。

・セロトニン効果 ・場所ニューロン効果 ・アセチルコリン効果 ・メリハリ効果

仕事をしているとセロトニンの活性が低下してくるそう。神経伝達物質のセロトニンは、脳や心を安定させ、自律神経の調子を整えるため、集中力維持や効率アップには必要なもの。これを再活性させるのが「日光浴」「リズム運動」「咀嚼」で、それを十分に満たすのが外食ランチというわけです。

また、“場所”に反応する「場所ニューロン」は脳の海馬という領域にあり、これが活性化すると、記憶力や作業効率のアップに役立ちます。そして、場所ニューロンは初めての場所に行くほど、より活性化するそう。つまり、外に出て新しい店を開拓しながらランチを楽しめば、場所ニューロン効果を期待できるのです。

とはいえ、味が好きな行きつけの店があれば、決まったようにそこへ向かってしまいますよね。でもご安心を。同じ店でも、日によって座る席を変えることや、新しいメニューを試すことでアセチルコリンが活性化するそう。いつもとは異なる刺激を受けて活性化するアセチルコリンは、「創造性」や「ひらめき」に効果がある脳内物質とのこと。企画やアイデアを出す際には必要ですね。

そして、どんなに優秀な人でも、「疲れ」や「飽き」があるので長い時間ずっと集中力を保ち続けることは不可能です。しかし、作業の「開始時」と「終了間際」は、作業効率がグッと上がるのだとか。だからこそ、いったん仕事から離れ、再び仕事を始めるという外食ランチのメリハリ効果が大切です。

この時点で「外食ランチ」が優位に立っていますが、さらに「デスクランチ」を窮地に追い込むことがあります。

デスクランチは一時的にIQを下げる?

マルチタスクでIQが下がる!? 私の生産性を1.5倍にした効率的な「シングルタスク」3つの極意』でも紹介していますが、University of Londonの調査によると、PCで作業しながらビジネスチャットをしたり、電話をしながらメールチェックしたり、企画書をつくりながらメール返信したりなど、電子機器を使ったマルチタスクを行うと、一時的にIQが下がってしまうそうです。マルチタスクを行う成人男性のIQは、なんと8歳の子供の平均IQと同じレベルにまで下がってしまうのだとか。

そんな中、「デスクランチ」もマルチタスクであることが指摘されています。

忙しい最中のデスクランチであれば、PCで仕事をしながら食事というスタイルになることも多いでしょう。その場合、電子機器はPC1種類でも、「緊張(仕事)と弛緩(食事)」の両極端である2つの事柄を並行して行っているために、脳がどちらに傾くべきか混乱してしまうそうなのです。それで、PCのみならず書類やスマートフォンにまで手を伸ばせば、ますます立派なマルチタスクに。

ここまでの話では、もはや「デスクランチ」に勝ち目がないように思えますよね。ところが……、そうでもないのです!

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デスクランチが生産性を上げる仕事とは

科学雑誌PLOS ONEに掲載された研究によると、外に出て仲間とレストランでランチをした人よりも、デスクでひとりランチをとった人のほうが、そのあとの仕事をテキパキと生産的にこなせることが分かったそう。

この研究を行ったのは、ベルリン・フンボルト大学のWerner Sommer博士。32人の女性グループを「外食ランチ」のグループと「デスクランチ」のグループに分け、そのあと認識機能を確かめる簡単なテストを行ったとのこと。すると、ひとりデスクでランチをとったグループのほうが、よい成績だったのだとか。逆に、外出ランチのグループは、脳機能が低下していたとのこと。

これに関してWerner Sommer博士は、「外食ランチは自由で寛大な気分をもたらすので、そのあとの仕事に対する注意力を低くしてしまうが、デスクランチは気を引き締めた状態を保つことができる」と説明しています。

ここにきて「外食ランチ」と「デスクランチ」の形勢が逆転したかのようですが、Werner Sommer博士は、どちらにもメリットがあるので、午後の仕事によりランチタイムの過ごし方を変えるよう助言しています。

午後の仕事によってランチタイムを変えてみよう

Werner Sommer博士は、「外食ランチ」は自由で寛大な気分をもたらし、なおかつリラックスした状態にしてくれるので、もしもランチのあとに創造的な仕事を行うならば、外に出て食事をしたほうがいいといいます。精神科医の樺沢氏も、「創造性」や「ひらめき」に効果があるアセチルコリン活性のため、外食ランチで“いつもとは異なる刺激”を受けるようすすめていました。

また、逆に、もしも午後の仕事が細かいチェックを必要とする、ミスが許されない仕事ならば、ひとりでデスクランチをするほうが、生産的に仕事をこなせるだろうとWerner Sommer博士は話しています。

つまり、ランチのあと企画やアイデア出しをするなら仲間と「外食ランチ」、細かい書類仕事をするなら「デスクランチ」が仕事の精度や効率を上げるカギとなるはずです。

*** なお、「デスクランチ」はサッと済ませようと米だけ、麺だけ、パンだけという炭水化物中心の食事になりがちですが、それでは逆効果です。なぜならば、炭水化物中心の食事は血糖値が急上昇するためインスリンが大量に分泌されます。その結果、インスリンが効き過ぎて血糖値が急低下するからです。

そうなると、今度はブドウ糖が脳に十分行き渡らず、頭がぼーっとしてしまいます。たとえ「デスクランチ」でも野菜とタンパク質をしっかり摂りましょう!

(参考) 東洋経済オンライン|「デスクでお昼を食べる人」の仕事が遅いワケ 週刊女性PRIME|知ってた?デスクでランチは脳に悪い!実は怖い “マルチタスクの弊害” Study Hacker|マルチタスクでIQが下がる!? 私の生産性を1.5倍にした効率的な「シングルタスク」3つの極意 Prevention|The Upside To Eating Lunch At Your Desk NIKKEI STYLE|食後のウトウト…何とかしたい! 眠気防ぐランチ術 有田秀穂著(2012),『「脳の疲れ」がとれる生活術 癒しホルモン「オキシトシン」の秘密』,PHP研究所.

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