「重力波が初観測された」ってどういうこと? 話題のニュースを世界一やさしく解説。

最近話題になっている重力波という言葉。どうやら重力波と呼ばれるものが観測されたようだということは知っているかもしれませんが、重力波がいったいどういうもので、どういったことに役立つのかということは、あまり知らない人も多いかと思います。

今回は、重力波に関するいろいろなことを、簡単に説明したいと思います。

 

重力と重力場

 

重力波の前に、重力とはどういうものであるかを簡単に説明したいと思います。

重力(万有引力)とは、ある物質がほかの物質を引き付ける力のことを言います。重力はあらゆる物質が持っていると考えられ、人間同士でさえ、微力すぎて気づくことはできませんが、本当は引き合っているのです。

20世紀まで、この力がどのようにして生じているのかわかっていませんでしたが、20世紀初頭に、かの有名な物理学者アインシュタインが提唱した一般相対性理論において、次のように考えればつじつまが合うことが分かりました。

「質量をもつ物質は、その周囲の時空間を歪ませる。」

物質が周囲に作る、歪んだ時空間のことを重力場といいます。このことは、非常に柔らかいトランポリン(=時空間)に、重いボール(=地球)を置くと、その周囲が歪むことに似ています。こちらの図を見てください。

 

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(図:筆者作成)

 

時空間の歪みは、質量が大きくなればなるほど大きくなります。(トランポリンも、より重いものを乗せた方が歪みますよね。)

また、物質の近くほど、時空間の歪みは大きくなります。そしてすべての物質は、歪みの大きいほうへ引っ張られるのです。確かに、こう考えれば、地球という超大きな質量を持つ物質がその周りの空間を歪め、我々を引き付けていると解釈することができ、我々がこうして地球上に立っていることを説明できますね。

先ほどの例を用いると、重いボールが置かれ、歪みが生じている非常に柔らかいトランポリンの上に軽いボール(=惑星や人間)を置いたとき、その歪みによって、重いボールに引き寄せられることと似ています。こちらの図のようなイメージです。

 

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(図:同上)

 

重力波とは?

 

物質が運動(振動)すると、周囲に形成されていた重力場もそれによって変化するのですが、この変化が伝播する現象のことを重力波といいます。この変化の速さ(重力波の速さ)は、一般相対性理論によれば光の速さと同じであることが分かっています。

先ほどの例を使うと、トランポリンの上に置いた重いボールを円状に動かすことを想像してみてください。すると、ボールが作っていたトランポリンの歪みが波のように変化しながら、端の方へと伝播していく様子を見ることができるはず。これが重力波(のモデル)です。なお、一般相対論によれば、我々が手を振り上げるだけでも、重力波は出ていることになります。

ちなみに今までのことから何となくわかったかもしれませんが、重力波は、運動する物質の質量が大きいほど、また運動(振動)が速いほど強くなります。

この重力波の強さは、一般相対性理論から計算してみると、非常に小さいことが分かっています。(ある計算によれば、光(=電磁波)の強さとはおおよそ36桁も違うらしい……)そういうわけで、重力波を提唱したアインシュタインですら、重力波は観測できないだろうと考えていたようです。

しかし2015年、ついに重力波が観測されたのです。

 

重力波の測定方法

 

では、どのように重力波を観測したのでしょうか。それには光の干渉という現象を利用したのです。

光の干渉について簡単に説明します。下の図を参照しながら次の文章を読んでください。

 

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(図:同上)

図のように、同じところから出た光が途中で2方向に分離され、もう一度戻ってくるということを考えます。分離されてから戻ってくるまでの、それぞれの光が旅する距離の差(光路差)が0だと、スクリーン上での光の強さは、もともとの光と同じになることが知られています。しかし、光路差が微妙に0からずれると、スクリーン上での光の強さは、もともとの光より弱くなってしまうのです。このことを光の干渉といいます。

重力波の測定には、この現象を利用します。まず、図1のような設計をした巨大な装置を作り、光路差を厳密に0にしておきます。そうすれば、スクリーン上での光はもともとの光と同じ強さになりますね。この状態でこの装置に、重力波が届けば、重力波は空間(距離)を歪めるので、光路差が0から微妙に変化したり戻ったりします。つまり、スクリーン上の光の強さが変化するということ。この変化をとらえられれば重力波を観測できたことになるのです。

実際の装置は、細長い十字型の箱のようなものの中に入っていて、箱内は真空になっています。これは、光路差というものが、実は空気の密度によって変わってしまうから。装置内の全区間において、空気の密度を厳密に一定にするのは不可能なので、それならばいっそのこと、空気を失くす、つまり真空にしてしまえばいいという発想によるものです。

そして実際に、アメリカのワシントン州と、ルイジアナ州にある「LIGO」という大型観測装置がこの現象の観測に成功したのです。

 

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重力波を測定できると何がわかるの?

 

まずは、一般相対性理論が間違ってはいないという証拠になります。アインシュタインが100年前に独力で作り上げた一般相対論という理論が、未だに破たんしていないということは驚異的なことです。いかにアインシュタインが天才だったかということを改めて思い知らされます。

また、重力波が精密に測定できるようになれば、重力波天文学という分野が拓かれ、今まで謎だったことが次々に明らかになる可能性があります。詳しいことは省きますが、重力波の観測により、超新星爆発の原理や、宇宙誕生の謎までもが解明できるかもしれないと期待されてるのです。

余談ですが、アインシュタインが生み出した一般相対性理論は、2015年に100周年を迎えました。その記念すべき年に重力波が観測されたというのは、偶然ではない何かしらの因縁のようなものを感じてしまいます。

 

(参考) EMANの物理学|重力波 藤井保憲著(1979),『時空と重力』,産業図書. 産経ニュース|アインシュタインが予言した「重力波」初検出 ブラックホールの合体は一般相対性理論と完全一致した 自然科学研究機構 国立天文台|国立天文台ニュース 特集 重力波天文学が拓く宇宙

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