“失敗しないとわかっている”ことにしか取り組めない……。いつも多数派になびいてしまう……。その選択は安全である一方、損をしている可能性もあります。あえて “不利な手” を指すと起こる、さまざまな“良いこと”について説明しましょう。

「安全・安定」ばかりでは新たな可能性も生まれない

リスクを避けようとすることは、決して悪いことではありません。たとえば、あなたが友人と食事に行く際、2人にとって馴染みの店なら、高い確率でいつものように充実した時間を過ごせるでしょう。逆に、行ったことのない店にチャレンジした場合、失敗する可能性がグンと高まります。

また、仕事で多数派と少数派に意見が分かれている場合、多くの支持を集める意見には、それなりの価値や理由があるとも考えられます。多数派なら、万が一失敗しても責任が分散されるので、小さな痛手で済むという点でも安心です。

しかし……、安全・安定ばかりでは、新たな可能性も一向に生まれません

たとえば、初めて行った店が美味しくていい雰囲気であったなら、新しい店を開拓できたということになります。店選びに失敗したとしても、会話の引き出しになるでしょう。

仕事で少数派の意見を貫く場合は、それなりの説得が必要になるため、論理的な思考を養うことができます。それに、少数派で成功すれば、称賛の度合いがグンと大きくなるはず。たとえ失敗しても、のちの仕事に生かすことができます。

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あえて “不利な手” を指すと見えてくるもの

第31期竜王戦七番勝負で敗れ、27年振りに無冠となった棋士・羽生善治氏は、AI の影響を受け進化する、現代将棋への対応に苦闘しているそう。

初心者の将棋のようでいて絶妙なことから、羽生氏に勝利したこともある中村太地氏は、AI の将棋を「まるでピカソ」と表現しています。

しかし、確率や統計の精度が格段に上がっている AI の影響を受け、確率重視になり、誰もが安全なほうへと向かうのは、将来的にリスキーだと羽生氏はいいます。なぜならば、それは多様性がどんどん損なわれていくことに等しいから。

羽生氏は、「不利だ、ダメだといわれるほうにこそ、可能性がある」と話します。それを後押しする言葉が、経済のプロからも述べられています。

一歩先を行く人は「少数派」である

経済評論家の長谷川慶太郎氏は、著書『異端のすすめ: 個性化社会の人材開発と企業戦略』のなかで、「“常識”は過去の経験を一般化して、理論化したもの」と説き、続けてこう述べています。

――だが、過去の経験では割り切れない新しい経営環境の下で「常識」それ自体を否定しなければならない現状では、過去の「常識」にこだわること自体、そのまま失敗につながっていく。

(引用元:長谷川慶太郎著(1987),『異端のすすめ: 個性化社会の人材開発と企業戦略』,新潮社.)

同氏いわく、ビジネスにおいて情勢の変化を認識できる能力を持つ人々は、「少数派」であるとのこと。それもそのはず、その人々は誰よりも先に変化を見越しているからです。そのあと徐々に、情勢の変化を理解する人々が増えると、その考え方が「多数派」に転化するのだとか。

長谷川氏は、誰もが同じ認識になったとき、すでに情勢の変化はさらに一歩先を行っているため、成功するには「少数派」であり続けることが必要だと述べています。

“不利な手” どう指せばいいのか?

あえて “不利な手” を指すと、可能性が広がるということ、変化を見越せば少数派になるのは当然であり、成功するには少数派であり続けることが大切だとわかりました。では、“不利な手”はどう指せばいいのでしょう。

長谷川慶太郎氏は、「少数派の良識は、多数派にとっての非常識だ」といいます。

以前アップル社にいたビジネスコンサルタントの竹内一正氏も、いまは常識となった家庭用ビデオが誕生したときは非常識だと考えられていたこと、アップルのスティーブ・ジョブズ氏がパソコンを世に出したとき、個人がコンピュータを持つのは非常識だったことなどを挙げ、こう述べています。

斬新な製品がヒットするには、ビジネス上の競争に勝つ前に、世間の「固定観念」に打ち勝つことが求められているのだ。

(引用元:竹内一正著(2008),『スティーブ・ジョブズ 神の交渉力』,経済界.)

したがって、以下の状態が生じたら、あえて非常識・不利なことを選び、可能性を求めてみるといいのではないでしょうか。

・アイデアが頭打ちのとき
・多様性が必要なとき

たとえば、売れ筋の焼きなおしばかりで売り上げが伸びないとき、あえてニッチ市場を狙ってみたり、肯定的ではない意見が多いアイデアの可能性を探ってみたりするのです。また、何かを選択したとき、あるいはアイデアが生まれたとき、それがたとえ少数派だとしても

・成功するには少数派であり続けることが大切である
・成功するには「固定観念」に打ち勝たなければならない

と考えてみてください。強い信念の土台になってくれるはずです。

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あえて “不利な手” を指すと起こる良いことについてお伝えしました。人は往々にしてネガティブに考えやすく、そのお陰でリスクを回避できるようになっています。それをよく理解し、リスクはどの程度か、自分で可能性を狭めてはいないか常に問いかけ、最適解を導き出していきましょう!

(参考)
プレジデントオンライン|羽生善治が「あえて不利な手」を指す理由
日経 xTECH Active – システム導入のための意思決定支援サイト|AIの将棋はまるでピカソ、中村太地王座が見た将棋の新しい地平とは?
長谷川慶太郎著(1987),『異端のすすめ: 個性化社会の人材開発と企業戦略』,新潮社.
竹内一正著(2008),『スティーブ・ジョブズ 神の交渉力』,経済界.