アイデアが湧いてきた。インスピレーションが降ってきた。
そんな言葉を聞いたことのある人も多いだろう。 しかし、本当にそうなのだろうか。
ニュートンは気から落ちるりんごを見て万有引力の法則を思いつき、アルキメデスは溢れる風呂の湯を見て比重の概念を思いついたという。
が、それは本当だろうか。
今日は世間一般で信じられている「アイデア」の概念をひっくり返してやりたいと思う。
アイディアは「全く新しいもの」ではない。
斬新なアイデアとは、全く新しいものである。そう考えた人はいないだろうか。 確かに、今まで誰も思いつかなかったかもしれない。誰もその答えにたどり着かなかったかもしれない。
でも、アイデアというのは完全に新しいものだ、とは言えないのだ。
どういうことだろうか。 コピーライターで、アイデアや発想に関しては右に出る者がいなかったと言われるジェームス.W.ヤングは、著書の中でこう述べている。
アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもないということである。これはおそらくアイデア形成に関する最も大切な事実である。
(引用元:ジェームス.W.ヤング|アイデアのつくり方)
そう、「新しいアイデア」と言ったとき、それはアイデア自体が新しいわけではない。既にある要素をいかに組み合わせるか。その組み合わせの仕方が新しいのだ。
組み合わせこそがアイディアだ
アイデアは既存のものの組み合わせ。途中経過はあまり意識されないことが多いとされている。
建築のように、何かを少しずつ積み上げていくといった過程が目に見えないのだ。 自分の中で知識として蓄積していたものを、ある日組み合わさってアイデアになる。だから、途中が見えにくい。そういう状況を見て、アイデアは急に降って湧いてくるものだという考えがあるのかも。
でも、それが違うこと、お判りいただけるだろうか。
たしかに、組み合わせ自体は斬新なものかもしれない。でも、組み合わせる要素は普段の知識、蓄積にすぎない。日常生活での蓄積がないことには、何も思い浮かぶはずがないのだ。
蓄積こそが重要である
では、一体わたしたちはどうやってアイデアを作ればいいのだろうか。
そう、「蓄積をつくる」ことが大事だ。 アイデアを生み出そう、生み出そう、と躍起になる人。
そういう人に限って、普段の知識や小さな発見をないがしろにしがち。 みなさんも、普段ふっと何か思いつくこと、気になることがあるだろう。
それを、そのまま無かったことにしたり、忘れてしまったりしていないだろうか。 もったいない。それも立派な蓄積のひとつだからだ。
ん?この言葉、どういう意味なんだろう… おー、この新しい髭剃り、デザインかっこいいな… そういえば、なんで雲の形ってあんなにいろいろあるんだろう…
こんな疑問や発見、数えたら1日で100個近くは湧いてくるんじゃないだろうか。
それを、捨ててしまわないでほしい。 必ず、「メモ」してほしいのだ。別に、高いメモ帳を買えとは言わない。ノートにいちいち記入しろとも言わない。スマートフォンなどデバイスのアプリでもいいし、書類のスミにちょこっと書くだけでも構わない。
それを、癖にしてみてほしいのだ。 そして困った時、行き詰まったときにそれを見返してほしい。普段の蓄積の組み合わせがアイデアならば、きっと何か思いつくものがあるからだ。
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そうやって積み重ねたものは、「アイデアの泉」と呼ぶにはあまりに小さいかもしれない。せいぜい「水たまり」が限界だろう。
ニュートンも、アルキメデスも、突然素晴らしい科学法則を発見したわけではないだろう。普段の莫大な量の実験や論文の読み込み。こうしたものの積み重ねが、後世にまで残る発見に繋がっていたはずだ。
普段の地道な積み重ねこそが、偉大なアイデアの飛翔を生むに違いない。
