「計画をたてたものの、実行できずに終わってしまう」 「はじめたはいいが、長続きしない」 このように、長期目標の達成の難しさを感じたことのある人は、多いのではないでしょうか。
長期目標を成し遂げようとするとき、その道のりには様々な要素が関与してきます。そのうち、周囲の環境の変化やライバルの存在など、自分の意思だけでは変えられない要素があることは確かでしょう。しかし、自分自身の能力は、意識次第でいくらでも変えることができるはず。足りない能力があればそれを伸ばしていくことで、長期目標達成の可能性はぐっと近づきます。
今回は、長期目標を達成するために必要な能力について。目標の達成には、計画段階と実行段階で合計4つの能力が求められます。今の自分にはその能力が備わっているかどうか、考えながら読んでみてください。
長期目標を達成するために必要な4つの能力
長期目標を達成するためには、「正しい計画をたてること」と「それを最後まで実行すること」が不可欠です。このことに着目し、必要な能力を4つ提案します。
【計画段階】正しい計画をたてるために 1. 現実を見る能力 2. 戦略を立てる能力
【実行段階】計画を最後まで実行するために 3. 「今」に集中する能力 4. 自己嫌悪に陥らない能力
ここからは、「6か月で英単語を3,000語覚える」という長期目標を例に、実際に4つの能力がどのように必要なのかをみていきましょう。
計画段階に必要な2つの能力
まずは、正しい計画を立てるための2つの能力についてです。自ら打ち立てた目標はそもそも実現可能なものなのかどうか、下記の2つの力を使って見極めましょう。
1. 現実を見る能力 これは、現実を正しく認知する力です。長期計画をたてるときにやりがちなのが、「自分の力を過信してしまうこと」。それを防ぐため、「(1-1)自分の力量の認知」および「(1-2)時間感覚の認知」を正しく行い、現実を認識することが必要です。
(1-1)自分の力量の認知 自分の力量の認知とは、自分の力を正しく評価するということ。今回の例の場合、「6か月で3,000語」は自分の力量に見合っているでしょうか? 自分が考えている力量が実際にこなせる量を大きく上回っていると、計画の失敗が起こります。そのため、まずは自分がどのくらいできるのかを正確に見極めることが必要となるのです。
(1-2)時間感覚の認知 時間感覚の認知とは、時間を正しく感じる能力です。 突然ですが、皆さんは、気が付いたら何もしないうちに1日が終わっていたという経験はありませんか? これは、時間を意識せずに過ごしている時に起こりがちですよね。時間に注意を払わないでいる結果、本来の時間よりも短く感じてしまうのです。 このように時間に気を配らないでいると、計画の段階で無理な目標を立ててしまい、結果的に達成できないということが起こってしまいます。「時間を意識すること」によって、正しい時間認知をし、無理のない計画を立てることが必要です。
1. 現実を正しく認知し、目標を立てる(例) △「(何となく)6か月で3,000語覚えよう」 ◎「自分は1時間で30語覚えられるので、、1日1時間で100日間勉強すれば覚えられることになる。勉強できない日もあると想定して、180日間(6か月)のうち100日間勉強すれば、目標は達成できる。だから、6か月で3,000語覚えよう」 →何となく目標を定めるのではなく、時間単位を小さくして自分の能力を見極めることが大切。
2. 戦略を立てる能力 1で現実を正しく評価して目標を定めたら、目標達成に向けて具体的にどのようなアクションを起こすかなどの詳細な戦略を考えていきます。効果が最大限発揮されるよう、目標達成に関わる様々な要素(条件、資源)を考慮し、戦略として「まとめていく力」が必要となります。
2. 目標達成のための戦略を考える(例) 条件:「自分は座るよりも立ってやるほうが集中できる。電車での通学が1時間半ある」 戦略:「電車で立ちながら毎朝1時間英単語を勉強する」 →今ある条件を考慮し、どうすればうまくいくのか、戦略をたてる。
実行段階に必要な2つの能力
目標を達成するには、いくら良い計画をたてても、実際に行動しなければ何も起こりません。計画通りに確実に実行するには、何が必要となるのでしょうか。引き続き同じ例で考えていきましょう。
3. 「今」に集中する能力 目標と期間を決めたのなら、目標達成のために「生産性」を高めることは必須ですよね。生産性とは、決まった時間内でいかに成果を生み出せるかということ。生産性を高めるには、「今に集中する」ことが大切です。
複数のタスクを同時に進める「マルチタスク」という言葉を聞いたことがあるでしょう。いくつものタスクを同時に行うのはすごいことのように思えます。しかしそれは生産性という観点からはあまり評価できません。なぜなら、タスクがいくら多いとしても、人間は結局1つずつ行うことしかできないから。マルチタスクは、いくつかのタスクを同時に行っているのではなく、1つずつを高速で行っているにすぎないと言われているのです。
目の前のこと、つまり「今」に集中しないと、生産性が低くなってしまう可能性があります。一定時間集中して1つのことをやると決め、生産性を高めることができれば、目標実現への近道となるのではないでしょうか。
3. 「今」に集中することで生産性を高める(例) 「電車内は、英単語の勉強だけに集中すると決める。集中を邪魔するものを排除する(スマートフォンの電源を切るなど)」 →目の前のことに集中し確実に成果をあげることが、長期の目標達成には不可欠。
4. 自己嫌悪に陥らない能力 皆さんは、長期目標の実行過程で、1回2回さぼってしまった結果、もうどうでもよくなってやめてしまった経験はありませんか? この「自己嫌悪」の感覚が、目標実現のための行動を妨げてしまっている可能性があります。
実際にある研究で、自分を許せる人ほどストレスが低く、先延ばしをしていないという結果が報告されています。その理由は、自己批判をする人は、そのストレスによって脳のワーキングメモリーを圧迫してしまうから。その結果、様々な物事を処理しきれなくなってしまうということが起きるそうなのです。
ちょっとくらいうまくいかないことがあっても、その都度自分を責めるのはやめたほうがよいと言えるでしょう。
4. 自己嫌悪に陥らないことで、目標実現に近づく(例) 「毎朝電車で英単語を勉強すると決めていても、できないことはある。それは仕方のないこと。できない日があったら、次の日はちゃんとやろう」 →完璧主義を意識的に止めることが、目標実現への鍵となる。
*** 今回は、長期目標達成のための4つの能力について書いてきました。目標達成が難しいと感じる人でも、ここで紹介したことを踏まえながら自分の能力を分析すれば、対策を練りやすくなるのではないでしょうか。 やると決めたことを実現できないとき、まずは自分がどこでつまづいているのか、認識するところから始めてみるといいかもしれません。
(参考) ニコニコチャンネル|メンタリストDaiGoの「心理分析してみた!」<ブログ>完璧主義と自己批判が先送りの原因! 自分を許して即やる人になれるセルフコンパッションの鍛え方 ビジネスのためのWeb活用術|マルチタスクはなぜ仕事に非効率?脳を破壊するかもしれない理由とは デーヴィッド・マイヤーズ著,村上郁也訳(2015)『カラー版マイヤーズ心理学』,西村書店.