大学生にとって、悩みの種のひとつであるのが、大学での学びの集大成でもある卒業論文。しかし、これに対して、文系学生はこう考える人が大多数だと思います。
「卒論が社会で働く上で何の役に立つの?」 「時間の無駄だからサクッと終わらせよう」
確かに多くの文系学生は卒論で扱った専門知識を使う仕事に就くわけではありません。文学も法学も経済学も、それ自体を活かした専門職に就く人は少数でしょう。
「卒業ができればいいから」と、とりあえず書けばいいと思っている学生もいるかもしれません。しかし、せっかく卒論を書くのであれば手を抜くべきではないのです。もしかしたら、社会に出て働く上で損をしてしまうかもしれませんよ。
なぜなら、卒論を執筆する過程で将来仕事の成果に直結する重要なスキルを養うことができるからです。
そこで今回は、卒論を書きながら身に付けられる、社会人として活躍するために必要なスキルを紹介します。
卒論で培われる論理的思考力
まず、卒論を書くことで「論理的思考力」を養うことができます。
論理的思考力とは、一般に物事を理性を用いて合理的に理解し、考え、知識や情報を扱う力であるとされています。一般にビジネスマンにとって、さまざまな場面で必要とされるスキルであり、論理的思考力を身につけるための本や記事は多く存在します。
では、なぜ卒論を書くことで、論理的思考力を養うことになるのでしょうか?
卒論を書く際には、既存の論文から論拠を示しながら、自分の考えを筋道立てて証明していくことになります。しかもチェックしてくれるのは、論理的思考力の塊である教授です。
そのため、何万字にも及ぶ文章の中でデータや事例を参考にしながら、読者を納得させられるよう、整合性のとれた自分の考えを述べるためには論理的思考力が必須だといえるでしょう。
しっかりと卒論を書けば、2時間程度の就活セミナーやグループワークに通うよりも、遥かに論理的思考力を鍛えられるのではないでしょうか?
卒論で培われる調査(リサーチ)の習慣
卒論では、無数に存在する先行研究を自分の研究テーマに沿ってまとめ、更に自分の考えを証明するためのデータを過去の資料、あるいはアンケートやヒアリングで用意しなくてはいけません。これにより、「調査(リサーチ)の習慣」を身につけることができます。
ビジネスにおいて、膨大な数字やデータ、事例を調べることも重要になりますよね。
営業や企画を成功させる可能性を少しでも上げる必要があるため、市場の分析や過去の成功事例、ユーザーの声などを分析することが重要な作業のひとつとなります。そのため、多くの企業では、実際に毎月の売上データのチェックや消費者へのヒアリング、競合調査などが行われています。
しかし、この調査には大きな労力がかかるもの。数字が苦手な人はデータを見てもチンプンカンプンだし、そもそもデータや事例をゼロから調べることが面倒で苦手意識を持つ人も多いでしょう。
だからこそ、その苦手意識を克服し、卒論をしっかり書くことで先行研究やデータの重要性が理解でき、それを探して分析することにも耐性が付いてくるのです。こうして、分析的な思考と行動を身につけられることができます。
卒論で培われる発想力
最後に、卒論では「発想力」を高めることができます。
発想力とは、自分独自のアイデアを出す力です。ビジネスではモノやサービスを売るために、他者とは異なる視点、異なる方法でユーザーの心を掴み、アプローチすることが求められます。そこで、クリエイティブなアイデアを出す発想力豊かな人材が必要とされるのです。
その点、卒論は書き手の発想力を伸ばす上で最適な教材といえるでしょう。
論文では、既に存在する論文と同じことを述べてもダメで、新規性が重要となります。そのため、既存の論文を調べた上で、異なる視点やアイデアを提唱することによって発想力が磨かれていくのです。
例えば、新たな歴史の見方や既存の行政システムの落とし穴と改善方法など、文系においてもさまざまな取り組みが可能です。
このように卒論は学生のオリジナリティが出ると同時に、オリジナリティを伸ばす場でもあるといえるでしょう。
*** 卒論の執筆の過程では、ビジネスマンとして重要な3つの素養を磨くことができます。
もし、あなたがせっかく卒論を書くのならば、真剣に取り組んでみてはいかがでしょうか? 大学での学びの成果をしっかりと残しながら、将来働く上で必須のスキルを身に付けてしまいましょう。
(参考) 川村元気(2016),「理系に学ぶ。」, ダイヤモンド社 東洋経済オンライン|スキルを学ぶ前に、論理的に考える力を磨け 外資就活ドットコム|「新卒はとりあえずドクター採用すれば良いんじゃない」上司の一言から考察するコンサルタントに求められる素養【現役社会人からのメッセージ】 フレッシャーズ マイナビ 学生の窓口|「大変だった」が8割。実験や資料集めに苦戦する卒業論文制作