どんな分野でも重要とされる創造性。 周りと同じことばかりしていても、大きな成果を得ることはできません。 かといって、ただ違うことをすればよいというわけでも、もちろんありません。 創造性というのは生まれ持った素質であり、多くの凡人には備わっていない。 そう考える人が多いかもしれませんが、はたして本当にそうでしょうか。 実は、それは大きな誤解かもしれません。
創造性とは何か
今回は、初代ノーベル博物館館長であるスヴァンテ・リンドクヴィストさんの創造性についての基準を取り上げてみることにします。 ノーベル賞、特に、物理学賞、化学賞、生理学・医学賞の自然科学3賞と呼ばれるものは、その分野でもっとも重要な発見をした人、もしくは発明、改良をした人などに与えられます。 つまり、もっともその分野で創造性のある人に与えられる賞だと言えるのです。 スヴァンテ・リンドクヴィストさんが述べる創造性についての9つの条件は以下の通り。
勇気 Courage 挑戦 To challenge 不屈の意志 Persistence 組み合わせ To combine 新たな視点 To see in a new way 遊び心 Playfulness("Homo Ludens") 偶然 Chance 努力 Work 瞬間的ひらめき Moment of insight (引用元:田中耕一(2008)「生涯最高の失敗」朝日新聞出版社)
この9つの条件を、実際にノーベル賞を受賞した人たちに当てはめてみましょう。
田中耕一さんの場合
「高分子のソフトレーザー脱離イオン化法」を発見し2002年10月にノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんは次のように述べています。
私には、「挑戦」する「勇気」がありました。「不屈の意志」もありました。二つの補助剤を「組みあわせ」て使うという「新たな視点」もありました。間違って混ぜてしまったものを、これでも使ってみるかという「遊び心」もありました。間違えたのも、ある意味「偶然」ですし、失敗つづきでも「努力」しつづけました。混ざったものを使ってみようと思ったのも、なんらかの勘、「瞬間的ひらめき」がなかったとは言えません。 (引用元:同上)
見事、全ての条件をクリアしていますね。
山中伸弥さんの場合
また、「成熟細胞が初期化され多能性をもつことの発見」により、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥さんは次のように述べています。
独創的じゃなくてもいいからまず実験に取り組んでみて、その結果を色のない目で見られるかどうか。独創力を発揮できるか否かは、そこにかかっているんじゃないかと思います。(中略) 恩師から「VW」という言葉を教わりました。科学者として成功するためには、この二文字が大事だというんですね。ビジョンのVとワークハードのWの頭文字で「VW]。長期的な展望としっかりした目標を持ち、懸命に努力を重ねればその一念は必ず叶うということです。 (引用元:山中伸弥、川口淳一郎(2013)「夢を実現する発想法」致知出版社)
この短い文章だけで、ほとんどの条件を満たしていることが読み取れます。
創造性とは特別な能力ではない
このように、実際にノーベル賞受賞者たちには創造性の条件を備えていたのですね。
しかし、もう一度9つの条件を見直してみてください。 これらは本当に特別な要素でしょうか。 誰もが持っている、あるいは意識すれば持つことのできる素質ではないでしょうか。 「偶然」「瞬間的ひらめき」は自力では難しいと思うかもしれませんが、実際これらは私たちが思うより頻繁に発生します。 それを見過ごすことなく、自分の糧とできるかがポイントなのです。
そうだとすると、創造性とはなにも特別な能力ではないということになります。 創造性は誰もが持っていて、意識や努力次第で発揮できるか否かが決まるのです。
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創造性の9つの条件。 今あなたはどれくらい満たせていましたか。 これらを意識することで、誰でも創造性を発揮することができるはずです。 9つの条件の中で最初に必要とされるものは、『「挑戦」する「勇気」』。 最初の一歩を踏み出して、あなたなりの創造性を発揮していってください。
参考 田中耕一(2008)「生涯最高の失敗」朝日新聞出版社 山中伸弥、川口淳一郎(2013)「夢を実現する発想法」致知出版社 nikkei4946.com|「ノーベル賞」ってどうやって決まるの? ~選考のしくみや日本の研究環境の課題を知る! ウィキペディア|山中伸弥